「キャズム」で名を成し、最近「ライフサイクル・イノベーション」を著したイノベーション論の大家ジェフリー・ムーアが、SAPジャパンの「BUSINESS SYMPOSIUM '06」で、「競争優位性を導く~「コアとコンテキスト」で実現するプロセス・イノベーション」と言う演題で、1時間精力的に語り続けた。
「ライフサイクル・イノベーション」は、副題のように、偉大な会社はその発展段階に応じて如何にイノベイトして行くかと言うテーマで、その会社の置かれた発展段階の位置に応じた適切なイノベーション手法は何なのかを克明に紹介することに主眼を置いている。
しかし、今回の講演は、時間的な制約のためか、このムーアのイノベーション論のエキスと言うべき、その手法について論じるに留まった。
クリステンセンが「イノベーションのジレンマ」で論じた革新的なリーダー企業の没落論の向こうを張って、革新的な企業が如何にイノベーションを持続し続けて成功を収めるか、コアとコンテキスト論を展開しながら説き起こすのである。
ムーアのコアは、所謂、コア・コンピタンスのコアではなくて、他企業の追随を許さないような長期的差別化を生み出し、高価格設定や収益増大に結びつく製品や企業活動で、コンテキストは、企業の差別化に結びつかないその他の総ての企業活動を言う。
理論は極めて単純明快、コンテキストに費やされている経営資源を抜き出してコアに再配分すると言うことで、これは一回限りの対応策ではなくて、企業の持つ慣性力を活用して日々の業務の中に組み込むべきだと言うのである。
こうする事によって、既存の経営資産の再構築と新しい資産への投資を並行的に行うことで、経営者はイノベーションの道を開くと同時に、必要な投資の為の経営資源も獲得出来ると考えている。
今日の企業を取り巻く環境は、正に激烈なグローバル競争の時代で、科学技術の脅威的な進歩によって急速なコモディティ化が進行、適者生存の過酷な競争に晒されている。
この熾烈な競争集団から抜け出して差別優位を確立しない限り生き残って行けないが、そのためには、他の追随を許さないようなイノベーションを追求して差別化し、競合集団から離脱を図らなければならない。
その為には、ベクトルを合わせて経営資源を一点にフォーカスすること、すなわち、コンテキストから資源を抜き取りコアに集中する経営が必須だと言うのである。
ムーアの経営学の根幹は、イノベーションによって差別化戦略を追求し続ける経営である。
イノベーションの効果について、「差別化」が一番望ましいが、競合他社の優位性に追いつき自社の欠点を市場の標準に近づけて他社の差別的要素を無効にする「中立化」や、既存プロセスを再構築して価格競争力をつける「生産性向上」も必要だと説く。
しかし、多くのイノベーションへの企業努力が、リスク回避の発想が強すぎて大胆な行動が取れなくて十分に差別化出来なかったり、成り行き任せの経営でベクトルが合わせられずに優先順位の調整が出来ずにイノベーションを革新的な方向に導けなくて失敗するケースが多い。
後半、横軸にコアとコンテキスト、縦軸にミッション・クリティカルと非ミッション・クリティカルを据えて、マトリックス方式で、イノベーションの手法と発展段階について論じた。
この表を使って、イノベーション・プロセスを持続するために、人材の再配置について、イノベーション・プロセスと逆回りの教育・訓練についても説明していた。
いずれにしろ、ムーアの理論は、比較的革新的で面白いが、クリステンセンが論じたイノベーションのジレンマを解決するためには、どんな経営を行えば良いのか、実際にどのように適用すべきか、十分に答えを出しているようには思えない。
クリステンセンも、「イノベーションの解」、「明日は誰のものかーイノベーションの最終解」で、理論展開しているが、最終解にはなっていない。
私は、経営学者ではなく、何となく、トヨタとホンダが、イノベーションのジレンマを解いてくれるような気がしている。
とにかく、ジェフリー・ムーアの鉄砲玉のような迫力のあるスピーチに触発されて聞き耳を立てていた。
「ライフサイクル・イノベーション」は、副題のように、偉大な会社はその発展段階に応じて如何にイノベイトして行くかと言うテーマで、その会社の置かれた発展段階の位置に応じた適切なイノベーション手法は何なのかを克明に紹介することに主眼を置いている。
しかし、今回の講演は、時間的な制約のためか、このムーアのイノベーション論のエキスと言うべき、その手法について論じるに留まった。
クリステンセンが「イノベーションのジレンマ」で論じた革新的なリーダー企業の没落論の向こうを張って、革新的な企業が如何にイノベーションを持続し続けて成功を収めるか、コアとコンテキスト論を展開しながら説き起こすのである。
ムーアのコアは、所謂、コア・コンピタンスのコアではなくて、他企業の追随を許さないような長期的差別化を生み出し、高価格設定や収益増大に結びつく製品や企業活動で、コンテキストは、企業の差別化に結びつかないその他の総ての企業活動を言う。
理論は極めて単純明快、コンテキストに費やされている経営資源を抜き出してコアに再配分すると言うことで、これは一回限りの対応策ではなくて、企業の持つ慣性力を活用して日々の業務の中に組み込むべきだと言うのである。
こうする事によって、既存の経営資産の再構築と新しい資産への投資を並行的に行うことで、経営者はイノベーションの道を開くと同時に、必要な投資の為の経営資源も獲得出来ると考えている。
今日の企業を取り巻く環境は、正に激烈なグローバル競争の時代で、科学技術の脅威的な進歩によって急速なコモディティ化が進行、適者生存の過酷な競争に晒されている。
この熾烈な競争集団から抜け出して差別優位を確立しない限り生き残って行けないが、そのためには、他の追随を許さないようなイノベーションを追求して差別化し、競合集団から離脱を図らなければならない。
その為には、ベクトルを合わせて経営資源を一点にフォーカスすること、すなわち、コンテキストから資源を抜き取りコアに集中する経営が必須だと言うのである。
ムーアの経営学の根幹は、イノベーションによって差別化戦略を追求し続ける経営である。
イノベーションの効果について、「差別化」が一番望ましいが、競合他社の優位性に追いつき自社の欠点を市場の標準に近づけて他社の差別的要素を無効にする「中立化」や、既存プロセスを再構築して価格競争力をつける「生産性向上」も必要だと説く。
しかし、多くのイノベーションへの企業努力が、リスク回避の発想が強すぎて大胆な行動が取れなくて十分に差別化出来なかったり、成り行き任せの経営でベクトルが合わせられずに優先順位の調整が出来ずにイノベーションを革新的な方向に導けなくて失敗するケースが多い。
後半、横軸にコアとコンテキスト、縦軸にミッション・クリティカルと非ミッション・クリティカルを据えて、マトリックス方式で、イノベーションの手法と発展段階について論じた。
この表を使って、イノベーション・プロセスを持続するために、人材の再配置について、イノベーション・プロセスと逆回りの教育・訓練についても説明していた。
いずれにしろ、ムーアの理論は、比較的革新的で面白いが、クリステンセンが論じたイノベーションのジレンマを解決するためには、どんな経営を行えば良いのか、実際にどのように適用すべきか、十分に答えを出しているようには思えない。
クリステンセンも、「イノベーションの解」、「明日は誰のものかーイノベーションの最終解」で、理論展開しているが、最終解にはなっていない。
私は、経営学者ではなく、何となく、トヨタとホンダが、イノベーションのジレンマを解いてくれるような気がしている。
とにかく、ジェフリー・ムーアの鉄砲玉のような迫力のあるスピーチに触発されて聞き耳を立てていた。