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中小基本法の見直しで、生産性は上がるのか?

2020-09-30 11:40:24 | ビジネス

今朝FM番組を聞いていたら、菅政権が打ち出した「中小基本法を見直し、中小企業の統合・合併により生産性を上げる」という話があった。
時事通信社:中小基本法、見直し着手 生産性向上への再編促進ー企業淘汰の懸念も

確かに、日本の株式会社と言われる企業の内9割が、「中小企業」だと言われている。
そしてその多くが、製造業でメーカーと言われる大企業の下請けである、ということも事実だろう。
そう考えると、中小企業が統合・合併することで、大企業と同等の生産力をつけ、生産性が上がることで、低迷している日本経済が良くなる、という期待ができるということになる。
ただ、それほど簡単なモノだろうか?という、疑問を感じるのだ。

まず日本の中小企業の多くが、上述したようにいわゆるメーカーと呼ばれる大企業の下請けである、という点だ。
これまでも経済の先行きが不安になるたびに、下請けとなる中小企業に仕入れ価格の値下げなどを要求してきたのは、親会社と呼ばれる大企業側だった。
要求した値下げに応えられないとすると、海外に受注をすることで利益を出してきたのが大企業であった、と言っても過言ではないだろう。
そのような力関係の中で、中小企業が統合・合併することにより親会社となっている大企業に対抗できるだけの力が持てるのだろうか?
あくまでも個人的な考えとして、難しいと考えている。
理由は、大企業の下請け状態であれば、大企業が「海外に受注する」ことで統合・合併した中小企業の仕事がなくなってしまう可能性があるからだ。

もう一つ今回の「中小基本法」の改正には、「力のない企業の淘汰」の狙いがある、という指摘があることだ。
何をもって「力のない企業」というのか?という点は別にして、「弱肉強食」のような競争原理を産業界に持ち込むことで、生産性が上がるという思い込みがあるのでは?という気がしている。

統合・合併された企業側は消滅する=従業員の解雇などが起きる、ということになる。
一時期的なものだとしても、今の日本経済には消滅した企業に勤める人達に対する社会保障ができるだけの経済体力があるとは思えないのだ。
何故なら、今回の「新型コロナウイルス」の感染拡大により、相当数の失業者が発生している。
今のような状況が続けば、失業保険終了後生活保護世帯となってしまう人達も、少なからずいるだろう。
失業保険が給付される人はまだ、経済的猶予があるが非正規で働いていた人たちの多くは、失業保険などが得られないまま職を失い、生活保護を受けることになってしまっているかもしれない。

失業してしまった人たちに対する、新たな職種への転換させるためのスキルアップや紹介事業など、現在職業安定所が行っている業務の拡大・充実・支援策が必要となるだろう。
これらの制度と支援策が同時に検討されなくては、「中小基本法」の改正だけを行っても、当初の見込みのような経済の回復などは無いと考えている。

であれば、中小企業が生き残る為には何ができるのだろうか?
一つは「衆知」という発想だ。
日本の伝統産業の多くは、零細企業の集合体によって成り立っている。
そのため、効率が悪く高額なモノになっている、という問題があるのは事実だが、逆に考えれば、特化した技術を持った集合体でもある。
個々の力は弱くても、特化技術を持った集合体としての「共同事業体」となれば、今の大企業が無視できないほどの力を持つことができるのではないだろうか?
全国各地に散らばっている同業種あるいは関連業種の中小零細企業をネットワーク化し、ネットワークの特化を図ることで、産業全体の再編成を行い「スペシャリティ集団企業」をつくる、という発想だ。
このような「スペシャリティ集合企業」となれば、大企業の下請けから脱却できる可能性は広がるはずだ。

単なる中小企業の統合・合併という発想では、日本の経済力が復活するとは思えない。
今ある中小零細企業の力を、より発揮しやすく大企業に対抗できるだけの力をつける為には、どのような方法があるのか?という、発想が今の政策に求められているのではないだろうか?