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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 661 初春に誓う ③

2020年11月11日 | 1977 年 



読売ジャイアンツ:タイトル、記録を目指しV2へ直結する投打の主役
セ・リーグ連覇の主役はもちろん王選手だが、実はその脇を固める人物の張本選手こそが連覇のキーマンだ。昨年は史上初となる八度目の首位打者を目前で谷沢選手(中日)に阻止された張本だが、張本はシーズン中から決してタイトルが欲しいとは口にしなかった。「俺は巨人に来た助っ人。ワンちゃんの為の助っ人。それが俺の仕事」と常に公言していた。それは今年になっても変わらない。自分の務めは巨人の優勝と王へのアシストだと心に決めている。「よく知り合いに言われるよ、打率4割を狙ってみろと。打球が速い人工芝なら三遊間に転がせばヒットを稼げて打率も上がるだろうって。でもチームバッティングを求められる巨人では好き勝手に打つことは出来ないし、してはいけないと自分も思っている」と。

昨年の張本は182安打、首位打者の谷沢は176安打と安打数では谷沢を上回っていた。また出塁数は敬遠を含めた四球(125個)が圧倒的に多い王に次ぐ239出塁の2位だった。それなのに無冠に終わり悔しさもあるだろうが「長いのはワンちゃんに任せて僕は1回で多く塁に出ることを考えている。ヒットの数とか打球の鋭さより数多く出塁することが自分の任務だと思っている」と自分を押し殺している。だが結果的に王への橋渡し役に徹することで高出塁と高打率をマークして八度目の首位打者へ近づくのかもしれない。

野手でもう一人、静かに燃えているのが淡口選手だ。「オフの間に徹底的に左投手の球を打つ練習をして今年こそはと思っています(淡口)」先発で出場して左投手が来ても交代させられず結果を残して打撃ベスト10に名前を載せる、それが今年の目標だ。年下の掛布選手(阪神)の活躍が刺激となりレギュラー獲得に燃えている。「張本さん、若松さんのミートの上手さ。谷沢さん、掛布君の思い切りの良さを目の当たりにして学びました。とにかく一にも二にも左投手対策です」と普段は物静かで控え目な淡口が別人のようだ。

投手陣では小林投手と新浦投手に注目が集まる。「1年間フル回転できてスタミナの不安が消えた。日本一は逃したけど阪急相手に勝負して自信もついた。昨年は18勝で20勝できなかったので今年は何としても20勝したいです(小林)」と巨人の屋台骨を支える細腕右腕はこれまで苦手にしていた阪神戦にもどんどん登板して念願の20勝を虎視眈々と狙っている。新浦は「スタミナ増強に走り込みを重視します。キャンプ中は勿論、シーズン中も走りまくります」と夏場のバテ防止に余念がない。更なる目標は15勝と200奪三振。「僕は三振を取ってリズムに乗るタイプ(新浦)」だそうだ。


阪神タイガース:減量田淵のやる気筆頭に '76年の雪辱を期す虎たち
あと一歩でリーグ優勝を巨人にさらわれた阪神だけに選手たちの今年に賭ける思いは強い。主砲の田淵選手は「一昨年の本塁打王がフロックだと言われないように今年は王さんからタイトルを奪い返します」と先ずは自身の本塁打王宣言。「昨年はいろいろ悩んだけど再出発の心構えとして40本塁打・100打点を最低ラインにして頑張ります。僕がそれくらい打てばチームも優勝に近づくでしょう。その為にもオフから減量に取り組んでいます(田淵)」と。太り過ぎは田淵にとって大敵でキャンプまでに7kgの減量を取り組んでいて、自宅に家庭用トレーニング機器、更にはサウナまで設置している。

人気急上昇中の掛布選手は入団以来3年間はトントン拍子で人気も実力も上昇一途で今年プロ4年目を迎える。「昨年が出来過ぎだったと(打率.325・27本塁打)と言われないように思い切りやります。僕は考えるとダメなタイプなので無心で周囲を気にせず頑張りたい」と意気込む。「オフは忙しく疲れたけど野球しか知らない自分にとって社会勉強にもなりました。今年はというより将来的な目標は頼りになるバッターになること。数字よりもここ一番という場面で打てるようになりたいです」と。今年に賭ける掛布の姿勢からは試練とは無関係な感じで飛躍あるのみ、といったムードだ。

エースの座を争うのは江本投手と古沢投手の2人。昨年の江本は後半戦に入るとバテ気味で精彩を欠いたがチーム最多の15勝をマーク。今年は阪神移籍2年目で更なる飛躍が期待される。「昨年は江夏とのトレードだったから勝たねばならんというプレッシャーで押し潰されそうだった。その点でも今年は気分的に楽になる。優勝するには巨人を倒す必要がある。巨人戦は注目度が高いから気合が入るね。" 巨人キラー江本 " なんて呼ばれる日も近い?えへへ。田淵さんとも話したけど今年こそ優勝して昨年の悔しさを晴らしたい。いや絶対に晴らしてみせるよ」とプレートさばき同様に強気一辺倒だ。

一方の古沢は昨季ラストの巨人戦で見事完投勝ちして男を上げた。「あの時(巨人戦)みたいに今年最初の巨人戦に勝って出鼻を叩いて自分も勢いに乗る。スロースターターなので前半戦を上手く乗り切れば俺だって15勝できる。今年やらないで何時やるんだ、という気持ちでシーズンに臨む」と意欲的だ。猛虎打線の中軸であるラインバック選手・ブリーデン選手から「日本がすっかり気に入った。今年は2年目で余裕を持ってプレーできる。全力プレーを約束します(ラインバック)」「今年はホームランキングを獲る。キャンプインを楽しみにしていてくれ(ブリーデン)」と海の向こうから新年のメッセージを送って来た。


広島東洋カープ:球団の温情にハッスル。巻き返しに燃える赤ヘル
セ・リーグ連覇は成らなかったが球団の温情で年俸の大幅ダウンを免れて選手たちの士気は上がっている。今年新たに1000万円プレーヤーの仲間入りしたのは池谷投手・水谷選手・水沼選手の3人。池谷は昨年の最多勝投手、沢村賞などに輝き名実ともに一流プレーヤーになった。「2年連続20勝は勿論、防御率1位も狙いたい。昨年の9連敗を反省して確実に勝てる投手になりたい」と抱負を語る。水谷は打率.308 で打撃10傑入りし、26本塁打・73打点は自身プロ入り最高の成績だった。だが今年は若手の台頭と新外人の活躍次第では控えに回る可能性もあり水谷本人は「先ずは1試合でも多く出場するのが目標」と少々控え目。

水沼は規定打席にこそ届かなかったが打率.250・11本塁打・46打点は自己最高。今年は先ず昨年以上の成績とフル出場を目指している。ベテランの外木場投手と大下選手には今年も頑張りが期待されている。昨年の外木場は怪我で四度、合計90日間も戦線離脱し10勝止まりで投球回数も初優勝した一昨年の半分という結果だった。本人曰く「優勝関連行事で多忙になり体のケアを怠ってしまった。今オフは反省して充分休んだ」と。大下も外木場同様に肉離れやヒザの故障で80試合出場に終わった。「怪我さえなければまだまだやれる。昨年の分も取り返したい(大下)」と気合十分だ。

そして赤ヘル打線の中心は今年も衣笠選手と山本浩選手。522打数156安打で打率.299 だった衣笠。あと1本ヒットを打っていたら自身初となる打率3割を達成できたのに涙を飲んだ。これまでの衣笠は打率よりも本塁打を求めていたが、打順のトップに起用されるようになると打率を重視するようになった。それだけに今年こそ打率3割を、と息巻いている。最後に控えしはミスター赤ヘルこと山本浩。一昨年はMVPと首位打者の両手に花だったが、一転して昨年は打率こそ数字を残したが内容は前年とは雲泥の差だった。「大下さん、キヌ(衣笠)と共にチームを引っ張ってまた優勝したい(山本)」とV奪回に燃えている。

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