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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

#117 プロ野球 スカウトの死 ②

2010年05月12日 | 1980 年 
決して人気球団とは言えないオリックスでは入団を渋る選手もいましたが、逆にスカウト達の
腕の見せ所でした。1998年、三輪田は入団を拒否する高校生投手の交渉で沖縄にいました。

1998年11月27日、プロ野球のオリックス球団の九州地区担当スカウトマン、三輪田勝利さんが、沖縄・那覇市のビルの
11階から転落して死亡した。警察は三輪田さんの死をビルからの飛び降り自殺と断定した。 以下、地元紙より抜粋

 【三輪田さん 自殺直前の様子】
三輪田さんは、オリックスがドラフト1位指名した、沖縄水産校のA投手との入団交渉のため11月21日、神戸市の自宅から
沖縄入りした。遺族の話によると、死亡前日の夜10時ごろ自宅に電話があったそうで、そのときはいつもと変わりない様子
だったという。入団交渉に三輪田さんに同行していた同僚のスカウトの話によると死亡当日の朝、同僚スカウトと宿泊先の
ホテルで食事をした際も、いつもと変わりない様子だったという。

当日午後5時に入団交渉のための面談が予定されており、その際の手土産は何にしようかと同僚スカウトと話し合った結果
手土産はメロンにしようということになり、同僚スカウトはメロンを買うためホテルを出る際、フロント前で三輪田さんと別れた
という。三輪田さんはホテルのフロント係に 「午後1時頃まで寝るので起こさないでくれ」 と頼んでいたらしいが、その後寝て
いるはずの三輪田さんが、いつの間にかホテルから姿を消していたという。

那覇署の調べでは最上階の11階廊下に三輪田さんの免許証、靴、財布が並べて置かれており住人が午後0時半頃、11階
廊下の手すりをまたごうとしている三輪田さんを2回見かけている。宿泊先ホテルのベットサイドのメモに 「ドラフト制度改革 
逆指名制度はナンセンス」と書かれていたため、ドラフトにおける逆指名制度がナンセンスだと悩んでの自殺と結論づけた。

三輪田はなぜ自殺したのか。真相は結局 明らかにされませんでしたが、2002年に出版された
『名スカウトはなぜ死んだか(六車護著、講談社)』には、今読み返すと生々しい裏金の実態に
ついての記述が出ています。


『オリックスは新垣サイドに対し、上限一億円プラス出来高払いの契約金を提示する腹づもりだった。さらに別途、五百万円を
用意していた。栽監督や後援会に謝礼金の名目で渡すつもりのものだった。この世界ではごくありふれた金額である。(略)
契約金を受け取った選手たちは、その中から世話になった関係者にお礼の気持ちを金銭で表すことになるのが通例である』

『裏交渉には当然、人間が絡む。球団と選手の交渉に割って入る「仲介人」であり、監督がその役を買って出ることもある。(略)
新垣サイドにも仲介人がいた。栽監督とも深い関わりを持つ人物である』

『三輪田と山本(当時スカウト)は福岡から合流した流(敏晴、当時スカウト)とともに交渉の打開策を話し合った。裏金の額である。
感触を勘案すると「裏金三千万円」という線が浮かび上がった。三人は、ひとまずこの額を仲介人に投げることに決めた』

『山本が仲介人と再度の交渉に出掛けて行った昼すぎのことである。仲介人は、今回も山本ひとりでいいと言った。ホテルで待機
する三輪田の部屋の電話が鳴った。傍らには流がいた。「三ちゃん、話がついたよ、すぐ帰るから」山本は言った。「契約金に他に
いろいろ合わせて五千万円」。三輪田は絶句して、のけぞるようにベッドにあお向けに倒れ込んだ』

『三輪田は再び電話を取ると、球団の経理担当に回してほしいと言った。別途金が五千万円なら税込みではいくらになるかを
確かめたかった。経理はそれだけで一億円を用意しなければならないと返答したのでした』



三輪田自身がプロ入り拒否した頃の野球界にも金銭等のやりとりは多少なり有ったと思われますが
逆指名が認められていた当時の方が、金額も多く怪しげな人物が横行していたのでしょう。私自身も
この頃からプロ野球への興味が薄れていきました。プロの評価として「カネ」が指標となる事に頭では
理解できたつもりでしたが、何故かスッキリとしませんでした。FAはアメリカでも活用されていますが
アメリカの場合はルールを守らなかった時は厳罰に処せられますが、日本ではタンパリングの規定が
曖昧で、球団関係者の接触は禁じられていますが、球団の意を受けた記者などの接触は黙認されて
います。ドラフト候補選手への「栄養費」については、全ての球団が少なくとも過去については否定を
していません。人ひとりが自ら命を絶ったという事実を野球界は真剣に考えるべきです。


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