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#306 食生活

2014年01月22日 | 1983 年 


ビールを片手に肉をたらふく腹一杯詰め込む、それが一昔前の野球選手の食事風景だったが今ではバランスの取れたメニューで健康に気を使うようになりつつあるらしい。もっとも中には昔ながらの暴飲暴食型の選手もいるようだが…


どこまでも体に良い物を追及していく西武・広岡監督は今年の春野キャンプでは大根おろしに目をつけた。誰から聞いたのか、大根おろしは機械でやると栄養分が損なわれるとの事。何でも大根に含まれるビタミンCが機械の急激な摩擦で大幅に減少するのだとか。早速、西武の宿舎「桂松閣」では職員総出で大根と格闘するはめに。「約80人の朝食分を人の手でやるとしたら日の出前から始めても間に合うかどうか…」と困惑を隠せない。たかが大根おろしと言うなかれ。肉食から野菜中心の自然食へに続く「選手寿命を1年でも伸ばす為なら何でもやる」機械文明の発達した現代社会の世の中で時代遅れという声を無視する広岡改革の第2弾だ。

広岡信奉者がプロ野球界で広まりつつある。テレビでもお馴染みの「土井勝料理学校」の土井勝校長が南海の健康管理アドバイザーとなり理想的な食事を提案した。土井氏は西武・堤オーナーとも親しく請われてシーズン中の食生活を広岡監督にもアドバイスした事がある。熱烈な南海ファンである土井氏にしてみれば宿敵・西武に塩を送る形となったが、今度は穴吹監督の要請で南海ナインに自然食導入を説く事となった。キャンプイン直前の1月29日に大阪球場内の食堂で講義を行なった。ヘビー級の門田や香川らは戦々恐々と講義を受けたが「肉食が全て悪いのではなく、バランスの取れた食事なら問題ない」と意外と寛容な内容に胸をなで下ろしたのも束の間、香川の1週間のメニューを目にしたとたん土井校長の表情が一変した。

「朝からカツサンドにジュース。昼はラーメンとチャーハン、喉が渇けば好きなだけコーラをがぶ飲み…これでは減量なんてとてもとても。喉が渇いたら牛乳にしなければダメ」とキツ~イお達しを受けた香川は大きな体を小さく折り曲げて「努力します」と答えるのが精一杯。なぜ牛乳なのか?牛乳には不足しがちなカルシウムが豊富だからだ。カルシウムが不足すると人間は集中力を失いやたらとイライラしてくるのだそうだ。土井氏は「カルシウム不足はエラーや三振の原因」とまで言い切る。さらに食事の際はよく噛んで食べる事も大切と強調する。噛むという行動は大脳の働きを促進させ運動能力向上にも効果がある。

ただ広岡監督の大根おろしに関しては「機械も手作業も栄養的には変わらない。広岡さん特有の言い回しでしょう」とやんわり否定。しかし一連の広岡改革については「今までの野球選手の食生活が滅茶苦茶だったのは事実。それに気づいて改善された広岡さんはやっぱり凄い人」と感心する。ただ自然食が広まりつつある球界でも親会社が食肉業の日ハムのメニューは相変わらず血の滴るステーキが中心だ。メインディッシュの肉やハムが5日に1度どっさりと日ハム本社から沖縄に空輸される。しかし小さな抵抗を試みる「造反者」もチラホラ。高代は自費でキャンプに自然食品を山ほど持ち込んだ。

ところで大食漢揃いのプロ野球選手御一行様を受け入れる宿舎側の気の遣い方も大変なもので、中日が今年から宿舎にしている石垣島のホテルサンコーストはプロ野球のキャンプは初体験でノウハウはゼロ。そこでコック数名が名護市の日ハムが泊まるホテルおおくらに研修に行き毎食のメニューを参考にした。その結果ほぼ日ハムと同じ肉食中心となったが、これが殊のほか選手間の評判が悪い。「質より量」に徹したのかメインのステーキは500g とボリュームはあるがボソボソで誰も手を出さない。また名古屋で味噌と言えば八丁味噌だがホテル側が用意しなかった為に味噌汁も不評だった。「とにかくカロリーが高いものを出す事ばかり気を取られて肉の質や調味料まで気が回りませんでした。プロ野球選手の御世話がこれほど大変だとは思いませんでした」とホテル支配人は肩を落とす。

ロッテが11年間利用している鹿児島サンロイヤルホテルも大サービスを展開中だ。一般の宿泊客の場合は料金の35%が食材費に充てられるが、ロッテの場合は65%とエンゲル係数が跳ね上がる。「これはホテルのPRのつもりで御世話させて頂いています」と新山支配人の言葉通り、夕食のテーブルには牛肉・鶏肉・蟹・海老…と豪華な特別料理が所狭しと並ぶ。また「カロリーの高い食事を日替わりで準備するのがキャンプ中の課題です」と語るのは大洋が利用するサンパレスホテルの総支配人。キャンプ中の1ヶ月間は他の一般客を断り大洋球団だけに応対する徹底ぶりだ。一般人が想像もつかないほど大量に食べても、さらに夜食にラーメンやおにぎりが用意されるというプロ野球選手だけに受け入れる側の苦労は絶えない。



一時は持てはやされた広岡監督ですが、後に贅沢病とも言われる痛風を患い一気に批判の的にされてしまいました。現在では高カロリーの食事だけが痛風の原因ではないと判明しましたが、当時は「選手には野菜と玄米を食わせて自分は贅沢三昧か」とバッシングされました。

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2 コメント

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Unknown (ドンブリ勘定)
2014-02-04 15:53:18
この頃の選手名鑑には選手の住所が載っていたと聞いたのですが本当ですか?それにしてもドカベン香川の食生活は酷いですね。練習をしてもあの体格だったのですから相当なカロリー摂取だったと想像出来ます。現在の香川は腎不全を患い人工透析を余儀なくされているとか…この食生活が少なからず影響しているのでしょうね。
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Unknown (くまお)
2014-02-09 22:12:09
確かにこの頃の選手名鑑には選手の住所が載っていました。往復はがきに「サイン下さい」って書いて送るとサインして送り返してくれるという話をクラスの女の子が教えてくれたので、自分もやってみたら、律儀にサインして送り返してくれました。たしか当時の巨人のエース小林繁投手だったと思います。
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