一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

自分の納得する仕事をする、ということ

2007-12-04 | よしなしごと
NHKスペシャル 若き技能エリートたちの戦い~巧みを競うオリンピック~は面白かったです。

技能五輪に向けて選手を育成する韓国と、生産現場の海外移転が続く中、製造現場の技能をしょうけいしようという日本の会社の若手技術者に焦点を当てた番組です。

メインに取り上げられたのが金型の某君(DENSO)と精密機械製造の畑弾手(「ダンテ」君。親も思い切った名前をつけたものです。)君(SEIKO EPSON)。

金型君はライバルの韓国の選手(韓国は国を挙げて取り組んでいて、優秀な高校に助成金を出し、優秀な選手には三星などのメーカーが職場を提供しています)が圧倒的なスピードで作業を進める中、設計に時間をかけたうえで1つのドリルで3つの部品を加工するという大技を繰り出したり、終了直前まで仕上げの研磨をするなど、丹念な仕事で金メダルを取ります(韓国の選手はスピードが災いして途中の加工精度のトラブルで5位)。

金型君自身も優秀な技術者として現場に出ずにエリート教育を受けてきたので、インタビューで、「半人前で金メダルを取っちゃったようなもんで、早く現場に出て一人前になりたい」と言ってました。


もっと泣かせたのが弾手君。
彼も、SEIKO EPSONの技術者継承プログラムの中で指導を受けていた優秀な技術者ですが、指導に当たったEPSONの名工(定年後も後進の指導に当たっている)の「課題は提示するが答えを提示せずに自分で考えさせる(なぜなら製造現場は常にそういう試行錯誤の繰り返しの中で自分で工夫しなければいけないから)」の指導方針の下に訓練を積んだ成果を遺憾なく発揮します。

「精密機械」の部門は、小さい工作機械の加工・組み立て・プログラム作成を一人でするのです。
加工への独自の工夫(上記名工も舌を巻いた)だけでなく、課題として出された機械操作のアルゴリズム(自動加工とマニュアル加工の両方をできるようにという課題)を反映したプログラミングの能力も求められます。
ところが弾手君は課題のアルゴリズム自体がおかしいと気づきます。
課題どおりにすると「オート」から「マニュアル」に切り替えたときにプログラムが動かなくなってしまう。
しかしこれを審査員に言うものの「切り替えはともかくオートはオート、マニュアルはマニュアルで動けばいいんだ」と言われてしまいます。

しかし弾手君、「自分の作る機械は自分が納得できる物でなければならない」と課題にないオートとマニュアルの切り替えにも耐えられるような回路を組んで提出します。

結果は満点での金メダルでした。


ホント、こういう職人気質の若者を見ると涙が出ます。


ホワイトカラーでも「自分の納得した仕事をする」という矜持を貫く機会はあると思うのですが、なかなか最近そういう意地を張る若者(年寄は言わずもがな)は見かけません。

何をやっても命や自己資産までは取られないことが数少ない取り得だという理由でサラリーマンをやっている身としては、自分なりのこだわりよりも正解を得ることに熱心になってしまう風潮はちょいと残念です(って実はそんなの昔からか?)。


好き勝手を言うことが得になるとまではいいませんが、自分の納得する仕事をすることが大事なんだということを身をもって立証する(そしてそういう機会を与える)ことが僕のようなオジサンたちの今後の課題なんだろう、と身につまされて考えさせられた番組でもありました。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする