一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

映画の感想まとめて(中編)

2005-06-25 | キネマ
キッチン・ストーリー







これは劇場で観ました。
ノルウェーの田舎に住む、ひとり暮らしの老人のところに、男性の台所での行動パターンの観察のための調査員が派遣されてくる。
「いかなる交流ももってはならない」というルールの中で老人と調査員はぎくしゃくしながらも、心を通わせていく、という話。

調査員が部屋の隅の脚立に一日中座りながら、男を観察している、という設定が絵的にも面白く、それで半分勝ったようなもんです。
ストーリーはあらすじ自体は「お約束」なんですが、細かいエピソードがとてもよくできています。
エピソードの細かいところのリアリティには苦笑させられるところが多かったです。

さらに、カメラが監督の視線の暖かさ(老人や調査員が質素な食事をとても美味しそうに楽しそうに食べているところ)や、スウェーデンとノルウェーの微妙な距離感(国境で左側通行から右側通行に変わるところ)をうまく表現していました。

単純に「癒し系」に分類して終わり、というにはちょっともったいない映画だと思います。


列車に乗った男







これも劇場で観ました。

街に来た銀行強盗を生業にする男が、たまたま古い邸宅に閉じ込もって暮らしている老教授の家に泊まることになり、二人はお互いに過ぎ去った自分の人生への悔いと相手の人生への憧れから、互いの人生を交換したいという思いを持ち・・・という話

そういえばこれも「キッチン・ストーリ」同様"old boy meets old boy"のストーリーですね

監督は「髪結いの亭主」「仕立て屋の恋」「橋の上の娘」のパトリス・ルコント
老教授役に「髪結いの亭主」のジャン・ロシュフォール、強盗役にジョニー・アリディー(知らなかったけどフランスでは人気らしい)

上のパトリス・ルコントの他の作品とは違い、今回は官能的な女性は出てこないのですが、ジョニー・アリディーが初老の男の色気を出してます。
考えてみると、上の作品も女性の官能美をストレートに表現したというより、女性を見つめる男の視線に込められた憧憬や欲望を生々しく表現した、という方が正確かもしれません。

今回はそれを男の男への憧れ、という形で表現しているわけです

「キッチン・ストーリー」が「暖かさ」であるとすると、これは「生々しさ」の映画です。


多分パトリス・ルコントってとても助平なオヤジなんだろうな・・・


アバウト・シュミット







これはレンタルで。

保険会社を定年退職した男が、退職して初めて自分がいかに会社に依存していたかを思い知る。
退職後の旅行にと妻の希望で買ったキャンピングカーで朝食を取るとそれですることがなくなってしまい、TVコマーシャルで知ったアフリカの少年のフォスター・ペアレントになり、アフリカの少年への手紙に鬱憤をぶつけるだけの毎日。
(これ以上はネタバレになるので)その後の事態の展開で、主人公は自分の人生の意味を見つめなおさざるを得なくなる。

これは"old boy meets himself"でしょうか。

でも、老人の単なる「自分探し」「生きがい探し」の美談でなく、「この歳で今更生き方も性格も変えらんねぇよ」というところをジャック・ニコルソンが名演

さすがです。

これも、ジャック・ニコルソンをキャスティングできた時点で勝ったも同然ですね。

もちろん、脚本もよくできてます。

ラストのアフリカの少年からの手紙が泣かせます。
コメント
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