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一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『第9地区』

2010-08-14 | キネマ
DVDのジャケットから宇宙人ものか、というくらいの先入観しかなかったのがよかったのか、意外と楽しめました。

(以下若干ネタバレあり)


近未来、南アフリカのヨハネスブルグ上空に突如巨大な宇宙船が現れ、中には瀕死の宇宙人が大量にいた。「人道的見地」から地球人は宇宙船から宇宙人を助け出し、足元に避難所(=第9地区)を作って生活の拠点を提供した。

それから20年後、第9地区から新たな居留地へ宇宙人たちを移転させるというプロジェクトが開始されたが、それが思わぬ展開になる、という話です。


宇宙人ネタというのは昔から数多く取り上げられているので、ストーリー的には少しは昔の作品とかぶってしまうので、結局SFX勝負になるのが多いのですが、これは現在社会の人種問題を投影している点で面白く、本当に近未来にありがちな感じです。

舞台が長年アパルトヘイト政策をとっていた南アフリカというのも皮肉が利いていますし、そこでは黒人も白人も宇宙人(これが結構原始的な性格に設定されています)に対して馬鹿にし下等生物(実際人間ではないんですが)と見下して、共同で排斥運動を起こしたりします。
そして、居留地の強引な移転はパレスチナを想起させます。
また、ナイジェリア人のギャング(これは悪者にしちゃってPC的にはいいのでしょうか?)とかも登場します。


このように舞台設定はオリジナルなんですが、モチーフは過去のいろんな映画のコラージュのようになってます。
ただ映像は手持ちカメラでドキュメンタリー風に撮っているので、意外と破綻なく展開します。
本歌取りしている映画としては『インデペンデンス・デイ』(ジャケットからそうだし)『ブラックホーク・ダウン』『48時間』『ザ・フライ』『E・T』『MIB』『トランスフォーマー』などなど、設定やシーンや小物をいろんなところからとっています。(ほかにもあると思うけど)


エンターテインメントとして面白いと同時に、「エイリアン」として認識した相手(異人種、他国民、「よそ者」)に対する人間の行為を描いている佳作です。



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『ゴールデンスランバー』

2010-08-12 | キネマ


最っっ高!

 

 

 

(追記:以下ネタバレあり)



と見た直後に興奮して書いて寝てしまったのですが、最近見た邦画の中では出色のできばえでした。

現代の日本を舞台にした映画というのは、日常を知っているせいかどうしてもうそ臭いところが気になってしまうのですが、この映画は細かいところで不必要に大げさになることもなく、リアリティと、映画という「つくりごと」の役割分担がとてもよくできています。
細かいセリフがすべてきちんと伏線になってもいて、脚本かまたは原作(未読)の出来がとてもいいのだと思います。

ストーリーは、首相暗殺犯の濡れ衣を着せられた主人公が警察の追跡から知人・友人のつながりに助けられながら逃げるというものです。
この手の設定の場合、主人公が黒幕を見破って逆襲するところまでいくのがハリウッド映画の定番ですが、この映画ではうまく逃げおおせるところにクライマックスを持ってきています。
その分妙な黒幕が登場したりしないのでトンデモな設定にならずに済んでいるという部分もあるし、ストーリーが密度が濃くなっています。


お勧めです。

 


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『恋愛適齢期』と『ロスト・イン・トランスレーション』

2010-08-01 | キネマ
あまりに暑いので週末は家でDVD鑑賞。
塩野七生の『日本人へ』で触れられていた2作が未見だったので選択。
最近面白いの映画がないのか自発的な選択をする気力がないのかは微妙なところ。


『恋愛適齢期』

ジャック・ニコルソンとダイアン・キートンの大人のラブストーリー。
60台の男と50台の女のホンネを随所にのぞかせながらのウイットの効いた会話がごちそう。
ホンネの世界で勝負すると男は女に勝てない、というところをスッピンで目尻や首筋の皺も気にしないダイアン・キートンの熱演が証明してます。





『ロスト・イン・トランスレーション』

こちらはビル・マーレイ演じるミドルエイジ・クライシスの男が主人公。
小さなカタルシスはあったけど、主人公はアメリカに帰ったらいずれポルシェを買ってしまうんだろうな、というようなストーリー。
ヨーロッパだと文化へのコンプレックスがあるし、東南アジアとかアフリカだとボランティア精神に目覚めるし、南米や中近東だと文明の衝突をしてしまうので、「ロスト・イン・トランスレーション」が起きる舞台としては日本がちょうどよかったのかもしれません。


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『マイ・ブラザー』

2010-07-13 | キネマ
『月に囚われた男』を見たときに予告編が気になっていた映画。

池袋西口のシネマ・ロサで上映中。

池袋で「ロサ」といえば元地元民としては懐かしい名前で、映画館よりは居酒屋雑居ビル「ロサ会館」の方が有名でした(僕が学生の頃は『金太の大冒険』のパフォーマンスで有名だった「青春の館」という居酒屋がありました。)。
池袋西口というのは戦後「青線」地区だったところで、30年前はまだまだディープで、ロサ会館の区画より北側は覚悟がないと立ち入らないほうがいい場所。ロサ会館の近くも夜になると「おネエ」の客引きがいたりして。

シネマ・ロサは今では単館系を上映していますが、当時はポルノ映画専門館でした(こちら参照)。確か一階が和物、地下が洋物。当時はまだエロ動画はおろかアダルトビデオもなく、エロ系コンテンツとしてはエロ本かポルノ映画という時代だったし、当時は映画も安かったので、たまにお世話になりました。

 また、卒業旅行のときにドイツで見た映画を上映していて、偶然それを見た友人が途中で同じ映画だと気がつき(アメリカ映画だったがドイツ語のタイトルがついていたので入るときは分からなかった)、「この館内でモザイクの中を見たことのある奴は俺しかいるまい」と優越感にひたったと(映画の中身とは別の)興奮して電話をかけてきたのもここでした。
(こういうタイトルはいつまでも記憶に残っているので検索したところヒットしたのですが、タイトル・内容は割愛。ちなみに『ディープ・スロート』の監督の別名での作品らしいです。)


 映画館は椅子は今風にドリンクホルダーなどもついて座り心地のいいものになっていますが、造り自体は昔と同じで、ちょっと懐かしい気持ちで階段を下ります。

さて本題。
優秀な軍人で高校時代からスターQBだった兄(トビー・マグワイア)と、昔からオチこぼれで刑務所を出たり入ったりしている弟(ジェイク・ギレンホール)、そして兄弟の高校の美人チアリーダーである兄の妻(ナタリー・ポートマン)の三人とその家族を中心に、罪と贖罪、家族の絆を描いた映画です。(詳しくは公式サイト参照)
大きな設定以上に細かいエピソードや台詞回しが巧みで、特に子供の存在が効いているなかなか優れた脚本です。

ところでテロップにリメイクだとあったので、オリジナルのデンマーク映画『ある愛の風景』(2005年サンダンス映画祭で観客賞受賞)の予告編を見たら、エピソードも含めてかなり忠実なリメイクになっていることがわかりました。それだけ完成度の高い脚本だったのでしょう。
最後まで安易な解決をしないあたりは確かにアメリカ映画っぽくないとは思いました。

ただ『マイ・ブラザー』の方もうまくアメリカの田舎町の雰囲気に合わせたストーリーになってますし、トビー・マグワイアとジェイク・ギレンホール、それ以上に子役2人が好演しているので、リメイクとしてもいい作品だと思います。

PS
ネタバレになるので詳しくは書きませんが、兄がアフガニスタンで置かれたような状況で、軍のマニュアル・ルールどのように対処することになっているのでしょうか。

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『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』

2010-07-06 | キネマ

独身最後の夜を友人と馬鹿騒ぎをする「バチェラー・パーティー」の翌朝、目が覚めたらひどい二日酔い(hangover)で記憶がないだけでなく、肝心の花婿がいなくなっていた。そして花婿を探すために前夜の行動を辿っていくと、常識外れの馬鹿騒ぎの実態が明らかになり・・・というコメディです。 
ここまで派手ではないものの、酒飲みなら多少の経験はあるような話を、目いっぱいふくらませていいるので、自らの失敗を省みたり、どうせやるならここまでやってみたいなどと思いながら楽しめます(女性が観ても面白くないかもしれませんけど)。  

ラストの種明かしは、爆笑です。

設定やセリフ回しがpolitical incorrectの微妙な線をついてるところも楽しめます。

もともと日本では公開されない予定だったらしいですが、町山智浩氏の紹介などで話題になり、 映画「ハングオーバー」劇場公開を絶対に求める会などの運動(言葉遣いは変だけど)もあって  


日本では9月21日に行われた第2回したまちコメディ映画祭in台東の前夜祭である映画秘宝ナイトで一度上映され、その後はビデオスルーとなる予定であったが、劇場公開されることが決定した。(wikipedia


ということです。  

公式サイトもありますが、予告編や解説はあとにして、主人公たちと同じくなんの予備知識もなく観たほうが楽しめます。


上記wikipediaによると続編の製作が決定しており、タイガー・ウッズへ出演依頼がされているそうで(まあ、そういう類の毒のある映画ですw)、実現すれば楽しみです。

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『サンシャイン・クリーニング』

2010-05-31 | キネマ
何をやってもうまくいかない姉妹が一発逆転を賭けて死亡事件のあった現場の清掃業に乗り出す、という話。
リトル・ミス・サンシャインの製作チームが手がけた作品で、世間からは笑われようががんばる人を描く、という路線の作品。

 ただ、前作は子供が主人公だったのに対し今回は大人が主人公なので、そう何事もうまくはいかない、そもそも「うまくいく」って何なのか、という大人の悩みを抱えたストーリーになってます。
 特殊清掃はひとつの道具立てで、30台半ばの女性の自分探しがテーマの映画です。

 なので、実際の特殊清掃現場は映画以上に凄惨なのでしょうが(日本の同業の方のブログ特殊清掃「戦う男たち」参照)、映画では比較的明るく描かれています。
 ストーリーとは離れて興味深いのが、同業者との争い。
 アメリカでは自殺と殺人で年間30万人以上が死亡しているだけに(参照)けっこう同業者はいて、新規参入者には「ショバを荒らす」と風当たりも厳しいようです。
 また、安全衛生管理・廃棄物処理規則などの講習会が充実しているのもアメリカならではという感じがします。


 映画としては前作ほどのカタルシスはないですが、それが大人の人生なのかもしれません。

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『セントアンナの奇跡』

2010-05-17 | キネマ
素材はいいんだけど料理法が・・・

NYの郵便局で働く男ヘクターが、切手を買いに窓口に現れた男を突然射殺。彼の部屋からは、イタリアで行方不明になっていた彫像の頭部が発見される。ヘクターと殺された男の関係は?
実はヘクターは第二次世界大戦中に黒人部隊“バッファロー・ソルジャー”の一員で、事件の鍵は1944年のイタリアにあった・・・

と話は展開していきます。


第二次世界大戦中の米軍内での黒人部隊に対する差別と「黒人差別」自体を知らないイタリアの村人たちとの交流を対比させながら、そこで起こった悲劇が謎解きの鍵になり、そして最後の「奇跡」につながっていく、というストーリーなんだけど、今ひとつ食い足りない感じがしました。

監督はスパイク・リーだと後で知ったのですが、確かに黒人部隊への差別や黒人兵の鬱屈、そして黒人兵といってもステレオタイプでなくさまざまな人物がいる、という描写の部分は力が入っています。
その反面、戦闘シーンや兵士同士の会話などは意図的に戯画化されたかのようにちょっと陳腐です(タランティーノが少し入っていた感じ)。

全体に散漫になってしまっていて、その結果、最後の「奇跡」は都合よすぎた感が出てしまいました。


ストーリーの筋自体はいいので、構成・編集をもっと工夫すれば、最後の謎解きから「奇跡」までつながって盛り上がったと思うのでちょっと残念でした。



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『サブウエイ・パニック』

2010-05-14 | キネマ
『サブウェイ123 激突』
の元になった映画。1974年の作品です。
東京の営団地下鉄(当時)の幹部が見学に来るシーンが冒頭にあったりはしますが、さすが2度もリメイクされているだけあって、ストーリーの完成度は高く、また道具立ても地下鉄というほぼ当時から確立した運送手段なので時代を経てもあまり古びた感じがしません。

 
主演の鉄道公安官役はウォルター・マッソー。個人的には「がんばれ!ベアーズ」の印象が強いからかもしれませんが、パンダはおとなしそうに見えるけど実は熊の仲間、甘く見ると痛い目にあうぞ、というキャラクターを好演しています。


(以下ネタばれ注意)



アメリカではくしゃみをすると"(god) bless you"と声をかけますが、この作品でウォルター・マッソーは別の声をかけてます。なんだろうと後で調べたら、"Gesundheit"という言い方もあって、これはドイツ語で、お大事に、の意味だそう。これはドイツ人やユダヤ人も使うようです。
Wikipediaによれば、ウォルター・マッソーはNY生まれだが祖先はロシア系ユダヤ人らしく、これを使っていたのではないかと思います(DVDに英語字幕がなかったので確認できず)。

映画ではこれが重要な伏線になります。

この伏線も、他の映画やTVドラマでけっこう流用されていたんんじゃないかと思います(すぐには思い出せないけど)

 
多分いろんなところで「お手本」になった映画ではないかと思います。


こうなるとリメイクするにはストーリーを少し変えるか、人物造形や背景事情を現代風にするか、手の入れどころが難しいですね。『サブウェイ123 激突』はどうせやるなら犯人の設定をもっと現代風にアレンジしてみてもよかった野ではないかと思います。



ちなみに『サブウェイ123 激突』のエントリで

現金輸送でトラブったときに、市長が「何でヘリで運ばない?」と言うシーンがあったのですが、これはひょっとしたらプロデューサー側からの「アクションシーンを入れろ」という横槍があってそれに対する皮肉だったりするのかも。

と書いたのですが、実はこのシーンは原作を忠実に再現しているところでした。


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『カティンの森』

2010-05-11 | キネマ

先日、追悼式典に向かうポーランド大統領がロシア領内で飛行機事故で亡くなって一瞬物議をかもしましたが、「カティンの森」は侵攻したソ連軍により連れ去られたポーランド軍兵士が大量虐殺された事件の現場です。

カティンの森虐殺事件はドイツのソ連侵攻時に発見され反ソ宣伝に使われる一方で、戦後のソ連占領下ではナチスドイツの仕業とされます。
ソ連が公式に自らの行為だと認めたのはゴルバチョフ政権になった1990年です。(詳細はWikipedia参照)


映画では、家族の死もナチスの政治宣伝への協力を要請されたり、ソ連からは墓碑銘に正式な享年を書くことすら禁じられるという中で生きることを強いられるポーランド市民の様子が描かれます。
そして、「虐殺者」が「統治者」になった戦後のポーランドで、生き延びるために妥協をする人としない人との対立、そしてそれが日常事あるごとに試され、占領が続くことで心が疲弊してしまうさまが痛いほど伝わってきます。

前半でポーランド軍の将軍が徴兵されて捕虜になった兵士たちに向かってこう語りかけます。

「生き延びてくれ、君たちなしでは自由な祖国はありえない、我々は欧州地図上にポーランドを取りもどすのだ。」

しかしポーランドの民主化が実現されるにはそれから50年の年月が必要だったことを考えると、それがいかに困難な道のりだったかを改めて考えさせられます。


話がちょっと変わりますが『ピアノの森』ではちょうどショパンコンクールの二次予選に入ったところです、ショパンの楽曲にこめられたポーランド人の苦難の歴史をいかに表現するかということが一つのポイントになっているのですが、そこにはショパンの時代以後も繰り返されてきた東西列強による支配の歴史へのポーランド人の思いも込められているのかもしれません。

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『私の中のあなた』

2010-05-10 | キネマ
自分の人生を選択することと、周囲の人々の善意や愛情が必ずしも(往々にして)両立しない、ということを、反則に近い巧みな状況設定で描いた映画。

白血病の姉を救うために、ドナーとして適合するような遺伝子操作によって生まれ、出生直後の臍帯血の提供をはじめとして輸血や骨髄移植など姉の治療のためにさまざまな協力をしてきた妹が、余命わずかな姉を前にして腎臓移植の手術を受けることを拒否して両親を訴える・・・という話です。


兄弟姉妹に対する親や周囲の善意や愛情が結果的に人間関係を難しいものにしてしまうことは、ここまで極端でなくても病気や障害やはたまた勉強の出来不出来家業を継ぐ継がないというような状況でもあります。
 
この設定であればこそ、家族愛・兄弟愛の相克を純粋な形で描くことができ、キャメロン・ディアスという演技派というよりはストレートさが持ち味の俳優のキャスティングも納得できます。

少ない登場人物に明確な人物造形を割り振ったところや(子役は上手なのは当然として、父親がいい味を出してます)、ラストシーンに畳み込むストーリー展開の巧みさもあわせ泣かせます。
一方で現実は浮世のしがらみがたくさん絡んでくるので、逆に悩みが深かったりするんだよな、などということもついでに考えさせられました。


(以下ネタばれあり)

ところで題名の「私」と「あなた」が誰を指すか、また"My Sister's Keeper"という原題はいまひとつぴんとこなかったのですが、原作の小説ではアナは交通事故死し、アナの臓器はケイトに移植されてケイトが生き続け大人に成長するという展開のようです(参照)、それなら題名も腑に落ちます。



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『ハートロッカー』

2010-05-07 | キネマ
爆弾処理班を通じて現場のリアリティを極限まで追求した映画。
約2時間を息つかせずに見せます。
ジェームズ・キャメロンの『アバター』とアカデミー賞の「元夫婦争い」でも話題になりましたが、こっちが3Dだったら映像のリアルさが前面に出すぎて観ているほうが持たなかったと思います。


一人だけ死亡フラグがあからさまだったことをのぞけばストーリーも緊迫感を維持しているし、主役の爆弾処理チームの3人を性格の色分けをせず、経験を積むにつれて、また状況に応じて考えや行動が揺れ動く様子を描いているのも秀逸。

爆弾処理班は、自分の命と他人の命、他人の中でも友軍と敵と一般市民(さらに知人・友人と知らない人、友好的な人と敵対的な人)の命の軽重の価値判断の交差点に自分の命を危険にさらしながら立っているわけで、その中での精神のバランスの保ちかた(バランスを保てなくなることも含めて)を究極的に問われていると言えます。

見方を変えると、普通の戦闘員は自分から「殺す」という選択肢があるために上の問題はより短絡的に解決しやすくなってしまうのかも知れません。


いい意味でカタルシスのない映画です。


(余談)
六本木ヒルズのTOHOシネマズのプレミアムシートをネット予約して行ったのですが、予約したチケットを受け取るのに、普通のカウンターと同じくらい列ができていたのと、プレミアムラウンジと言いながらポップコーンは普通のところまでわざわざ買いに行かなければならず、椅子がゆったりしている点以外はあまりプレミアム感を感じられませんでした(笑)

(おまけ)
LOSTのケイトがちょい役で出てました。
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『月に囚われた男』

2010-04-29 | キネマ
連休は例年通り「暦どおり+近場」ということで、まずは『月に囚われた男』(公式サイトはこちら)。




監督・脚本のダンカン・ジョーンズはデヴィッド・ボウイの息子だそうですが、1971年生まれで2009年の本作が長編デビューということは監督としては遅咲きの方なので、「親の七光り」ではなんでしょう。

資源エネルギーの枯渇した近未来の地球に新エネルギーを供給するために、月に作られた鉱山で3年契約で一人で採掘作業にあたる男が主人公。
任期を満了して家族の待つ地球に戻るまであと2週間というところで異変が起き、自分に課せられた仕事の奇妙さに徐々に気がついてゆく・・・という話です。

一人で鉱山採掘作業に携わることとか最初の設定自体が微妙に不自然な感じを残しながら話は進み、予想外の出来事をきっかけに更に謎が深まりながらも徐々に全体像が明らかになってゆきます。

主演はサム・ロックウェル(この俳優は知りませんでした)。
助演、というか基地での唯一の話し相手で手助けをするロボットの声にケヴィン・スペイシーを使っているというのが泣かせます。
(上の写真はアームだけですが本体はこれ)


このロボットの表情がけっこうよくて、また大事な役回りを果たします。

設定の妙と謎解きの筋書きにのせられつつ、要所要所で心地よく予想を裏切られる面白い映画です。

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『遊星からの物体X』

2010-04-19 | キネマ
TSUTAYA「旧作100円キャンペーン」にまたつられてしまいました。

1894年の映画ですが、1951年の『遊星よりの物体X』のリメイク。
ちなみに原題は前作"The Thing from Another World"に対して"The Thing"ですが、邦題も芸が細かいところを見せています。

前作は昔テレビで最後の方だけ観た記憶があるので印象は薄いのですが、本作は「地球外生物」「存在がわからない」「人間を襲う」「増殖・変身する」「閉鎖空間での出来事」などSFホラーの勘どころをすべて押さえています。

Wikipediaによれば、『遊星よりの物体X』(1951年)のリメイクというよりも、原作となった短編小説『影が行く』に対する忠実な映像化とのことで、原作の素性のよさがうかがえます。
(再リメイクの話もあるらしい。)

ホラーといってもスプラッター系や怨念系は好きではないのですが、これはOKでした。




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『レスラー』

2010-04-04 | キネマ
ミッキー・ローク主演の映画で初めて感情移入できたかも。

引退を覚悟しながらもリングでしか充実感を得ることができない元スタープロレスラーを熱演。
不健康に歳をとってやさぐれた顔つきと「猫パンチ」の頃よりも鍛えた身体は、役作りに相当入れ込んだ感じが伝わってきます。


「男の花道」風でなく「業」に焦点を当てて描いた脚本は、主人公と同じ「80年代最高!90年代くそくらえ」(音楽についてですが)の自分には身につまされすぎて「もう見てられないよ」という気持ちになったまま最後まで観てしまいました。






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『ダメージ シーズン2』

2010-03-30 | キネマ
『LOST』や『24』よりも面白い。

ストーリーの詳細は公式サイトをご覧ください。

不完全情報の中で(往々にして間違った状況認識のもとに)登場人物がどのような判断をするか、という点では共通点なのですが、『LOST』や『24』のようにつぎからつぎに「実は・・・」というご都合主義の展開でなく、最初の4話くらいでほとんどの登場人物が出てくるし、一応法律の枠の前後の現実的な設定のなかでフェアな勝負をしています。

ストーリー展開も最後から逆算して緻密に計算されていて、フラッシュバックや将来の断片などが効果的に使われています。
しかもDVDで6巻全13話と1シリーズがコンパクトにまとまっていて、一気に見ることができます。

登場人物としては、弁護士事務所の経営者のグレン・クローズの無表情ぶりがやはり貫禄です。

過去の経緯や登場人物の性格がわかったほうが面白いのでシーズン1からご覧になることをお勧めします。


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