冬のある日の事でした。
父が言いました。
「毎朝鳥の声がするのだが姿が見えない・・。」
母が言いました。
「ピー、ピーって可愛い声で鳴くんだに・・。」
父と母は不思議そうに話してくれました。
どうもその声は二階の部屋の押し入れ付近から聞こえて来るようで、
もしかしたら、間違って小鳥が家の中に舞いこみ、屋根裏にでも入ってしまったかのようでした。
2人は口々に説明してくれます。
「それが午前中しか鳴かんの・・・」
「決まり良く、1分か1分半に1回ずつピーって鳴くんだ。」
「押し入れの中や屋根の方までどこを探してもおらんのだが・・・」
「それがすずめのような可愛い声でなぁ・・・」
「それにしても餌もやらんのだに、良く生きとるなぁ・・」
「家のピーちゃんはいい子だに、餌も食べずに、毎朝ちゃんと起きて鳴いとる。」
その声が午前中の2時間ほど聞こえるようになって、もう半月ほど経つらしい。
ある日曜日の午前中、私が実家に行くと父が言いました。
「家の鳥の声を聞きに来たのか?」
私もちょっと気になっていました。
その時ちょうど声がしました。
昔、私の使っていた部屋の、確かに父のいう通り、押し入れ付近から聞こえます。
一旦鳴くと1分くらいの間隔を置いて、又ピーと鳴きますー確かに父のいう通り。
スズメの様な可愛い声でー確かに母のいう通り。
しばらく押し入れを開けたりしながらじっと耳を澄まして、声のする方を見ると、
声と同時に赤いランプが点滅しました。
天井近くの壁に取り付けた煙感知機が、
今年のあまりの寒さで誤作動するようになったのでしょう。
どうも寒い時間だけ、等間隔で僅か1秒くらいピーと鳴っていたのでした。
赤い点滅ランプとその鳥の声が一致した限り、
疑いもなく小鳥の正体は煙感知機で・・・
残念ながら両親に報告しなくてはなりません。
何となく(何となく・・・)
両親ががっかりしたのは言うまでもありません。
それで、今年の87歳の父の誕生日に
錦花鳥というピーと鳴く鳥をプレゼントしたのです。
千葉に住む兄夫婦にその話をしたら
「両親には鳥じゃなくても煙感知機で良かったんじゃないの?
餌もやらないのに毎朝ちゃんと起きて、可愛い声で鳴いていたんでしょ・・・」って笑ったって・・・。
つがいで買ったので名前がピー太とピー子になりました。