「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「親と子が会えない」 (1)

2010年09月08日 22時11分17秒 | Weblog
 
 今日のNHK 「クローズアップ現代」 で、

 離婚後に 親と子が会えなくなる トラブルの問題を やっていました。

( 「BPD家族の会」 でも、 これと同じような問題が 語られています。)

 離婚して 子供に会えなくなった親たちが、

 全国各地で 声を上げ始めているといいます。

 また、 親に会えない子供が、 心に深い傷を負うケースも 多いそうです。

 番組では これらの問題を取り上げていました。

 
 離婚をすると、 夫婦は元の他人に 戻ることができますが、

 子供にとって 親子関係は変わりませんし、 親にとっても 子供は子供です。

 現在の日本は 「単独親権制度」 で、

 離婚した場合、 親権は どちらか一方の親にしか 認められません。

( 欧米などは 「共同親権」 で、 離婚後も 双方の親に親権があります。)

 そのため、 親権を失った親が 子供に会うのは、

 親権を持った親の意向に 大きく左右されてしまいます。

( 現実には、 母親が親権を持つ割合が 8割を超えています。)

 離婚後、 子供と面会をしている親は 3割弱、 していないのが 6割弱です。

 夫婦の別れが、 親子の別れに繋がってしまっていることを 物語っています。

 子供と同居している、親権を持った親が、

 別れた親と 子供を会わせないことが 多いといいます。

 別れた親が 子供との面会を求めて、 調停や審判を起こすケースが、

 この10年で 3倍に急増しています。 (現在、年に約8千件)

 その多くが、 離婚後も 子供の育児に関わりたいという 父親からのものです。

(次の記事に続く)

〔 NHK 「クローズアップ現代」 より 〕
 
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臓器の鮮度 …… 「生死命(いのち)の処方箋」 (28)

2010年09月07日 21時12分05秒 | 「生死命(いのち)の処方箋」
 
(前の記事からの続き)

○東央大病院・ 透析室の外の廊下

  美和子が入口から 淳一と多佳子を

  見守っている。

美和子 「………」

  廊下を 世良が走ってくる。

世良 「美和子 …… !」

  世良、 中の淳一に気付き、 美和子を離れ

  たところへ導く。

美和子 「(訝る) どうしたの?」

世良 「木下さんの肝機能が 急に落ちてきたら

 しいんだ ……!」

美和子 「え …… !?」

世良 「脳死になってから、 川添先生は 臓器の

 鮮度を保つ 治療もしなかったし」

美和子 「移植への影響は …… !?」

世良 「分からない、 楽観はできないそうだ…

 …!」

美和子 「そんな …… !?」
 

○同・ ICU

  人工呼吸器に繋がれた幸枝。

  点滴や何本ものチューブが 差し込まれて

  いる。

  若林、 緒方らスタッフが 幸枝の治療に当

  たっている。

緒方 「ラクツロースの5倍希釈液を 千ミリ注

 腸」

ナース7 「はい」

若林 「カナマイシン、 腸内殺菌の用意をし

 て」

ナース8 「腸管内投与ですね?」

  美和子と世良が 慌てて飛び込んでくる。

美和子 「若林先生 ……… !!  ドナーの容体は

 …… !?」

若林 「……… (美和子の顔を見る)」

  美和子、 幸枝を見る。

美和子 「肝 (かん) は 使えるんですか ……

 !?」

若林 「……… 最悪の場合も、 あり得る ……

 … (渋面)」

美和子 「!! ……… (表情が凍りつく)」

(続く)
 
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多佳子 …… 「生死命(いのち)の処方箋」 (27)

2010年09月06日 21時00分56秒 | 「生死命(いのち)の処方箋」
 
(前の記事からの続き)

○東央大病院・ 人工透析室 (朝)

  美和子が 渋る淳一を引っ張ってくる。

淳一 「何だよ、 どこ連れてくんだよ ?」

美和子 「ジュン、 平島さんに謝りたいって

 言ったじゃない?」

淳一 「ええ ?  いいよ、 そんなの !」

美和子 「潔くしなさい、 男の子 (淳一の腕を

 後ろにひねって 押していく)」

淳一 「あ、 いててて …… !!」

  透析中の多佳子、 美和子と淳一に気付く。

美和子 「(淳一の腕を抑えたまま 笑顔で)

 平島さん、 夕べはよく寝られた?」

  多佳子、 コクッと頷き、 ウォークマンの

  イヤホーンを 耳からはずす。

美和子 「ジュンがね、 平島さんに挨拶したい

 って」

淳一 「あ、 いや、 あの …… お、 おはよう

 …… ! (作り笑顔)」

多佳子 「…… おはよう ……」

淳一 「きのうはオレ、 何か勝手なこと 言っち

 ゃったかな、 なんて …… (照れ笑い)」

多佳子 「(首を小さく横に振る)」

美和子 「じゃあ、 あたしは オペの準備がある

 から (立ち去る)」

淳一 「あ、 姉キ、 待てよ …… ! (焦る)」

  淳一、 多佳子に向き直り、 照れ笑い。

淳一 「へへ …… (間が持たない)」

多佳子 「………」

  イヤホーンから流れる音楽。

淳一 「あれ ?  それ …… 友部正人の曲じゃな

 い ?」

多佳子 「うん ……」

淳一 「えー、 好きなの ? (ぱっと表情が明る

 くなる)」

多佳子 「詩がいいの。 佐伯くんも ? (目が輝

 く)」

淳一 「オレ、 アルバムほとんど持ってるよ!

 友部ってさァ、 すごくきかん坊なところと、

 すごく弱いところが あるんだよね。 だから

 納得させられちゃうんだ」

多佳子 「ほんとに自分のこと 歌ってるんだよ

 ね」

淳一 「オレ  『何でもない日には』 も持ってる

 んだぜ、 今もう売ってない奴!」

多佳子 「…… それって、 10年前のアルバムだ

 よね。 ちょうどあたしが 透析始めた年 ……

 …」

淳一 「……… (神妙になって) 透析、 大変だ

 ったんだね」

多佳子 「(うん) ………」

淳一 「今まで、 辛かったんだ ………」

多佳子 「……… (うん)」

淳一 「…… きのうはごめん ………」

多佳子 「(ううん) あたしも ………」

淳一 「手術、 うまくいくといいね (多佳子の

 手を取る)」

多佳子 「ありがとう ……」

淳一 「(パッと手を放し 頭を掻く) なんて、

 手握っちゃったりして …… !」

多佳子 「……… (笑む)」

淳一 「…… よかった …… オレ、 嫌われたかと

 思ってた ……」

多佳子 「…… 佐伯くんは 手術受けないの?」

淳一 「……(質問には答えず) 平島さんには、

 元気になってほしい ……」

多佳子 「……… うん …… (思いをまとめきれ

 ない)」

(次の記事に続く)
 
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リンパ球交差試験 …… 「生死命(いのち)の処方箋」 (26)

2010年09月04日 20時21分05秒 | 「生死命(いのち)の処方箋」
 
(前の記事からの続き)

○佐伯宅・ 淳一の部屋

  光の中で 寝ている淳一 (サングラス)。
 

○東央大病院・ 第二内科・ 控室 (深夜)

  美和子、 若林、 それぞれ 電話をかけてい

  る。

若林 「(電話で) 麻酔科の山野先生も。 はい、

 ご協力ありがとうございます」

美和子 「(電話で) ええ、 中央検査部と輸血

 部にも そうお伝えください。 よろしくお願

 いいたします」

  美和子と若林、 受話器を置く。

  小池が 組織適合検査の結果を持って 入っ

  てくる。

小池 「リンパ球交差試験の 結果が出ました。

 Tレギュラー、 Bウォーム、 Bコールド、

 全部陰性 〔*〕 です」

 〔*抗体がなく 移植可能ということ〕

若林 「そうですか、 ありがとうございます」

小池 「それで 淳一くん本人の気持ちは?」

美和子 「私が絶対に 同意させます」

小池 「他のレシピエントの 準備は進めていま

 す。 時間に余裕はありません」

美和子 「分かっています」

(次の記事に続く)
 
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レシピエント …… 「生死命(いのち)の処方箋」 (25)

2010年09月03日 19時59分35秒 | 「生死命(いのち)の処方箋」
 
(前の記事からの続き)

○東央大病院・ カンファレンスルーム

淳一 「移植して 寿命が一年延びたの 二年延び

 たのって 大騒ぎしても」

緒方 「現在 世界の肝移植の成績は、 一年生存

 率が80%、 五年生存率が70%にも 達し

 てる。 五年を無事に過ぎれば、 あとは安定

 した状態が 期待できるということなんだ

 よ」

淳一 「拒絶反応で結局 前より大変な思いする

 ことだって あるんでしょ?」

緒方 「最近 FK506 〔*〕 という 強力な免疫

 抑制剤ができてね、 拒絶反応の頻度は 40

 %以下に抑えられるんだ」

 〔*FK506 …… 免疫抑制効果は 従来の

   シクロスポリンの 数十倍から百倍と言

   われる。 わが国では 生体肝移植で緊急

   避難的に 厚生省が使用を認めたが、

   腎移植についての治験が 行われているだ

   けである。〕

淳一 「でも人間て どれだけ生きたかじゃなく

 て、 どうやって生きたかが 大事なんじゃな

 いですか?」

美和子 「患者さんに一日でも長く 生きてもら

 うために、 私たちがどれだけ 苦労してると

 思うの?」

淳一 「オレは 他人の物もらってまで 生きたい

 とは思わない。 人間は自分に与えられたも

 ので 精一杯生きればいいんだ」

多佳子 「(小さな声で) …… あたしは ……」

淳一 「? …… (多佳子のほうを向く)」

多佳子 「あたしは …… 今の生活と さよならで

 きるんなら、 どんなことだって ………」

多佳子の母 「多佳子 ………」

淳一 「………」

緒方 「平島さん、 膵臓の移植は とても難しく

 て、 万が一には 手術が成功しないこともあ

 る。 でもうまくいけば、 透析からも解放さ

 れるし 皆と一緒に 学校へも行ける。 将来は

 就職や結婚だって。 我々は全力を尽くしま

 す。 それに懸ける 意思がありますか ?」

多佳子 「(か細い声で) はい ………」

美和子 「平島さん、 大切なことですよ。 しっ

 かり答えて」

多佳子の母 「多佳子、 どうなの ……?」

緒方 「我々を 信じてもらえますか?」

多佳子 「(泣きそうな顔をして) …… あたし、

 治りたい ……… 普通の生活がしたいの ……

 … !」

多佳子の母 「(多佳子の手を握り) やって

 いただこうね」

多佳子 「……… お願いします! (はっきり

 と)」

  緒方、 力強く頷く。

美和子 「ジュンには 平島さんの勇気が」

淳一 「……… オレは …… (多佳子のほうを見

 る)」

  淳一と多佳子、 目が合う。

多佳子 「……… あなたは、 ずいぶん元気そう

 だけど ………」

淳一 「………」

多佳子 「(腕をまくり、 痛々しい 透析の針の

 跡を 見せる) こんな透析、 死ぬまで続ける

 なんて …… !  透析で 成長ホルモンだって

 止まっちゃうんだよ …… ! (悔し涙)」

淳一 「……… (困惑)」

多佳子 「あたしの気持ちなんか 人には …… !

 あたし幾つに見える !?  これでも17よ…

 … !! (泣きだす) …… くれるって言う人が

 いるなら、 あたし何だってもらいたい ……

 … !!」

淳一 「……… (目頭が熱くなる)」

多佳子の母 「多佳子 …… ! (涙が滲む)」

美和子・ 世良 「…………」

(次の記事に続く)
 
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臓器提供 …… 「生死命(いのち)の処方箋」 (24)

2010年09月02日 20時40分35秒 | 「生死命(いのち)の処方箋」
 
(前の記事からの続き)

○東央大病院・ 外景 (夜)
 

○同・ 第二内科

  美和子と世良、 若林が電話をかけている

  のを 待っている。

若林 「(電話で) はい、 肝臓のレシピエント

 は うちの佐伯淳一。 膵臓と片方の腎臓は

 腎臓内科の 平島多佳子17才、 糖尿病性腎症。

 もう一方の腎臓は 竹林病院の高野晃46才。

 角膜は 眼科の白内障の 男性と女性ですね。

 はい、 よろしくお願いします」

  若林、 電話を切り、 美和子のほうへ向く。

若林 「それで 淳一くんは?」

美和子 「……首に縄を付けて 連れてきたんで

 すけれど ………」

世良 「いざ オペを目の前にして 不安になって

 いるのかもしれませんね」

若林 「緒方先生が オペ前のインフォームド・

 コンセント 〔*〕 を得るために 来てくださ

 ってる。 とにかく淳一くんに 説明を聞かせ

 よう」

 〔*インフォームド・コンセント …… 

   「充分な説明による同意」 と訳される。

   医師が治療について 患者に詳しく説明し、

   患者が よく理解・ 納得したうえで 自分

   の意思で 治療に同意、 選択することを

   言う。 近年、 医療全般について 求めら

   れていることである。〕
 

○同・ カンファレンスルーム

  緒方と若林が 淳一と多佳子に 移植の説明

  をしている。

  多佳子は車椅子に座り、 17才とは思えな

  いほど 小柄で華奢である。

  美和子、 世良、 多佳子の母も 聞いている。

緒方 「……… ということで ドナーの方の名前

 は お教えできませんが、 組織適合検査の

 結果が出次第、 電話で連絡します。 肝臓と

 膵臓は 脳死の状態で心臓が動いているうちに

 移植しないといけないので、 猶予はしてい

 られません。 いいですか?」

淳一 「…… 先生、 オレ、 やっぱりその気にな

 れません」

美和子 「ジュン …… ?」

(次の記事に続く)
 
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死んだ人の臓器(もの) …… 「生死命(いのち)の処方箋」 (23)

2010年09月01日 20時55分28秒 | 「生死命(いのち)の処方箋」
 
(前の記事からの続き)

○美和子の団地 (夜)

  美和子、 息せき切って 階段を駆け登る。
 

○佐伯宅・ 玄関

  喜び勇んで 玄関から家の中へ 駆け込む

  美和子。

美和子 「ジュン!!」
 

○同・ 淳一の部屋の前

  美和子、 走ってきて ドアをドンドン叩く。

美和子 「ジュン!!  あたし!  開けて!!」

淳一の声 「……何だよ、 騒々しい」

美和子 「聞いて、 いい知らせなのよ!」

淳一の声 「電気料金が 値下げにでもなった

 の?」

美和子 「移植ができるの!  ジュン、 助かる

 んだよ !!」

淳一の声 「………」

美和子 「ジュン、 聞こえた !?  脳死の人が

 肝臓提供してくれるって !」

淳一の声 「………」

美和子 「どうしたの !?  ジュン、 嬉しくない

 の !?  ドア開けて !! (戸を叩く)」

  おもむろに ドアが開く。

  強烈な光を背に 淳一。

  美和子、 思わず目を覆う。

淳一 「……… 姉キ、 おかしいよ ………」

美和子 「(目を押さえ) え …… ?」

淳一 「まるで、 その人が死んだの 喜んでる

 みたいだ ……」

美和子 「!? ……… ジ」

淳一 「オレ …… 受けないよ」

美和子 「え …… !?  何 …… !?」

淳一 「死んだ人の臓器 (もの)  もらってまで

 オレ、 生きたいとは思わない ……… (サン

 グラスをはずす)」

美和子 「(淳一の腕を掴み、 光が目に入らな

 い位置にやる) そんな …… !?  やっとの

 思いで ここまで来たっていうのに ……

 !!」

淳一 「オレは、 このままでいいよ ………」

美和子 「分かってるの!?  いつ脳障害が 起き

 るかもしれないんだよ!」

淳一 「(視線を背ける) 誰かが死んで、 オレ

 が生きるなんて ………」

美和子 「そんなこと 言ってるときじゃないで

 しょう !?」

淳一 「………」

美和子 「(淳一の肩を 大きく揺さぶる) ジュ

 ン、 受けてよ !  ねえ、 ジュンったら…

 … !!」

(次の記事に続く)
 
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