「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

殺意否認, 母胎回帰ストーリー -- 光市母子殺害事件、 最高裁判決 (11)

2012年02月29日 21時59分37秒 | 光市母子殺害事件
 
 大月被告は差し戻し審で、 それまで認めていた犯行事実を 一変して、

 殺意はなかったという 新たな供述を始めました。

 作家の佐木隆三氏は、 被告が訴えたかったことを、

 新しい弁護団が伝えられなかったのだと 批判しています。

 犯罪心理を専門とする 長谷川博一教授は、 何度も被告に面会を行ないました。

 そして、 被告が 検察や新たな弁護団に 迎合した結果、

 供述が揺れ動いたのではないか と考えました。

 彼を理解するキーワードは 迎合性の高さだと言います。

 被告が見せる 微妙な笑顔も、

 相手に嫌われたくないために、 防衛的に付いたもので、

 相手が 意図して誘導しなくても、

 期待に応えるような 応答をしてしまうのだということです。

 しかしその後、 被告への面会を 弁護団から阻まれ、

 真実を読み解くことは 叶いませんでした。

 この裁判は、 犯行の判断に必要な材料が 欠損しているのが

 大きな問題だと語っています。

 一方、 萩谷麻衣子弁護士は、 新たな供述は 被告に不利に働いてしまったが、

 本当に殺意がなかったとすれば、

 一審段階で弁護士が 早く引き出すべきだったと 主張します。

 殺意がなかったということも含めて、 精神鑑定するべきだったと。

 被告にとって 遅すぎた供述だったと言います。

 さらに ジャーナリストの門田氏は、 被告に何度も会ううち、

 この奇怪なストーリーこそが、 被告の反省が深まっている 現れだという

 推測を述べました。

 自分の罪を心底反省し、 余りにも無残な 犯行に直面すれば、

 人間の精神は 極限までいくと 耐えられずに壊れてしまう。

 防衛本能として そこへ行き着く手前で、

 自分を納得させようとするストーリーを 構築した可能性があるというのです。

 差し戻し審では 細部にわたる検証によって、

 傷害致死と母胎回帰ストーリーを 否定しています。

 (当時、 詳細な裁判記録が ネットに載っていたのですが、

 現在このページは なくなってしまいました。)

 この検証データは 僕には説得力のあるものであり、

 殺意がなかったという主張は 事実とは言い難いと思います。

 ただし、 門田氏の言う仮説は、 直ちに頷けるものではなくても、

 可能性を否定することはできません。

 もしも仮にそうだとすると、

 昨日の記事の  「部分的に冤罪だと言いたい」 というのも、 整合性が出てきます。

(次の記事に続く)

〔参考: TBSテレビ 「Nスタ」, フジテレビ 「知りたがり!」〕