(前の記事からの続き)
PEGの効用を 過信するあまり、 適応の範囲が拡大しすぎて、
必要のない人にまで PEGが適応されるケースも 出てきています。
超高齢者や末期の患者など、
人生の最期を 静かに迎えようとしている人に PEGを施すと、
体力が付いてしまって、
“いつまで生きたらいいのか” という 問題が生じるケースもあります。
“死にたいのに死ねない” というような 状況も出てきてしまうのです。
PEGの普及に努めてきた ドクター自身が、
PEGを着けて ベッドに横たわっている 患者の姿を見て、
これが本当に幸せなことなのか、 自分のしてきたことに 疑問を持ったといいます。
植物状態に近い高齢者や、 意識レベルが低下した末期患者は、
PEGの適応を 慎重に考えなければなりません。
PEGが適応されるのは、 認知症や脳血管障害, 神経筋疾患などによって、
飲み込むことが難しくなった人です。
ただし その前提は、 胃腸の機能が 正常な人です。
胃腸が働いていない人は、 血管からの点滴 (静脈栄養) をすることになります。
点滴で 栄養を補給する場合、血管に 菌が入ると危険ですが、
胃は胃酸があるので安全です。
胃の方が 高カロリーの栄養剤を与えることができますし、
小腸から吸収することで 免疫力もアップします。
胃管の適応のうち、 使用する期間が 4週間以内の場合は経鼻胃管、
それ以上では PEGが適しています。
従って 1ヶ月以内に 死が訪れるような患者は、 PEGは不適と言えます。
いずれにしても、 患者の 身体的な様々な症状や、 家族の受け入れ態勢、
その人たちの価値観なども含め、 PEGを着けるかどうか、
注意深く検討する必要があるでしょう。
(次の記事に続く)
〔参考資料 : PEGドクターズネットワーク 他〕