「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

絶体絶命 …… 「生死命の処方箋」 (64)

2010年12月29日 21時05分49秒 | 「生死命(いのち)の処方箋」
 
(前の記事からの続き)
 
○ 東央大病院・ オペ室

  消毒布を掛けられた安達。

緒方 「では、 始めさせていただきます」

  美和子、 心臓が早鐘のように高鳴る。

緒方 「まず 両岸の摘出。  その間に 皮膚を消毒

 して」

ナース「はい」

緒方 「それから腎臓、 肝臓の順でいく」

山岡「分かりました」

  美和子、 呼吸が喘ぎ、 震えはじめる。
  

○ 同・ 廊下

  走る世良。
  

○ 同・ 廊下

  走る杏子。
 

○ 同・ オペ室

  手術台の上の安達。

  震撼する美和子。

緒方 「メス !」

ナース1 「はい (メスを手渡す)」
  

○ 走る世良と杏子、 カットバックで
  

○ 同・ オペ室

  緒方のメスが 安達に加えられようとする。

美和子 「(絶叫) やめてください …… !!」

  美和子、 泣き崩れる。

犬飼 「どうした !?」

ナース1 「佐伯先生 !?」

美和子 「(震えながら) の、 脳波を …… 見た

 んです …… 安達さんの …… !!」

緒方 「何だって ?」

犬飼 「そんなバカな …… ! 錯覚じゃないの

 か ?」

美和子 「自分でも疑いました …… ! でも、 

 確かにこの目で …… !」

犬飼 「静電気か、 他の器械の 電磁波の影響

 かもしれん」

ナース1 「でももし 本当に脳波が出たんだと

 したら ?」

緒方 「いずれにしろ 問題にはならない」

美和子 「緒方先生 …… !?」

緒方 「脳幹機能が停止していれば 完全に脳死

 だ。  死後に わずかな脳波が残存していても

 無意味だ」

美和子 「でも …… !」

緒方 「オペは続行する」

美和子 「先生 …… !」

犬飼 「ここまで来てしまったんだ。  止むを得

 ないだろう。  どの道、 この人はもう助から

 ない」

ナース2 「(脳波計を見て) 先生、 来てくだ

 さい …… !!  モニターが …… !!」

犬飼 「どうしたんだ !?」

  一同、 モニターを覗き込む。

  不規則ながら 脳波が現れている。

美和子 「こんな …… !?」

犬飼 「信じられん …… !」

ナース2 「どういうことですか !?」

緒方 「ばかな …… 」

(次の日記に続く)
 
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