「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

生きたままえぐり出される …… 「生死命の処方箋」 (63)

2010年12月28日 20時54分47秒 | 「生死命(いのち)の処方箋」

(前の記事からの続き)
 
○ 東央大病院・ オペ室

  美和子、 血液製材の点滴をするために、 

  安達の血管確保 (血管に針を刺す) をし

  ているが、 手が震えて 何回も失敗してし

  まう。

緒方 「何をもたもたしてるんだ !?」

美和子 「す、 すみません …… !」

緒方 「これが生きている人だったら 大変だ

 ぞ」

美和子 「! …… (安達の顔を見る)」

 

○ 暗闇

  (声だけが聞こえる)

安達の声 『 …… ここは、 どこだ …… ?

 何だ …… ?  俺はどうしたんだ ……

 ?』

緒方の声 「メス …… 」

ナースの声 「はい」

  器具の金属音が響く。

安達の声 『誰だ …… ?  俺の体に何をしてる

  …… ?』

緒方の声 「大動脈カット …… 冷却灌流開始」

ナースの声 「心臓が停止しました」

安達の声 『心臓が止まった?  俺の?  ばか

 なことを言うな …… !!』

  フェイドイン。

 

○ オペ室

  暗闇が明るくなり、 オペ室の様子が現れ

  る。

  無影灯や 医師の顔が見える。 (安達の目

  線から)

  安達の摘出手術中である。

緒方 「右腎動脈カット (能面のような顔)」

美和子 「はい」

安達 『(体は動かず意識だけ) ちょっと待て

  …… !!  何をするんだ …… !?』

緒方 「静脈、 尿管カット」

安達 『やめろ !!  俺は生きてるぞ …… !!』

緒方 「右腎摘出」

安達 『分からないのか !?  俺は生きてるん

 だ !!  お前たちの話、 全部聞こえてるぞ …

 … !!』

美和子 「次は左腎摘出ですね」

緒方 「メス !」

安達 『やめろ !!  やめないか !!  助けてくれ

 ~~ !! …… 』

 

○ 東央大病院・ 家族室

  仮眠中の杏子、 ガバッと夢から覚める。

杏子 「(脂汗を流し) ……… あ、 あんた ……

 !?」
 
(次の記事に続く)
 
コメント
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