「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

早すぎる説得 …… 「生死命(いのち)の処方箋」 (51)

2010年12月01日 20時37分21秒 | 「生死命(いのち)の処方箋」
 
(前の記事からの続き)

○ 東央大病院・ 外景(朝)
 

○ 同・ ICU前の廊下

  ナースが女性 (安達杏子・ 41才) を

  導いてくる。

  川添が ICUから出てくる。

ナース「(川添に) 安達さんの奥さんです

 !」

杏子 「うちの人は …… !?  うちの人はどこ …

 … !?」

川添 「こちらです。 どうぞ ! (杏子を案内す

 る)」
 

○ 同・ ICU

  杏子が入ってきて、 ベッドの安達にすが

  りつく。

杏子 「あんた …… !?  どうしたの、 あんた、

 しっかりして …… !!」

  世良が驚いて見ている。

  泣きわめく杏子。

川添 「奥さん、 あまり動かさないでくださ

 い」

杏子 「先生、 この人、 どうなるの !? …… 

 助けてよ …… !!  助かるよね …… !」

川添 「落ち着いてください、 奥さん」

美和子 「 ……… (痛ましい)」

世良 「 ……… 」

 
○ 同・ 緒方の研究室

  緒方、 美和子、 世良。

世良 「緒方先生、 まだ早すぎます。 あの奥さ

 んに 臓器提供の説得なんて」

緒方 「平島多佳子さんのオペでは、 提供の承

 諾を 得るのが遅れたために、 ドナーが心停

 止まで いってしまった。 今度は脳死になっ

 たらすぐ 摘出できるようにしておかなけれ

 ば」

世良 「でも 奥さんはまだ 事態を受け入れられ

 ていません」

緒方 「あなたの仕事は 取材ですか?  お説教

 ですか?  私は取材許可を 取り消すことも

 できるんですよ」

世良 「! …… (むっとする)」

美和子 「 ……… 」

(次の記事に続く)