(前の記事からの続き)
○ 街路 (夜)
世良の車が走る。
○ 世良の車の中
美和子 「世良さん、 ジュンに 余計なこと
吹き込むのはやめて」
世良 「余計なことだって? 事実を隠してば
かりいて、 自分の良心に 恥ずかしくないの
か ?」
美和子 「あたしは …… 自分の良心なんかより
ジュンの命のほうが 大事よ …… !」
世良 「だったら 自分の体を犠牲にしてでも、
淳一くんを 助けるべきじゃないのか?」
美和子 「どういうこと ?」
世良 「(失言を悔やみ) …… 生体肝移植だよ
……。 どうしてそれには 一言も触れないん
だ ?」
美和子 「(当惑) …… 生体肝移植は、 技術的
にも、 倫理的にも、 まだ問題があるし …
…」
世良 「それは 脳死からの移植だって 同じだろ
う !?」
美和子 「 ……… (言葉が出ない)」
世良 「自分の体を 切るのは嫌で、 人のものなら
騙してでも 巻き上げようっていうのか
?」
美和子 「 ……… (うつむいてしまう)」
世良 「 ……… 美和子が、 信じられなくなった
よ …… 」
気まずい沈黙。
美和子 「 …… 世良さんには、 言いたくなかっ
た …… 」
世良 「何を ?」
美和子 「 …… あたし、 ジュンとは 組織が不適
合なの …… 」
世良 「え ?」
美和子 「ジュンに肝臓を あげることができな
いのよ …… (涙がにじむ)」
世良、 驚いて 車を道路脇に止める。
世良 「本当か …… ?」
小さく頷く美和子。
世良 「そんな …… 」
美和子 「 …… あたしが駄目なら …… 次の身内
は …… 」
世良 「 ……… 」
美和子 「世良さんに そんなこと頼めないじゃ
ない …… !! (顔を伏せる)」
世良 「 …… 美和 …… 」
涙を拭う美和子。
美和子 「 ……… 言ったら ……、 くれた ……
?」
世良 「 ……… (沈黙)」
美和子 「 …… 答えられないのね …… (涙)」
(続く)