「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

仮釈放 「償いの形」 自問 -- 更生への道 (1)

2010年06月28日 21時18分26秒 | 罪,裁き,償い
 
 読売新聞の 「罪と罰」 の シリーズ第3部。

 服役して 社会へ戻った人の、 更生への行方を 追っています。
 

 40年前、 盗み目的で住宅に入り、

 女子高生を包丁で刺殺してしまった 無期懲役囚は、

 毎朝 位牌に手を合わせ、 罪を自問し、 被害者の残像に 胸をかきむしられます。

 刑務所では模範的で、 刑務所長による 3度目の仮釈放申請がされました。

 更生保護委員会の委員長は、

 受刑者の 「悔恨の情」 「更生の意欲」 は認めました。

 しかし、 遺族の感情は峻烈で、 仮釈放者の再犯も絶えず、 判断に悩みます。

 2000年当時、 無期囚約千人のうち、 仮釈放を認められたのは 7人だけです。

 けれども委員長は、

 「仮釈放は、 生活に困らない 環境の有無で 判断すべきだ」 と考え、

 委員3人の合議で 仮釈放を許可しました。

 仮釈放された受刑者は、 遺族に謝罪しようと 故郷の事件現場を目指します。

 ところが 街並みは全く変わってしまい、 遺族も転居していました。

 保護観察所に出向き、 遺族の意向を聞いてほしいと 依頼しましたが、

 「相手の感情を 害するかもしれない」 と断られます。

 「確かに、 自分が被害者の立場なら、 何の慰めにもならないだろう。

 謝罪は 自分が楽になりたいためではないのか?……」

 遺族の男性は こう語っています。

 「加害者には関わりたくない。

 謝罪も金もいらない。

 謝る気があるのなら、 私たちに分からないところで、

 社会に役に立つことを しているほうがいい。

 それで 許せるわけではないが……」

 更生保護委員長は、 受刑者に伝えたいと思います。

 「償いの形は ひとつではない。

 その気持ちさえ忘れずに 更生に励めば、 いつか必要なことが 見えるはずだ」

〔 読売新聞 「罪と罰 -- 更生への道」 より 〕