「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「死刑裁判の現場」 (6)

2010年06月22日 21時24分31秒 | 死刑制度と癒し
 
(前の記事からの続き)

 死刑執行現場に立ち会った 土本氏は、

 生きている人を 数分後には強制的に 死に追いやるという、 凄まじさを感じました。

 それまで 検事の職務として 死刑を求刑するのは、

 恥じることでも躊躇することでもないと 思っていましたが、

 どんなに勉強しても足りない 命の問題に遭遇し、

 それは観念論に過ぎないと 思うに至ったのです。
 

 昨年の内閣府の調査で、 死刑は止むを得ないと答えた人は 85.6%。

 昭和31年に 統計を取りはじめて以来、 最も多い数字です。

 土本氏は、 そういう国, 時代で、

 死刑を廃止するのは 現実として無理だと言います。

 そして、こう語ります。

 「死刑制度は 理想としては、 できればないほうがいい。

 皆が知っている死刑は、 しょせん抽象的なもの。

 せいぜい、 人を殺したら 自分の命で償わなければならないという、

 一般的な死刑存置論の根拠。

 それは多くの人の 賛同が得られる。

 しかし、 具体的な事件について、 極刑を言い渡すのであるなら、

 もう一歩、 深く重いところで、 人の命を考えた上での、

 言い渡しであるべきである。」
 

 裁判員制度が始まり、 我々が死刑裁判に 加わるようになりました。

 けれども 死刑について 考えるための情報は、 極めて限られています。

 より多くの情報の下に、 議論を深める時が 来ています。

〔 NHK・ ETV特集より 〕