(前の記事からの続き)
土本氏は 被告の恩赦を 申し出ようとします。
けれども 上司から、
求刑した検事が 執行を止めるのは 筋が通らないと言われ、 諦めてしまいました。
その体験を氏は、
鬼になりきれなかった 非常に情けない 検事の話だったと 自嘲します。
しかし 土本氏は改めて考えるに、 死刑制度が存在していて、
死刑判決が確定した以上、 執行されるのが当然であって、
法制度全体としては、 執行されてよかったと思う、 とカメラの前で語ります。
法的な特段の事情もないのに 執行をやめるのは、
法治国家としては 自らを破壊することになると。
ここで、 番組のインタビュアー (プロデューサー?) が、
「本当に そう思ってらっしゃるんですか?」 と 問いかけました。
土本氏は すぐに答えられず、 約10秒の沈黙が続きます。
そして、 慎重に口を開きました。
「当時の法律家としては、 そう思っていたと 言う他ありません。
ただ、 一個人としての、 彼と心を分かち合った 一人間としては、
別の答が 出てくるだろうと思う」
そして、 被告の死刑は執行されます。
犯した罪は 消すことはできない、 しかし人間は 変わる可能性を持っている。
死刑とは、 一体何なのか?
〔 NHK・ ETV特集より 〕
(次の記事に続く)