「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

光市母子殺害事件・最高裁上告審判決(1)

2006年06月20日 17時08分46秒 | 光市母子殺害事件
 
 本日午後3時、最高裁は 広島高裁の無期判決を破棄し、差し戻しを命じました。

 事前から その可能性が一番高いのではないか、とは言われていました。

 差し戻し審では、無期懲役が見直されて 死刑判決が出る公算が強くなります。

 高裁は、前と同じ理由で無期懲役を言い渡すことは できなくなったわけです。

 安田弁護士が提出していた 傷害致死・有期刑の主張は、

 上告審では取り上げられなかったようです。
 

 ただし、高裁で審理を初めからやり直すわけで、また時間がかかってしまいます。

 それを考えると、最高裁は差し戻しではなく、自ら死刑判決を下すという

 「自判」をするべきではないか、という声もありました。

 裁判員制度を控えて、審理の迅速化が求められており、

 最高裁は自判で 自ら模範を示したほうがいい、という意見です。

 被害者遺族の本村さんも、それを望んでいました。
 

 日本では、未成年が4人を銃殺した あの「永山事件」の裁判で、

 死刑判決の要件が 厳しく定められました。

 その「永山判決」以来、死刑の求刑・判決が 抑制されてきました。

 そういう流れのなかで起きたのが、この光市母子殺害事件でした。

 本村洋さんは、7年間に渡って 死刑判決を訴え続けてきました。

 本村さんの 長く苦しい闘いの成果が、少しずつ実を結んできたと言えるでしょう。

 犯罪被害者支援の運動が高まり、犯罪被害者基本法も成立しました。

 検察庁も死刑の求刑が増え、本件の上告も 普通なら諦められていたそうです。

 本村さんが 自らのプライバシーを犠牲にして、マスコミやシンポジウムなどで

 発言し続けてきた影響は、とても大きいものがあったと言えると 僕は思います。

 本村さんが表に出なければ、この事件は一審の無期懲役で終わっていたと、

 本村さん自身が言っています。

 今回の判決は、永山裁判以来 日本の死刑判決を拘束してきた基準を、

 20年ぶりに見直すものになると言われます。
 

 テレビのワイドショーなどでは どの番組でも、本村さんの訴えに賛同し、

 死刑を求める論調でした。

 裁判所の判決の根底にあるものは、国民世論や市民感情であるといいます。

 本村さんは、被害者遺族が 裁判で意見を述べることができず、第三者による裁判で

 当事者が置き去りにされていることにも、異議を唱えてきました。

 その結果、遺族が法廷に遺影を持ち込むことや、被害者側の意見陳述も

 認められるようになりました。

 それによって 世論も動かされ、近年の体感治安の悪化と相まって、

 裁判所の判断にも 反映されるようになりました。
 

 僕自身、元々死刑制度反対の立場でしたが、

 本村さんに感化されたものはあると思います。

 ただ、被害者遺族も人それぞれで、事件のことは忘れたい、

 触れたくないという人たちもいることを、忘れてはいけないと思います。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/36574143.html