「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

秋田豪憲君殺害事件--鈴香容疑者は反社会性人格障害? 

2006年06月15日 14時49分38秒 | 凶悪犯罪と心の問題
 
 連日マスコミをにぎわせている、豪憲君殺害事件。

 その容疑者である 畠山鈴香が、反社会性人格障害だとか

 そこかしこで言われています。

 そういう傾向があるかもしれないとしても、

 診察や鑑定もしていない人間が、軽々にそんなことを言っていいのか と思います。

 何よりも僕は、「人格障害」に対する誤解が 広まってしまうことを恐れています。
 

 10種類ある人格障害のうち、反社会性人格障害はちょっと特別なものです。

 他の人格障害が、心理学的な基準で診断されるのに対し、

 反社会性人格障害は その診断基準が、社会的な行為に基づいています。

 つまり、反社会的・犯罪的な行為を繰り返す(そして良心の呵責を感じない)者を、

 「反社会性人格障害」とするという、トートロジー(同語反復)的なものです。

 例えば、心子のような境界性人格障害の人が、際限のない愛情を求めるあまり、

 結果的に相手を巻き込んでしまう というのとは、因果関係も異なります。

 反社会性人格障害は 精神医学的な基準というより、

 社会的な価値基準による診断だと、批判や議論を招いているところです。
 

(ちなみに、反社会性人格障害の原因は 生育歴によるものか、

 生物学的な要因によるものか、分かっていないようです。

 また、治療は極めて困難とされています。)
 

 凶悪で特異な事件が起こるたびに、犯人は人格障害と マスコミで喧伝され、

 人格障害 = 犯罪者 などと誤解されるのは、非常に遺憾なことです。

 心子が犯罪と全く無縁だったように、大部分の人格障害の人は 純粋すぎるために、

 誰よりも自分自身が 言い知れぬ生き辛さに苦しんでいます。

 人格障害の人は、自分自身を傷つけることはあっても、

 他人に危害を加えることは 多くありません。

 一番苦しんでいるのは、本人自身なのです。

 「人格障害」という言葉が 人々に知られないだけなら まだしも、

 誤解をされるというのは いたたまれないことです。

 人格障害が、多くの人たちに 正しく理解されることを、願ってやみません。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/51046836.html
 

[境界性人格障害のノンフィクション「境界に生きた心子」(新風舎)紹介のページ]
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/16276477.html