蛾遊庵徒然草

おこがましくもかの兼好法師にならい、暇にまかせて日頃感じたよしなし事を何方様かのお目に止まればと書きしるしました。

今、非正規雇用増大の意味するもの。その解決策は、国民全体で負うしかないのでは?

2006-12-05 02:03:08 | 時事所感
12月4日(月)晴。-1度~8度、寒い一日。

 今、政府は非正規雇用契約等労働法制の見直しを進めようとしている。
だが、経営者側はこれに真っ向反対との意向が報じられている。

その際たるものは、経団連会長にしてキャノン会長の御手洗氏の主張である。
氏によれば、現在3年の有期雇用制度も撤廃せよ。期限を外せとせまっている。
 今のような雇用に自由度がなければ、とても中国などの安い労働コストと太刀打ちできない。生産現場を労働コストの安い海外へシフトしていかざるを得ないと。

 現在でも非正規雇用が全労働者の三分の一を占めているという。このままでは、若い人たちは将来設計が立たず、結婚はおろか少子化が益々進み、社会福祉、年金制度等様々な社会基盤制度が危うくなるという。
 大変な危機的状況になりつつあるというのに、政府、国会の取り組みには、それほどの緊迫感は感じられない。

 確かに、現在の各種生活資材、商品、サービスの需要の変動、消費者の好みの変動の激しさは、供給側の企業経営者にとっては、日々が薄氷に載って漂っている感じだろう。
 そうした中で、一度採用したら、終身面倒をみろというのは、不可能に違いない。雇用のる流動性の自由は、現在のグローバル経済社会の仕組みにおいて、必然なのかもしれない。

 中国、インド、アフリカ等、軽易・単純労働の担い手は、いくらでもいるのである。これらの国々との間に、一昔、二昔前のように厳しい関税障壁を築き、安い海外生産品の輸入をシャッターアウトできるのなら良いが、自由貿易が原則の現在、そんなことは不可能に等しくなっている。

 しかし、だからといって、需要動向に即応した生産体制が可能とするため、御手洗経団連会長様のおっしゃるように、雇用契約期間を全くの自由としたならば、この日本社会の崩壊を座して待つようなものではなかろうか。

 こうした厳然冷酷な、世界的な労働市場の現実を前に、企業、雇用者に向かって、一度雇った人間は最後まで面倒みろ、仕事がないからといって解雇はまかりならないと精神論を説いてせまっても何の力も持ち得ないと思う。それは低きに流れようとする水勢を人為で堰きとめようとする虚しいことに思える。

 では、どうすべきだろうか。

 私は、今のこの事態をなんとかしようというのであれば、それは日本国民全体でそのリスクを負う仕組み作りが、今こそ必要となっているのではないかと考える。

 第一には、1時間あたりの最低賃金水準を、夫婦子供二、三人が、憲法が謳う健康で文化的な生活を営むに足るもを基準に算出して決めるべきである。

 第二には、失業保険制度を手厚くし、次の仕事に就けるまでは、この間の平均的な生活ができるよう保障すべきである。

 その財源を捻出するためには、さし当たって公務員の賃金を大幅に見直すこと。勤労者の所得税率を大幅にアップすること。高額所得者の累進税率を高くすることなどである。
 そして、つらいが、今戴いている唯一の糊口の元たる我が年金のある程度の減額も甘受せねばなるまい。

 今、先進国は、共通の課題として、中・後進国の過大な低賃金労働圧力があり、これがために、絶対にこれまでのような生活水準を維持できないのではないか。先進各国は、このような世界的な労働市場の構造を直視し、それに応じた方策を模索すべきではないか。

 ゆえに、わが国においても、国民がお互いに平和的に暮らしていくためには、日本国民全体が、ある程度の生活水準の低下を甘受する覚悟をもつほか無いのではなかろうか。

 能力のある者、運の良い者だけが、これみよがしに所得を誇る時代を終焉させなければ、この日本はみすぼらしく惨めな国になってしまうのではなかろうか。

 能力や運は、努力の賜物と人は言う。だが所詮煎じ詰めれば、個々人の努力のいかんでどれだけの違いがでるというのであろうか。それは、たまたまある個人に神が与えたものではないのか。

 であるならば、その能力、運を自己だけの独り占めにせず、同じ血を受けた日本人同士のために、そのいくぶんかを提供・共有するとしたほうが、どれだけその個人自身の心を気高く安らかにすることだろうか。

 要は、今後の日本は、個々の能力に応じて誠実に働ける時は働き、必要に応じて浪費を抑制して消費する仕組みの社会にしていく以外、最良・最適の方策はないのではなかろうか。

 そして、人間として生きていて良かったと思える暮らしを、世界中の皆が享受できるようにするためには、一日も早く、世界連邦国家制度を確立することではないだろうか。

 戦争をなくし、各国がお互いの疑心暗鬼から軍備につぎ込んできた膨大な財政を、産児制限や教育の普及向上に使い、世界的な最低賃金制度ができたとき、そこを起点に初めて、人類共通の生活水準の向上や文化の躍進が期待できるのではなかろうか。

 危機的な様相を深めつつある地球環境問題。資源エネルギー問題。食糧危機問題。今やどれ一つとして、世界連邦政府の仕組みなくして解決できる問題はないのではなかろうか。

 こんなことを書けば、どこの馬鹿隠居が、誇大妄想、見当違いを恥じも外聞もなく披瀝したもんだとご憐笑くださるのも結構毛だらけ猫灰だらけである。

 とにもかくにも、何だか先日の、御手洗経団連大会長閣下の、手前勝手な目先だけの、将来展望の全く窺えない発言を新聞で読んだら、山家の隠居の愚考妄想は、際限もなく拡散浮遊を止めないのである。

 世に経済、財政、労働問題等々の各分野で名だたる専門家は、星の数ほど、いらしゃるだろうに、こうした大きな問題に山家の隠居の納得がいくような、ご高説がとんと伺えないような気がするのは、山家の隠居の不勉強、無知蒙昧のせいだろうか。

 どなた様か、「ああ、お前さんが心配しなくったって、とっくにこんな処方箋があるのだよ」ということであれば、ご教示願いたいものである。

 さすれば、冥土の土産に一読させていただき、可愛い子や孫の行く末、按ずることなく安らかに昇天できるにちがいない。

と、思うこの頃、さて皆様はいかがお思いでしょうか。

 


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7 コメント

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興味深く拝読しました。 (さくら)
2006-12-05 22:12:45
子ども2人大学生ですが、就職は以前に比べ格段に良くなったと聞いても、不安です。
正直な話「ちゃんと正社員になれるかな~」と思います。

ある程度の貧富の差は努力した人、努力しなかった人で差があるのは当たり前だと思いますが、今のように格差が広がってしまうと、若い人達は未来に夢を持ちにくいですね。

最近思うのは『人並みでいい』の人並みレベルになる事すら難しい気がします。

低い時給で働くたくさんの人達の汗で、どうにかこうにかこの国は先進国の位置にいられると思うのです。

蛾遊庵様のおっしゃる人類共通の生活水準の向上や文化の躍進・・そういう大きな視点で政治家が知恵を出し合って欲しいものですね。





自分の子供さえ良ければ…。 (蛾遊庵徒然草)
2006-12-06 00:05:45
 早速にコメントありがとうございました。
 ご子息の就職、決まるまではご心配のことでしょう。私も13年前、息子の就職が決まるまでは、自分のこと以上に落ち着きませんでした。
 面接に行くたびに結果を聞くのがためらわれたものでした。
 それが今のような非正規雇用が大手を振ってまかり通っているとあっては、いかばかりかと思います。

 先日、遊びに来た友人が、長女の正社員としての就職が決まってほっとしたと言ってました。
 しかし、入社した会社の中では、様々の雇用形態の人がいて、社内の人間関係は索漠としてギスギスしてそのストレスがたまらないと毎日、夜遅く帰宅してはこぼすそうです。

 非正規雇用の問題、自分の子供は何とか正社員になるだろうということで、見過ごすのではなく、社会全体に関わる歪んだ制度として、皆で政府や経団連を糾弾していく以外にないのではないであようか。

 経団連のお偉方のお孫さんたちだって、いつ非正規雇用者の悲哀を味わなくてすむという保証はないことにおもいいたらないのでしょうか?

 人間を、ベルトコンベアーの付属品のように考えて自社の利益だけを計ろうとしている輩は、社会の敵ではないでしょうか。

 戦後の高度経済成長の恩恵の中で生きてきた身には、こんなにも世の社会・経済システムが脆弱なものだったとは思いも及びませんでした。

 何とか皆で知恵を出し合い声を上げて是正していきたいものだと思います。
卓見です (浜の偏屈爺)
2006-12-06 10:31:03
庵主様 お早う御座います この記事には納得が行きました
国全体が冗費を節約して健全な姿に戻る手法と庵主様の提言される家族を単位として健康的で文化的な生活の最低基準を基に最低賃金を決める手法は興味あります 気をつけないと共産主義のノルマの元ともなりますから でも労働者の裁定取り分が決まれば企業の利益とりすぎや国の企業に対する税の優遇などが明らかになりそこが「聖域無き改革をなすべき所」でしょう
貿易黒字10兆円/年間を買い上げドルにして米国債を買わなければその分内需で潤います 
ご指摘のようにみんなが特に孫の世代が良くなるなら年金の減額も我慢しようと言うものです
ところで表題の11月は12月の書き間違えでは?
それでは又
ご同意ありがとうございましす。 (蛾遊庵徒然草)
2006-12-06 11:46:50
 コメントありがとうございました。このようなコメントいただくと、シコシコ書いてみる元気がまた湧いてまいります。
 私の主張、まかりまちがうと共産主義を主唱するかにとたられるかとも思いますが、そんなつもりはありません。
 共産主義は理想論ではあっても、全人類が一挙に神様にでも生まれかわらない限り不可能であると確信しております。
 まっさらで生まれてくる人間が、そう簡単に利他主義の仏様にはなれないと思うからです。
 しかし、お互いがこの地球上に共生していくための最低限の知恵として、ルールとして、上記に提唱してみたこの位のことは、必要であり、なんとかその気になれば実現可能な方策ではないかと愚考した次第です。
 今朝の時事通信の記事によれば、日本は世界一の資産家だとか。そんな実感は、私自身にはあまりないのですが、しかるべき所でとられたデータのようですので、それなりの根拠があるのでしょう。
 であるならば、余計に皆で知恵を出し合って、若い人が安心して結婚し楽しい家庭を持つことが夢見ることのできる社会にしていきたいものだと願う次第です。
 なお、ご指摘の11月は12月の間違いでした。ありがとうございました。あまりにも月日のたつのが早くてつい錯覚してしまったようです。(笑)
お久しぶりです! (ぱんちょ)
2006-12-06 18:45:57
今の日本は本当にどこか病んでいるような気がします。高所得者と低所得者の格差が広がり、人々の心が荒んでいっているような気がしてなりません。この心の荒みが子供にも伝播しているような気もします。

以前ニュースで夕張市の財政破綻による市民の生活苦がクローズアップされていました。そこでは戦後の日本を支えてくれた高齢者の人たちが苦しんでいました。「どうやって生活していけばいいのだろう・・・」こう涙ながらに語るご老人の姿を見て自分の無力さに嫌気が差しました。

その一方で、お金を紙切れのように扱う人たちがいる今の現状・・・
今までの日本人の人たちが汗水流して積み上げてきたものが音を立てて崩れていっているような気がしてなりません。

自分の私利私欲を満たす人々が政治にかかわっている現状・・・
これからどうなっていくのでしょうか?
私には光が見えてきません・・・
ぱんちょ様お久さしぶりです。 (蛾遊庵徒然草)
2006-12-06 20:07:57
 このところコメントが無いのでどうされてかとたまにそちらを訪ねて見たのですが、更新が無く、これは大学の方がいろいろとお忙しいのだろうと、拝察していました。
 お久しぶりにコメント頂き嬉しいです。

 ところで、最近の風潮を随分と悲観的にお嘆きのようですが、少し長い目で見れば、結構、この日本、復元力をもっていると思いますよ。

 それが何よりの証拠は、こうして山家の隠居とお若い大学生のぱんちょ様とが、いろいろの問題をお話できることです。

 問題に気づき憂える気力がある人々が存在するということは、その社会にまだまだ力強い復元力のある何よりの証だと私は考えます。

 <自分の私利私欲を満たす人々が政治にかかわっている現状・・・
これからどうなっていくのでしょうか?
私には光が見えてきません・・・>とのことですが、そもそも政治とは、聖人君子が、か弱い民を憐れんで仲良く餌を分配してくれることでは、残念ながら現実には無いのではないでしょうか。

 所詮、政治とは餌の取り合い、分配のことだと思います。そんな場であれば、人一倍欲張りでズルイのがのさばるのは当然のことだと思います。

 ここは、そうと割り切って見たら、そんな輩の勝手にさせないよう、皆で見張り厳しく選挙で選別していくしかないと思います。

 今までは、こうしたことを見ず知らずの間で真剣に意見交換する場がありませんでえしたが、このブログなる仕組みができて、大いに様相は変わってくるのではないかと、私は希望をもっています。

 今にお互いに英語でブログをやれるようになれば、世界の平和の問題も同様に、解決のための大きな力となると思います。

 社会、世界を変えていく力はお互いの良質なコミュニュケーションの如何にあると私は考えます。

 どうか、悲観的にならず希望をもってどんどん、若いぱんちょ様のお考えを発信してください。

 誠実な呼びかけは、必ずや木霊となって返ってくると思います。

 その木霊が少しずつ世の中を変えていけるのではないでしょうか。
前向きのちから・・・ (ぱんちょ)
2006-12-07 12:39:55
徒然草さんコメントを見て、今の私は少し悲観的になりすぎているなと反省しています。

徒然草さんがおっしゃるように少し前向きの視線で物事を捉えてみることが必要なのかもしれません。
マイナスからプラスへの転換。ここに大きなヒントが隠されているのかもしれません。

最近の色々な問題について正と負の両面からの視線で見つめる客観性を学んだ気がします。
ありがとうございます!

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