なにかと落ち着かない昨今ですが、合気会においては今月28に全日本演武大会、7月17日には少年少女錬成大会が予定されています。参加される皆様には是非日頃の研鑽の成果を発揮していただきたいと願っております。
かく言うわたしどもの会ではまだ参加実績がなく、今回もその予定はありませんが、そのようなところにも合気会からはそのつど案内と資料が送られてまいります。ありがたいことです。そのなかで、少年少女錬成大会での稽古課題に関する資料にちょっと気になるといいますか興味をひかれる箇所がありました。
年少(小学校1年生~3年生)、年中(同4~5)、年長(小6~中3)という区分になっているようですが、年中の課題のなかに≪片手取りからの天地投げ≫というのがあります。天地投げといえば両手取りを代表する技なのに、です。写真が付いていて、簡単に言えば、取りは天地の地だけを掴ませ、天の手は取らせず入身投げのように受けの首筋に掛けて投げ倒す動きのようです。これを見てはじめわたしは、本部も結構冒険をするもんだなと思いました(どうもそれは的外れであるようですが)。
実は、わたしのところでも天地投げを、天の手と地の手に分けてそれぞれの働きを確認する稽古をします。天地投げは基本技に準ずる技であるといいながら、実際は最も難しい部類の技です(基本が最も難しいということであればその通りなのですが)。それで、わたしのところでは手足胴それぞれの動きに注意をはらうことを求めていますが、とりわけ手の遣い方は相当細かく指示します。そのため天地を分けて稽古するのですが、地の手は普通の逆半身での遣い方なのでまだしも、天の手は逆半身で遠いほうの手を取るという、片手取りとしては普通はあまり出てこない腕遣いで、最初はほとんどの人がとまどいます。
そのようなイレギュラーな稽古法なので一般的ではないでしょうし、当会でもあくまでも細かな部分の確認のための方法として採用しているだけで、それ自体に大きな意味があるものとは考えていません。ところが、それと似た方法を本部が指示しているというのですから、これは少々驚いたのです。
もっとも、よく説明書きを読むと、これは片手取り隅落としなどといっしょに稽古することになっていて、その近似性は理解できます。また、この稽古のねらいとして、取りの技よりは受身法が重視されていて、便宜的に天地投げが採用されたことがわかります。そうすることによって、こどもたちの興味をかきたてながら、なおかつ安全に合気道に親しませようという思いは伝わります。
それでも、あえてここで本来的な手遣いを離れてまで天地投げをしなくてもよいのではないか、とヘソマガリのわたしは思うわけです。天地投げも含めて両手取りでは手による当身ができませんから、それに代わってしっかりした崩しが必要で、それも含めての両手取りの稽古であると思うからです。まあ、だれが何をやってもいいではないかとも思うのですが、天地投げの難しさとこの技に求められる理想的な体遣いに個人的な思い入れのある者としては少々複雑な気持ちです。
とはいえ、この技の提案者はなんらかの思いがあってそのように工夫されたのでしょうし、《片手取り天地投げ》ではなく、片手取り【からの】というあたりで、その苦労がしのばれます。【からの】という助詞を付加することで、これが正規技法ではないということを表しているのでしょう。
ところで、今回これを書くにあたって、以前に天地投げについて述べた文章を読み返してみました。(参照 90≫天地投げ http://blog.goo.ne.jp/gasyojuku/d/20090121) そうしましたところ、なんとまあ読みにくいこと。『手刀を立てて縦回転させ』という表現ではたして意味が伝わるのかどうか、これでは、詳しく書けば書くほどかえって真意が伝わらないだろうと、はなはだ心もとなく感じました。やはり百聞は一見にしかずということなのでしょうか。そういえば、ここ以外のほとんどのブログでは写真や動画をふんだんに、かつ上手に使っていますね。わたしももう少し工夫しなければいけないようです。
ということは、必ずしも誤用だというわけでもないということなのでしょう。
今回は天地投げなのに片手で取ることに興味と考察の中心を置いたので、用語については深くは触れませんでしたが、本当はとても重要なことだと思います。
手許資料には他に、≪両手取り天地投げ≫と≪両手取りからの天地投げ≫の両方が記されており、用語の不統一・混乱があるようです。
そんなことどっちでもよいではないかという意見もあるかもしれませんが、実は本質的な違いがあります。両手取り天地投げの場合、普通は両手を取るのは受けで、天地投げをするのは取りであるという共通理解があります。しかし、両手取りからの天地投げと言ったら、日本語としては、両手を取るのも天地投げをするのも取りであると理解するのが一般的ではないでしょうか。その辺、気になっております。
本文にも記したとおり、言葉で技法を表すのはとても難しいことですが、だからこそ正確な言葉遣いを心がけたいものです。
合気会色の薄い道場では片手取り天地投げを稽古します。?となっていたのですか、今日、ティシエ先生の本のベトナム語訳を読んでいたら、片手取り天地投げが写真突きで載っています(5級審査技だそうです)。
なんかいろいろ違いがあり面白いですね。
頂戴したコメントにひかれ、本ではなく動画を観てみました。概ね本文で述べたような動きのようですが、さすがに山口清吾先生の教えを受けた滑らかな動きだと思いました。
とにかく合気道は人によって理合いも技法も様々です。どれが正しくどれが間違いということはありませんので、自分に最適と思われるものを選択するすることが肝心でしょう。
もっとも、大概の指導者は自分のやっていることが最高だと考えていますから、比較選択は許さないかもしれませんがね。