合気道ひとりごと

合気道に関するあれこれを勝手に書き連ねています。
ご覧になってのご意見をお待ちしています。

332≫ シリーズ 黒岩合気道 ⑤

2018-01-24 16:38:34 | 日記
 正月気分が抜けたところで、本筋に戻って、今回のキーワードは『隙間を埋める』です。

 ここで言う『隙間』とは、合気道の動きの中で自分と相手との間に生ずる空間のことです。それを埋めるのですが、何で埋めるかというと自分の体で埋めるのです。

 具体的に考えてみましょう。たとえば正面打ち一教において、上段で自分の腕と相手の腕が接している場合、両者の腕と体と床による空間ができます。四方投げなどにおいても同様の空間ができます。相手を投げたり押さえたりするにはその空間に自分の体をもっていくことが必要だと言っているわけです。

 したがって、一教というのはただ相手の腕をねじ伏せようとするのではなく、まずは腕の下の空間に入っていって間を詰めることが重要だということです。そのことによって相手を上に浮かすのです。そこから一気に切り下げるのが一教です。一教は相手の腕を必要以上に前方に押し込んではいけないことがわかります。

 四方投げも腰投げも相手との隙間をなくすことで上手くいきます。要するにこれは間合いを詰めるということです。でも、ただ間合いを詰めるのではなく、自分の体を空間に埋め込むという意識をもつことによって相手を崩したり浮かしたりすることが楽にできます。

 さらにこれは、黒岩先生おっしゃるところの『相手に殴られるくらいのところまで入っていかないと自分も相手を殴れませんよ』という黒岩合気道の真骨頂に通ずるのです。つまりここでは、投げる、押さえる、打つなどの格闘術の全てが隙間を埋めるという一点において共通の理合いをもつのです。こんな簡単に武術の神髄を言い表した人がいたでしょうか。

 本シリーズ①からここまでで黒岩合気道の概略がおわかりいただけたと思います。それは徹頭徹尾『使いものになる合気道』を支える理論と技法です。気取った言い方をすれば科学合理性に裏付けされた理合です。

 それと対極にあるのが『気』を重視した合気道です。藤平光一先生や西野晧三先生などが有名で、ほかにも何人もいらっしゃるようですが、黒岩先生はそのようなものはお好きではありませんでした。西野先生が気で人を飛ばすと聞いてその練習場に行き、帰り際に『あまり変なことはしないほうがいいですよ』と言ったんです、とおっしゃってました。

 つい先日も、テレビのバラエティー番組で同じようなことをする気功師を取り上げていましたが、飛ばされる実験台になったお笑いタレントが全然反応しないので、気功師はわけのわからない言い訳をして終了とあいなりました。もし、そういうことが実際に起これば、人といっしょに科学合理性なんて言葉も木っ端微塵に吹き飛んでしまいます。

 以上、黒岩合気道は努力をすれば誰でもできるメソッドであるということを確認して本シリーズの結論とします。

331≫ シリーズ 黒岩合気道 ④

2018-01-06 17:00:02 | 日記


あけましておめでとうございます。

 さて、今年最初の項でタイトルは黒岩合気道④としておりますが、厳密には本シリーズからちょっとはなれて、新春らしく松竹梅の剣をふたたび取り上げたいと思います。

 以前に申しております通り、これは大先生が最後に残された剣の操法です。
 松は、相手が上段に振りかぶったところに突きをいれます。たったそれだけです。
 竹は、相手が振りかぶったのに合わせて自分は右に体をかわしつつ振りかぶり、相手が斬り下げたところを同時に斬る動作です。
 梅は、相手の突くところを自分はやや左に体をかわしつつ、相手の喉もとを下からすくうように斬り上げ、さらに相手の脇を進んで正眼の構えに戻る動作です。
 下記の黒岩先生のペルーでの講習会の動画で、8分20秒くらいから竹と梅を指導しておられますので参考になさってください。=講習会動画

 ちなみに、これを体術に応用する場合のわたしの理解は、松は横面打ちの四方投げ(間を広げずに相手の懐に入る体捌き)、竹は正面打ちの一教(相手の打ち込みを一旦かわしてその後腕を突き上げる捌き)、梅は突きまたは正面打ちの入り身投げにそれぞれ該当すると考えています。ちなみに、これらの技法は西尾昭二先生の動きに近いものがあります。見た感じのだいぶ異なるお二人の合気道が、共通の土台にあることを示す技法だと思います。

 大先生は松竹梅の剣で何を語ろうとされたのか、また黒岩、西尾両先生はそれをどのように理解しておられたのか、新年から興味は尽きません。

 本年もどうぞよろしくお願いいたします。