合気道ひとりごと

合気道に関するあれこれを勝手に書き連ねています。
ご覧になってのご意見をお待ちしています。

303≫ 使い物になるか

2016-08-18 16:02:31 | 日記
 普段の稽古に武術的要素を意識したものが含まれているか、最初それが今回のテーマだったのです。そしてその重要性について今回も長々と書き連ねてきたのですけれど、一歩引いて考えてみたら、稽古への取り組み方は人それぞれの勝手で、誰かにこうしなければならないなんて言われる筋合いのものではないなと思ったら、途端に筆が止まり、全部削除ました。

 考えてみればわたしはこのブログで長いこと自分の考えを押しつけるような文章を書いてきました。良かれと思ってのことではありますが、それがある種の偏見であることも承知の上でです。それでか、多くの共感を得られているようにも思われません。これからは力まずもう少し楽な方法をとりたいと思います。

 楽といってもいい加減な方法ではありません。新たなスタンスを打ち立てるまでもう少し時間をいただきます。本当に使い物になる合気道を提案できますように。

『馬を水飲み場まで連れていくことはできるが。飲むか飲まないかは馬の勝手だ』

302≫ 原点 

2016-08-02 17:04:44 | 日記
 そもそも本ブログは黒岩洋志雄先生の合気道を多くの方に知っていただきたいと始めたものです。とりわけその理論は他の追随を許さないレベルにあると考えています。もちろん歴史に残る多くの先達の技法はそれぞれ個性豊かで、どれが優れどれが劣ると比べられるものではありません。しかし、こと理論に関しては、これは明らかに比較の対象たりえます。もちろん、わたし自身、世にある理論すべてを比較考量したわけではありませんから安易な決めつけは慎むべきでしょう。しかし、それなりの長きにわたってより良いものを探し求めてきての知り得る範囲において、黒岩理論を超えたものとは出会っていません。

 多くの指導者において、特に理論を伺う機会がなくても実際の動きや写真、映像等を見ればおおよその考え、理論はわかります(理論と呼べるほどのものがあればですが)。相手との位置関係や自分の手足腰の遣い方で、理論どころか技法の実践者としての能力までまるわかりです。

 まあ、それは良しとして、今回はその黒岩理論の一端をご紹介します。もっとも、これまでも飽きるくらい述べてきたことではありますが、お経や聖書みたいに、大事なことは繰り返し何回でも修する価値があります。また、時間の経過につれてわたし自身の黒岩理論の解釈にもいくらかの変化がありますので、あらためて記したいと思います。

 さて、黒岩理論です。要点その第一は、人ひとりを倒すには『崩し』が絶対に必要だということです。これは柔道などではわざわざ言うのも恥ずかしいくらいの基礎知識ですが、どういうわけか合気道ではあまり重要視されてきていないように思われます。合気道家のなかには柔道出身者も大勢おられて、そういう人たちはさすがに崩しを無視することはないでしょうが、あまりにも当たり前すぎてわざわざ理論には組み込んでいないように見受けられます。かえって空手など打撃系武道家のほうが崩しに興味を持っているようです。もっともその場合は、相手をわが足元に転がせば良い(あとは突き蹴りで極めるから)という程度の極めて単純な理論構築で済ませているようです。

 近代柔道の始祖、嘉納治五郎師はそれまでの柔術に崩しという概念を採り入れたことによって講道館柔道を確確立したといって良いと思います。これは、広い意味での柔術系武道としての合気道にとっても重要な視点であることは言うを俟ちません。

 この崩しを、黒岩理論では横の崩しと縦の崩しに分類しています。横の崩しは四方投げを施すときの必須技法です。縦の崩しはさらに上段、中段、下段、地に分け、それぞれを一、二,三、四教にあてはめます。これらの崩しがないと、合気道の秘技などとありがたがっても、とても人ひとりを投げたり押さえたりできるものではありませせん。

 崩しの具体的な方法については文章を読んでもなんのことやらわからないでしょうから、いずれ映像で示したいと思います(以前にもそんなことを言っていますが、これまでのところ約束不履行です)。

 黒岩理論の要点その二、『虚と実』です。虚というのはわたしたちが普段の稽古でやっている、受けに手首などをつかんでもらって技を施すやり方のことです。実というのは、虚の稽古で培った体遣いで、自分から積極的に相手をつかんでいったり打っていったりして技につなげるやり方です。戦前の大先生のやり方は、軍人に教える関係もあり、実の稽古だったようです。戦後、大先生ご自身は戦いを前提にした戦前の指導を悔いておられたということですが、武道、武術はそもそもそういうものだったことを思えば、技法の現実的側面を知っておくことは意味のないことではありません。

 実の稽古のポイントは、虚の稽古での体遣いを極力そのまま遣うということです。それがあるので、あたかもつくりごとのように見える虚の稽古がいかに重要かがわかります。これもいずれ映像で(本当はゲストで稽古に来ていただくのが一番なんですがね。歓迎しますよ)。

 今回は特に重要と思われるふたつの要点を取り上げましたが、折にふれてその他のことも紹介してまいります。合気道をものの役に立つ武道(別に実戦に使えといっているわけではありませんよ)と認識しておられる方々の、それこそ役に立てばいいなと思いつつ。

 暑さ本番です。皆さんどうぞご自愛ください。