合気道ひとりごと

合気道に関するあれこれを勝手に書き連ねています。
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360≫ 稽古の方向性

2019-06-20 16:35:02 | 日記
 今週、当会では突きに対応する動きを稽古しています(すぐ隣で空手道の人たちが稽古しているので、肝心なところはちょっと隠しながら、笑)。小手返し、一教、入り身投げなどです。この稽古における一番の眼目は間合いの取り方です。突き対応以外でも間合いの取り方は大切なものですが、突きの場合は片手取りなどのように構えただけで間合いが自然にできあがるというものではないので、より一層間合いに対する意識が生まれます。

 合気道の稽古には、全体のバランスや意識の流れなどを重視する(これをAとします)方もいれば、わたしのように実際に使い物になるかどうかということを前提に動きを決めていくというやり方(これをBとします)もあります。どちらが正しくてどちらが間違っているというようなものではないので、そのあたりは稽古者自身の考えや好みで選択すればよいと思います。もっとも、指導者の考えで道場まるごと同じ動きになるのは以前に言ったとおりで、これは仕方がないことですが。

 さて上記の二通りの志向においては当然のことながら間合いに違いがあります。総じてAは間合いが遠く、Bは近くなります。なぜかと言うと、Aは一般的な合気道の稽古方法で、受けによる第二撃を想定していないからです。

 これ(A)で相手正面に移動(いわゆる転身)して一教の表をしようとする場合、やや斜め後方に下がるかたちになり、初手の攻撃圏からは外れますが、もう一方の手による第二撃の格好の間合いになります。第二撃は普通の稽古では想定していないので、多くの場合無視されているようです。皮肉っぽい言い方になりますが、合気道をしている人は素直で善良な方が多いので、このあたりの実戦対応性の乏しさに気づかない人も多いかもしれません。

 対して、Bは相手の攻撃的動きに素早く反応して最初の間合いよりも相手正面近くに入り身していきます。相手の突きをはらい、はらった手ですぐさま顔面当てなどで反撃すると考えてください。なおかつ自分にとって有利な位置をとることが大切です。そうでないと単なる飛んで火に入る夏の虫です。自分有利で相手不利というのは絶対に外せない条件です。この位置取りが稽古の中心になり、相当の古株の人でも苦労しながらやっています。

 さて、今のは相手正面への転身からの一教ですが、小手返しは相手側面への浅い転換で突いてきた腕の肘のあたりにこちらの手を乗せ、そのまま体を沈めて受けを足元付近に崩し落とすようにしています。入り身投げは、相手の突きの手を同側の手で軽くはらいながら側面に深く入り身して喉元に腕を差し伸べ、転換をせずにそのまま投げにはいります。

 ものすごく端折ってしまいましたが、文章で説明してもしきれないのでどうぞ想像で動きを組み立ててください。いずれにしてもこれらの方法で共通するのは、相手の第一撃の手はつかんでいないということです。そのかわり顔面などへの当て身が出ます。手首をつかんで技にはいるのはこの後ゆっくりで良いのです。そもそも、空手家に限らず実際に突きやパンチなどの練習を積み重ねてきた人の手首を突きに合わせてつかもうというのはかなり無理なことだと、対戦あるいは対面したことのある人はわかるでしょう。ですから、まずは相手を崩したり、ひるませたりして相手の動きを止め、そこから技にもっていくというのが実際的です。

 黒岩洋志雄先生は若いころボクシングをされ、将来を嘱望されていたほどの方ですが、その先生の稽古では突きやパンチへの対応はありませんでした。合気道的な方法では手をつかまえることは不可能だと考えておられたのだと勝手に推測しています。

 こういう話になると、どうしても殺伐とした表現になってしまいますが、通常の稽古ではみんなに合わせて、合気道的な動きをすることも大切です。ただそのままでは実戦には使えないということをわかっていれば、それだけでも十分なレベルアップといえるでしょう。