合気道ひとりごと

合気道に関するあれこれを勝手に書き連ねています。
ご覧になってのご意見をお待ちしています。

190≫ 普通の人の普通の合気道

2012-10-23 19:27:51 | インポート

 合気道の現状について、わたしは、このブログでは批判的な立場をとることが多いと自覚していますが、今回は逆の見方をしてみようと思います。つまり、肯定すべきことは肯定するのが公正な態度だと思っていますよと表明することで自己弁護を試みてみようと考えたわけです。 

 わたしの主宰する会では、一般の市民の方を対象とする講習会を毎年春と秋に開催しています。合気道式の準備運動や基本的な動きを覚えてもらって日々の健康づくりに役立ててもらおうという趣旨です。参加資格無制限なので、これまで未就学児から70代の方まで来られたことがあります。それでもやることは全員同じですから、合気道は本当に間口の広い武道だと感じます。

 今年も秋の講習会がつい先日行なわれましたが、2ヶ所の会場で2回ずつですので、全部参加すれば合計4回できることになります。参加費無料ですから、これは絶対お得なはずですが、経費をかけられないこともあってPRが足りないせいか毎回参加者は少数です。でも、合気道がどんなものか全然知らなかった人がほんのわずかでも理解してくれれば、大先生や吉祥丸先生に喜んでいただけるのではないかと思い、それを励みにやっているわけです。

 また、それを機会に当会に正式に入会してくれる人もいて、今年の春の講習会では40代、50代、60代の三人の方が、さらに今回は60代の方が二人入会してくれました。これでまた会員の平均年齢が上がりますが、そのような年代の方でもやってみようと思っていただける武道というのは滅多にあるものではありません。これも合気道の徳というものでしょう。

 そこで、春に入会した人と今回の参加者の動きを比べてみると、いずれも初心者ながら、やはり半年分の差が歴然とあるのがわかります。もちろん経験の有無による上手下手ということではなく、自分の体をいかに自分の思い通りに動かすことができるかという基準でです。これを1年、5年、10年と続けていけば合気道とは縁のない一般の人とは相当な開きが出てくることは明らかです。健康のために稽古をする人にとってはそれで十分に目的を達成できているといえます。願うらくは、そこで得られた身体能力をもって、いま少し合気道の真髄に迫っていただきたいというのが本音ではあるのですが。

 いずれにしても、合気道というのは、このように普通の人が普通の稽古を重ねることによって、以前には無かった能力を発揮できるようになるためのシステムを備えていると言ってよいでしょう。

 ここで大事なのは、《普通の人》による《普通の稽古》であるということです。特別な能力を持った人の特別な稽古ではないのです。まあ、そのような優れた能力を持った人の存在は他の人の目標や励みになりますし、合気道の可能性を高めてくれますから大いに喜ばしいことですが、普通の人でもある程度、いや相当程度のところまでは上達するし、そうでなければ今のような普及もなかったでしょう。

 ここで、絶対に勘違いしてはいけないのは、普及のための間口を広げることは必ずしもレベルを下げることと同義ではないことを指導者はしっかりと認識していなければならないということです。先にも言いましたように、たゆまぬ稽古の積み重ねによって当初は予想もしなかったようなレベルにだれでも到達することができるようになるのです。それを確信しなければ、バカバカしくて指導者なんてやってられないでしょう(指導者自身がそのレベルまで行っていなければ、これはまあ仕方がありませんが)。

 合気道を始めたころのわたし自身の身体能力は、大雑把にみて、全体の中程度、良くて上の下といったところだったと思います。今でも飛びぬけた能力があるわけではありませんが、長年の修練のおかげで同年代の人に比べれば平均よりは上ではないかと思っています。

 その程度ではあまり修練のおかげとは言えないのではないかと思われるかもしれませんが、あちこちにガタが来ている身としてはそれくらいに考えていたほうが無難でしょう。もちろん、合気道的な動きに関してはそれなりの自信はあるのです、当り前ですが。ですから、普通の人が普通の稽古をすればそれなりの動きを展開できるようになる、ということを自分で証明しているようなものです。

 合気道に妙な特殊技能を求めているような人にはつまらないでしょうが、わたしに言わせればそんな幻みたいなものに人生の大事な時間を費やさなくて良かったと思っているのです。現状で十分に並以上ですから。

 そんなわたしが主導する講習会ですが、それを通じて合気道に触れてみてくださる人がもっと増え、さらに合気道を愛してくだされば、《合気とは 萬和合の力なり たゆまず磨け 道の人びと》と大先生がうたわれた通りの社会が実現するのだと思っています。

 さて、いつも曲がっているわたしのヘソが幾分かはまともになったでしょうか。

 どうせまた元に戻るに決まってるって聞こえました。はいそうですが、今回言ったことは本心ですよ。。

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= 第5回特別講習会 のご案内 (目障りでしょうが、これが最終です) =

来る11月4日(日)の本講習会では、概略以下のようなことを行ないます。

ⅰ 黒岩洋志雄先生の一教、四方投げ、入身投げ (基本の技)

ⅱ 黒岩先生の技法と、同時代をともに過ごした西尾昭二先生の技法における類似点・

     相違点

ⅲ 黒岩式棒切れ術(スティック術)

ⅳ 基本に準ずる技(二・三・四教、小手返し、天地投げ、回転投げ、腰投げ等)の留意

       点(コツ)

以上の各技において、あるべき足運び、体遣い、間合い等を示し、いわゆる遣える合気道というものを考える手がかりを提供します。

このような予定ですが、時間を見ながら追加あるいは割愛いたします。

詳細は左のリンク欄から≪大崎合気会≫のホームページをご覧ください。。


189≫ 日常の些事から

2012-10-09 17:00:19 | インポート

 今回は、あまり合気道とは関係ないかもしれませんが、つい最近の出来事から、ちょっと考えたり感じたりしたことを勝手に申し上げます。

 はじめは笑い話から。朝、ボーッとしてテレビの音声を聞いていたら、『大リーグのマリナーズでも活躍したジョージ・マッケンジー選手が引退を表明しました』というニュースが流れてきました。わたしとしては特に気を惹かれる話題でもなかったのですが、何気なく画面を観たら字幕には≪城島健司選手≫とありました。なんと愉快な語呂合わせ。

 これは大発見だと勇んで息子に話したら、野球好きの間ではよく知られたことなのだと一蹴されました。要するに事情に疎い人間のただの聞き間違いなのですが、誰かに教えてもらったのではなく自分で聞き間違えたことに意味がある、などと訳のわからない強がりを言ってみたりしました。初めに面白がっただけに尻すぼみにがっかりです。あるいは前回の眼に続き耳も悪くなったか、はたまた頭が悪くなったか、武道家としてはやや情けないことでした。

 さて、このごろ近隣諸国と領土や歴史認識について摩擦が起きています。わたしはいわゆる≪進歩的知識人≫でも≪開明的言論人≫でもないので、傍からとやかく言われたりちょっかいを出されたりすることには大いに不快の念を持っていますが、それよりもこの国の覚悟というものが見えてこないことに不満を持っています。

 そのような面倒くさい人たちを相手にこちらの意思を表明するにはそれなりの覚悟と方法があります。ですが、戦後教育によって争うことはいけないことだと骨の髄までしみ込むほどに教え込まれ、喧嘩の仕方を忘れてしまった現代日本人にとって、それは少々難しい注文かもしれません。

 そのような状況で、人間としての誇りや国家の尊厳よりも経済的繁栄(お金儲け)が大事であると言わんばかりに、近隣国との摩擦によって失った利益のことをあれこれ例を出して言いつのる報道機関や一部産業界はいったいどのような価値観で動いているのか、近隣国の無作法な態度より、むしろこちらのほうを悲しむべきかもしれません。

 ひと様に強いるつもりはありませんが、武士は喰わねど高楊枝、金で魂を売っちゃいけない、痩せ我慢こそ本来の面目ではありませんか。いまどき、はやりませんけどね。

 もうひとつの話題。わたしの主宰する会は稽古場として、当市の武道館の他に5年ほど前からは隣の町(宮城県美里町)の武道場もお借りしています。長いこと気づかなかったのですが、そこの玄関脇の戸棚の上にひっそりと置かれている扁額に収められた書がなんと≪昭和の武蔵≫とも称えられた剣道・居合道範士九段の中倉清師(1910~2000)の手になるものだったのです。

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【理業一致 剣居道範士九段 中倉清】

 ご存じの方も多いと思いますが、師は合気会の前身、昭和初期の皇武会に併設されていた剣道部に所属し、合気道も修めながら剣道家として活躍されました。昭和7年に植芝家の婿養子となりましたが4年ほどでその籍を離れた方です。もしかしたら第二代道主は中倉師(養子時代は植芝盛博)だったかもしれません。その中倉師の揮毫だとは気づかないで見ていたわけですが、そのようなところに合気道の稽古の場を求めていったことに奇縁を感じました。

 ちなみに美里町は昔から剣道が盛んで、そこの小牛田農林高校剣道部は幾多の剣道家を輩出し、とりわけOBである千葉仁氏(当時警視庁:旧中田町出身で、石ノ森章太郎氏と同郷)は昭和40年代に全日本剣道選手権で3度の優勝を飾っています。そのころ中倉師は関東管区警察学校の教授でしたので、揮毫の件はそのような人脈に関係しているのかもしれません。ちなみに千葉氏の揮毫も飾ってありますのでご紹介しておきます。

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一劍興國 剣道教士 千葉仁

 ついでと言ってはなんですが、わたしの幼馴染のM君も同校OBで、大学4年時には学生選手権優勝、翌年の全日本では準優勝の成績を残しています。このような、土地に根付いた武の気風というものは、あくまでもそこになんらかの価値を見出した人たちの努力の積み重ねの結果であって、最初から名声を得ようと思って得られるものではありません。

 努力の積み重ね。このたびの山中伸弥京大教授のノーベル賞受賞もそれと同じでしょう。おめでとうございます。

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= またまた 第5回特別講習会 のご案内 =

来る11月4日(日)の本講習会では、概略以下のようなことを行ないます。

ⅰ 黒岩洋志雄先生の一教、四方投げ、入身投げ (基本の技)

ⅱ 黒岩先生の技法と、同時代をともに過ごした西尾昭二先生の技法における類似点・

     相違点

ⅲ 黒岩式棒切れ術(スティック術)

ⅳ 基本に準ずる技(二・三・四教、小手返し、天地投げ、回転投げ、腰投げ等)の留意

       点(コツ)

以上の各技において、あるべき足運び、体遣い、間合い等を示し、いわゆる遣える合気道というものを考える手がかりを提供します。

このような予定ですが、時間を見ながら追加あるいは割愛いたします。

詳細は左のリンク欄から≪大崎合気会≫のホームページをご覧ください。