前回の文末に書きましたように、普通に動けるひとが思いのほか少ないというのが実感です(高段者も例外ではない)。それでは、普通に動けるとはどういうことか、その定義をしておかないとただの愚痴になってしまいますから、そこをはっきりさせておきましょう。
言葉を変えて言えば、それは本来あるべき姿、形のことです。それでもあいまいですからもっとはっきり言えば、投げるなら投げる、押さえるなら押さえるで、そのための合理的なかたちがあるということです。たとえば、柔道の投げ技を想像してみてください。組み合った状態で、彼らは襟、袖をとっての引きつけをします。相手との間が大きければ投げられないからです。
投げるためには相手との間を埋める動作が必要で、それが柔道の場合は引きつけであり、合気道では相手との間に自分から体を入れていくのです。それが合理的、つまり理屈に合っているということです。ですから、腕を伸ばして離れたところから手先で相手をコントロールするような投げはありえないのです。
これは合理的ということの説明にたまたま投げ技を例にとっただけであり、他のすべての動きにも合理性がなければなりません。その正確な動きを体現するためには、細かな運足を身につけることが必須です。わたしが合気道を始めて間もないころに買い求めた《合気道入門》という本があります(植芝吉祥丸著 (株)東京書店 昭和46年発行)。これには各技における運足図が示されており(下写真=ちなみにこれは相半身片手取り二教表)、初学者にはとても親切な作りになっています。今は動画が多用され、かえって足の運びのような地味な説明はなくなっているように思われます。
正直に言えば、現在わたしは図に示されたような運足はやっていません。しかし、理想とするかたちを作ろうと思えば運足が極めて重要であることをこの本は教えています。
わたし流儀の運足をひとつだけ例示してご批判を仰ぎたいと思います。以前にも紹介しました正面打ち一教です。同じことをまた持ち出したのは、ずっとこのやり方を続けてきて、やっぱりそれで間違いないと確信しているからです。
右相半身において、取りは両手の振りかぶりと同時に右足を一歩進めますが、その際、右足は始めの構えから30°程度右斜め前方、受けの踏み出した右足とほぼ平行になる位置です(これが重要)。次に切り下ろしと同時に左足を進めますが、その踏み込み位置は自分の右足と受けの左足の中間点です(これも重要)。
多くの人は一歩目(右足)の踏み込みが小さすぎ、二歩目は逆に深すぎるのです。そのやり方では受けを前方に押し出すばかりで上方への崩しができていません。それでは合理的な技にはならないのです。
また運足にはつま先の向きや体重を拇指球で支えるか踵で支えるかというようなことも含まれます。本当はこのようなことのほうが関節技が効くとか投げ方がきれいだとかいうよなことよりも百倍も大事なのです。足の踏み込み量も、大きいとか小さいとか言ってもそれはせいぜい一足長程度の違いでしょう。ですがその違いが技をまったく別物にしてしまうのです。崩しと間合いに大きく影響するからです。武道、武術においてこの間合いと崩しは基本中の基本であり、極意でもあります。
間合いというと剣術系の専売特許で、崩しといえば柔術系と思われがちですが、それは間違いです。どちらの系統でも重要な技能であり、それを決定しているのが運足だということは是非知っておいていただきたいと思います。
今度の講習会ではそのようなことにも言及したいと考えています。無料ですからどうぞ遊びにおいでください。
【お知らせ】
=第9回 特別講習会のご案内=
黒岩洋志雄先生の合気道理論に則った講習会を11月16日(日)に開催いたします。
ご興味おありの方は《大崎合気会》ホームページをご覧ください。
言葉を変えて言えば、それは本来あるべき姿、形のことです。それでもあいまいですからもっとはっきり言えば、投げるなら投げる、押さえるなら押さえるで、そのための合理的なかたちがあるということです。たとえば、柔道の投げ技を想像してみてください。組み合った状態で、彼らは襟、袖をとっての引きつけをします。相手との間が大きければ投げられないからです。
投げるためには相手との間を埋める動作が必要で、それが柔道の場合は引きつけであり、合気道では相手との間に自分から体を入れていくのです。それが合理的、つまり理屈に合っているということです。ですから、腕を伸ばして離れたところから手先で相手をコントロールするような投げはありえないのです。
これは合理的ということの説明にたまたま投げ技を例にとっただけであり、他のすべての動きにも合理性がなければなりません。その正確な動きを体現するためには、細かな運足を身につけることが必須です。わたしが合気道を始めて間もないころに買い求めた《合気道入門》という本があります(植芝吉祥丸著 (株)東京書店 昭和46年発行)。これには各技における運足図が示されており(下写真=ちなみにこれは相半身片手取り二教表)、初学者にはとても親切な作りになっています。今は動画が多用され、かえって足の運びのような地味な説明はなくなっているように思われます。
正直に言えば、現在わたしは図に示されたような運足はやっていません。しかし、理想とするかたちを作ろうと思えば運足が極めて重要であることをこの本は教えています。
わたし流儀の運足をひとつだけ例示してご批判を仰ぎたいと思います。以前にも紹介しました正面打ち一教です。同じことをまた持ち出したのは、ずっとこのやり方を続けてきて、やっぱりそれで間違いないと確信しているからです。
右相半身において、取りは両手の振りかぶりと同時に右足を一歩進めますが、その際、右足は始めの構えから30°程度右斜め前方、受けの踏み出した右足とほぼ平行になる位置です(これが重要)。次に切り下ろしと同時に左足を進めますが、その踏み込み位置は自分の右足と受けの左足の中間点です(これも重要)。
多くの人は一歩目(右足)の踏み込みが小さすぎ、二歩目は逆に深すぎるのです。そのやり方では受けを前方に押し出すばかりで上方への崩しができていません。それでは合理的な技にはならないのです。
また運足にはつま先の向きや体重を拇指球で支えるか踵で支えるかというようなことも含まれます。本当はこのようなことのほうが関節技が効くとか投げ方がきれいだとかいうよなことよりも百倍も大事なのです。足の踏み込み量も、大きいとか小さいとか言ってもそれはせいぜい一足長程度の違いでしょう。ですがその違いが技をまったく別物にしてしまうのです。崩しと間合いに大きく影響するからです。武道、武術においてこの間合いと崩しは基本中の基本であり、極意でもあります。
間合いというと剣術系の専売特許で、崩しといえば柔術系と思われがちですが、それは間違いです。どちらの系統でも重要な技能であり、それを決定しているのが運足だということは是非知っておいていただきたいと思います。
今度の講習会ではそのようなことにも言及したいと考えています。無料ですからどうぞ遊びにおいでください。
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