合気道ひとりごと

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361≫ かたちの理由  

2019-07-11 18:25:05 | 日記
 合気道の基本の構えは半身ですが、動きの中では局面に応じた姿勢をとることが求められます。それでは、その局面に応じた姿勢とはどのようなものであるか、よく考えてみる必要があります。そのように教えられたから、とか、その方が楽だから、というのは少なくとも中上位の人の答えとは認められません。

 はっきり言いましょう。最適な姿勢とは、相手の攻撃を防ぎ、自分の身を護ることができるかどうか、その一点にかかります。もちろん100対0と圧倒的な位置取りが理想ですが、そのようなものは実際には望むべくもありません。ですが、それを目指して努力するということが稽古の眼目です。

 いつも述べておりますように、合気道の形(かたち)には一つ一つにそうでなければならない理由があります。先日、わたしの会の少年部の稽古で天地投げを指導しました。逆半身両手取りで、取りが左半身であれば、左足を一歩進め受けの背面に入り身するわけですが、少年部くらいだと、間違えて受け正面に右足を進めてしまうことがあります(実は大人でもあります)。とりあえずそれは違うと教えますが、その理由までは言いません。自分で考えてほしいからです。しばらく考える時間を与えてから、出てきた答えを聞くと、たいていは正答ではありません。そこでわたしが受けになり、間違い天地投げをやらせてみます。そして取りが間違いの一歩を踏み出したところで、こちらは丁度よいところにある金的に蹴りを放ちます。もちろん当てませんが。そこで子供は初めて理由がわかります。蹴り一発で決まるようなものは武術ではありません。

 同じように、受けの正面に踏み込んで四方投げなり一教なりにいく時は、顔面への当て身が必須です。ただし、当て身にこだわり過ぎると動きが固くなり、合気道本来のなめらかな動きとならないので、少年部や初心者などの稽古では割愛してよいとも教えます。

 最近、60代後半の方が入会しました。その年齢で合気道に興味をもっていただいたことを誠に嬉しく思っています。年齢的に、健康法として取り組みたいことはすぐわかります。ですからこちらもその方向で技を提示しています。ただ、合気道は強さがなければいけない、ということを二代道主吉祥丸先生は仰っていますから、健康法の枠内で強さを発揮できるような指導も入れています。先日、その稽古で、実際にありそうな状況を前提に技に移行することを目指して指導しました。よくある襟取りを制圧する技です。受けは襟をつかんで引きつけるのが一般的ですが、その方は親指を下側にして襟を取りました。なにか理由があってそうするのかと思いましたが、特に理由はないようでした。要するに、これまで争いらしい争いをしたこともなく、はっきり言えば襟のつかみ方なんて知らなかったということのようです。それで、親指を下側にするようにつかんだら、一発で肘をきめられてお終いですよと教えました。ですが、これまでそのような行動をしたこともなく平和に生きてこられた方に、実際の戦いではこうですよなどと知った風にのたまうのも、わたし自身いい年をして、なにか小恥ずかしいことでした。

 とは言うものの、合気道における正しい動きや構えというものは、おしなべて戦いを前提にしたものですので、わたし自身はこの先も同じようなことを言い続けることになるでしょう。小恥ずかしさを乗り越えて、あえて必殺の技を伝えていこうと思います。技が必殺だからこそ、それをよくコントロールできる心を鍛えるのがすべての武道に課せられた義務であると思います。それをもって和の社会を築くための礎とする、それこそが武道における精神論の重要性です。