前々回とその前の回に、入身投げと四方投げについての私見を動画付きで披歴いたしました。となれば、もうひとつの基本の技、一教を外すわけにはまいりません。しかしながら、これもまたある程度の稽古を積んだ合気道愛好者ならばそれぞれのかたちをお持ちでしょう。ですから、わたしがこれから開陳しようとするものは、あくまでも百人いれば百通りの合気道の中のひとつとしてご笑覧ください。
さて、このブログで再三申し上げておりますように、わたしは、というよりは黒岩洋志雄先生の教えとして、一教~四教はタテの崩しを象徴する技法で、そのうち一教は上段の崩しを表すと理解しています。それを忠実になぞろうとすれば、もっとも大切なのは足遣いです。
上段云々というのであれば大切なのは手の遣い方ではないのかと考える方もいらっしゃるかと思います。ですが、上段だとか中段だとかは受けと取りの動きの流れの中でのひとつの表れであり、そこに共通するのは足遣いです。それをベースに体捌きも、間合いも生まれてきます。
ですので、動画においても一番は足の運びに重点を置いてご覧いただきたいと思います。ですが、手がどうでもよいというわけでは、もちろんありません。今回は主に相半身片手取りにしていますが、これは肘を締めたり開いたりという動きを、しっかりと意図してやるのに適しているからです。つまり、曖昧でいい加減な動きは許されない、そのための相半身片手取りです。
まずは一教の表です。取りの一歩目の足(ここでは右足)は受けの前足と同じくらいの線まで踏み込みます。同時に両手を振りかぶります。二歩目(左足)は自分の右足と受けの後ろ足(左足)の中間に進めます。同時に切り下げますが、その際、受けの手の行き先は後ろ足の位置です。
この一連の足運びと手の動きは、受けを後ろに押さないためです。ですから手は上げて下ろすだけ、押してはいけません。押せば受けが後ろに下るだけですから。ただ、稽古では下がってはいけないと教えられているので、実際は下らないでしょうが、それは取りの甘えというものです。
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YouTube: 相半身片手取り一教表
次は裏です。動き出しでは、取りは前足(右)の踵を左に寄せるようにして、まずは受けからの攻撃線を外します。このとき取られている右手は高さを変えずに掌を上に向けます。次に、左足を自分の右足と≪ハ≫の字を描くように受けの右足前に踏み出します。その位置でちょうど受けの右前腕が自分の正面に来ます。そこから、自分の両腕と相手の前腕でゆるい円をつくるようなかたちのまま徐々に下ろしていきます。イメージとしては、受けの肘を押す感じです。
なお、一教は上段の崩しといいながら、ここではあまり上段に関係なさそうな位置に腕があります。それは、正面打ち、あるいは突きも想定しているからですが、とりわけ正面打ちでは、表が上段からさらに上方への崩し、裏は上段から下方への崩しになり、ほぼ別物の技といってもよいくらいです。そのようなこともあり、わたしは一教裏は上に押し上げるような遣い方はしておりません。
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YouTube: 相半身片手取り一教裏
最後に、上記のような足、腕の遣い方で正面打ち一教表をしてみます。ここでは一歩目に踏み出した足にはあまり体重を載せていません。そうなる前に二歩目を踏み出しているからです。ご参考まで。
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YouTube: 正面打ち一教表