劇場公開された映画 『ロック誕生 The Movement 70’s 【ディレクターズ・カット版】』 DVDをようやく鑑賞。
先般NHK BS-2で全6回放映された特番の方を先に観てしまう形となってしまいましたが、結果的に両方の映像を比較することができたので、良かったと思っている。映画の方は【ディレクターズ・カット版】と付いているように、劇場公開された当時の内容と若干差し替えられている部分(例えば劇場公開時にはあった村八分のライブ映像がカットされているなど)があるようだが、基本路線は変わっていないので映画初見の人でも十分楽しめると思います。
DVDを全編観終わって最初に感じたのが、同じ 『ロック誕生』 というタイトルだが、映画とNHK特番ではまったくの別物に仕上がっていると思えた点です。ライブ映像の曲間に挿入されているインタビュー部分もまったくの別撮りですし、登場している人物も微妙に違っている点が面白い。NHKの方がインタビュー映像は明らかに画質・内容ともに洗練されていて綺麗で観やすく、話も聞き取りやすかったのは事実ですが、より生々しいコメント映像であったかどうかという点においては、映画版の方に軍配が上がると思いました。
とくに日比谷野外大音楽堂で撮影された内田裕也氏の映像は興味深かったですね。映画本編では編集カットされてしまった裕也さんのインタビュー映像ですが、特典映像の中に編集される前の長尺版映像が収録されていたのがうれしかったです。なかでもフラワー・トラヴェリン・バンドの凱旋公演から、フォークブーム批判に至る積年の恨み辛み(爆)の箇所などは、もう裕也さんでなくては語れない内容でしたので、必見ですよ。とにかく掛け値なしで面白かったです。
ただ残念だったのは、明らかに内田裕也人脈の内容に偏っていた点です。時間的な制約もあるので、仕方がない苦渋の選択だったのかもしれませんが、ゴールデン・カップスのヨコハマ人脈やジョニー・ルイス&チャーの映像などがまったく登場して来なかったのは、やはり減点だと思います。某音楽誌の中で語られていた村兼明洋監督のインタビュー記事では「陳信輝さんの映像があれば、また違った編集になっていたと思う」と語られていたので、想像するに撮影開始当初はもう少し広いスタンスで臨まれていたのだと思いますが、使用に耐えうるライブ映像などが発掘できなかったというのが、内容が偏ってしまった最大の理由だったのかもしれません。映画としては「手間暇がかかって割に合わない仕事なので、続編は作らない」とも発言されていましたので、本作は日本ロック黎明期のある側面を切り取ったドキュメント映画だ、と解釈して楽しむのが、たぶん正解なのかもしれません。
なお、個人的には内田裕也さんのインタビュー映像以外で楽しめたのは、音楽評論家・中村とうよう氏のインタビュー場面で、これは話の内容というよりも、実はとうよう氏の背後の本棚に並んでいる音楽本のタイトルが気になって仕方がなかったですね(苦笑)。他人の本棚を覗き込むというのは面白いですからね、普段はどんな本を読んでいるのかとても興味深いですから。ビートルズやストーンズなどロック関係の本が多いのはわかりますが、注意して本の背表紙を眺めてみるとマイルス・デイヴィスの関連書籍が結構多かったのは、少し意外でしたが(苦笑)
◎DVD 『ロック誕生 The Movement 70’s 【ディレクターズ・カット】』
内田裕也インタビュー
フラワー・トラヴェリン・バンド「Make Up」
頭脳警察「銃をとれ!」
ミッキー・カーチス インタビュー
はっぴいえんど「はいからはくち」
遠藤賢司インタビュー
遠藤賢司「夜汽車のブルース」
ハルヲフォン「ファンキーダッコ No.1」「ロックスタディ」
近田春夫インタビュー
ファー・イースト・ファミリー・バンド「地球空洞説」「心山河」
中村とうようインタビュー
イエロー「ゴーイングアップ」「国旗はためく下に」
加納秀人インタビュー
クリエイション「ロンリー・ナイト」「タバコロード」
森園勝敏インタビュー
四人囃子「おまつり」
ジプシー・ブラッド「満たされないもの、すべて」
■ディレクターズ・カット特別映像
・劇場公開時特報
・劇場公開時予告編
・内田裕也がストレートに語る日本ロックの黎明期 未公開独占ロング・インタビューを収録!!