平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

楽曲分析 『ボヘミアン・ラプソディ』 ~斬新な曲構成! オペラパートの〝錯乱〟 ハードロックパートの〝反抗〟 ラストのバラードの〝諦め〟

2018年12月25日 | その他
 昨日、NHKでクィーンの『ボヘミアン・アプソディ』の分析番組(=「ボヘミアン・ラプソディ殺人事件」)をやっていた。
 現在、映画が大ヒットしているようだけど、確かにあの曲は革命だったな。
 僕も初めて聞いた時、「何じゃこれはーーー!?」と衝撃を受けた。
 ………………

『ボヘミアン・ラプソディ』の楽曲構成は次のようになっている。

・バラードパート
・オペラパート
・ハードロックパート
・バラードパート

 冒頭のバラードパート。ここでは人を殺してしまった青年の告白から始まる。

「これは現実化なのか? 幻想なのか?
 ママ、僕は人を殺してしまったよ。
 彼の頭に銃をあて、引き金を引いて。
 さあ、行かなくちゃ。みんな、さようなら。
 ママ、死にたくないよ。
 いっそ生まれてこなきゃよかった。
 ママ、僕が戻ってこなくても気にしないでね」


 絶望と哀しみにあふれた告白だ。
 フレディ・マーキュリーの歌声が美しくせつない。
 青年は自殺してしまうのか?
 ところが、次のオペラパートになると曲はガラリと変わる。
 オペラのような掛け合いをしながら、

「小人のシルエットが見える。
 スカラムーシュ(=イタリア喜劇のピエロ)、ファンタンゴ(=スペインの踊り)を踊ろう。
 雷鳴と稲妻が僕を驚かす。
 ガリレオ(=天文学者)、フィガロ(=オペラの主人公)
 僕は貧乏で、誰からも愛されていない。
 ビスミラ(=アラーの神よ)、僕を逃がして。
 ビスミラ、ダメだ!
 ベルゼブブ(=悪魔のボス)が悪魔を連れてきた」


 シュールですなあ。
 おそらく主人公の青年は錯乱しているのだろう。
 死の恐怖から、クスリに手を出して幻覚を見ているのかもしれない。
 クィーンの他のメンバーは、このオペラパートは要らないと主張したらしいんだけど、フレディ・マーキュリーはこだわったらしい。

 そしてハードロックパート。
 ここで主人公は反転、反抗に出る。

「僕に石を投げつけ、目に唾を吐くつもりだな!
 愛するふりして僕を野垂れ死にさせるつもりだろう!
 そんなことさせない!
 ここから出て行け!」


 すごい展開ですね。
 今までの弱気や哀しみとは全然違う。
 でも、これがロックなんですね。
 自分を押しつぶそうとするものに反抗して立ち向かう。
 この曲が最高に盛り上がる瞬間!

 そしてラストのバラードパート。
 ここではハードロックパートの勢いはなくなり、諦めの境地、人生を深く見つめる姿勢に転じる。

「大丈夫、たいしたことないさ。
 たしたことないさ。みんな、わかってるだろう?
 ただ、風が吹くだけ」


 おおっ、これがこの曲の結論なのか。
 番組(=「ボヘミアン・ラプソディ殺人事件」)ではシェイクスピアの『マクベス』のせりふを引用して説明していた。
「人生は動きまわる影に過ぎない。
 人は哀れな役者だ。
 自分の出番が来れば見栄を切ったり、嘆いたりするが、とどのつまりは消えてなくなる」
 …………………

 すごい曲ですね。
 主人公は人を殺した設定になっているが、彼が象徴しているものは〝社会から疎外された人たち〟(フレディ・マーキュリーの場合はゲイであること)だろう。
 そんな疎外された人たちが嘆き哀しみ、錯乱し、反抗する。

 この曲がすごいのは、単なるバラードで終わらせず、オペラパートとハードロックパートを入れたこと。
 オペラパートで、行き場のない絶望、苦しみ、哀しみ、不安、恐怖がうず巻き、
 ハードロックパートで、立ち直り、反抗し、戦い始める。

 この曲が発表された1975年の英国は〝英国病〟と言われ、不況・失業・インフレの時代で社会不安でいっぱいの社会だったらしい。
 そんな社会状況が『ボヘミアン・ラプソディ』とシンクロしたのだろう。
 そして現在、
 僕は未見だが、現在、映画『ボヘミアン・ラプソディ』がヒットし、クィーンが再評価されているということは───
 同じく社会が絶望や不安に溢れているということではないか?
 今の世界には、この曲とシンクロする人がたくさんいる。
『ボヘミアン・ラプソディ』は現代のアンセム(=聖歌・心の拠り所になる歌)になるかもしれない。


 それでは聴いて下さい。

「Queen - Bohemian Rhapsody (Official Video)」(YouTube)

 世界初のミュージックビデオだそうです。
『ボヘミアン・ラプソディ』は180ものトラックが重ねられた〝多重録音〟で制作されており、生演奏が不可能なため、ミュージックビデオがつくられたらしい。
 

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