平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

花燃ゆ 第11回「突然の恋」~心を偽るなど生きていく上では当たり前のことじゃ

2015年03月16日 | 大河ドラマ・時代劇
「なぜ飢える者がいるのか?」
 国家や異敵のことばかりを論じている松下村塾で、前原一誠(佐藤隆太)は新しい問題提起。
 周囲がしらける中で、松陰(伊勢谷友介)はこの問題提起を採用した。
 こういう所、松陰はいい先生ですよね。
 抽象的な天下国家の問題も大事だが、人が飢えているという具体的な問題も重要だと考える。
 前回の吉田稔麿(瀬戸康史)の「江戸の人々の生活を知りたい」という問題意識も良しとしたし。

 前原一誠は、歩みののろい人物でもあるようだ。
 天下国家を論じている他の塾生に比べて、自分の問題意識は遅れていると劣等感を持っていた。
 しかし、前原は気づいた。
「灯りを見つけたら急くことはない。あとはゆっくり近づけばいい」

 まわりがどんどん追い越していって、時に人はあせる。
 自分は劣っているのではないかと悩む。
 でも、人には人のペースがあるのだ。
 駆け足で前を走っていった人間がつまずいたり、違った道に行ってしまうこともあるわけだし。


「心を偽るなど生きていく上では当たり前のことじゃ。皆そうして生きとる。決してまともに向き合うてはいけんことが世の中にはあるんじゃ」
 という小田村伊之助(大沢たかお)の言葉も興味深い。
 大人の意見ですよね。
 大人はそうして生きている。
 しかし、これには、いつしか自分を見失ってしまうという危険がある。
 久坂(東出昌大)もこんなことを言っていた。
「心を偽るうちに決してゆずってはいけないものを失ってしまいそうで……」
 久坂のゆずってはいけないものは、文(井上真央)であるようだが、伊之助の場合は思想・信条。
 ここをゆずってしまっては伊之助は伊之助でなくなる。
 だから椋梨(内藤剛志)の意向に逆らって、
「皆様、いま一度、お考えいただけませぬか。今、異国の申すままに通商を承諾しては日本はいずれ清国のごとく金銀と土地を収奪され、異国の侵略を許してしまうことになりまする。決して条約を認めてはなりませぬ!」
「軽挙を諫めるのも忠義!」

 青臭いですね。組織人としては失格。
 でも、あのまま自分を抑えて生きていくのと自己主張して生きていくのとでは、どちらが幸せか?
 それは人それぞれが決めていくこと。
 今回、伊之助は後者を選んだ。
「心を偽るなど生きていく上では当たり前のこと」と考える大人の伊之助が迷いに迷った末、ついに発した。

 この作品は〝曲げられぬ男たち〟の物語である。
 男たちは時に迷い、ためらい、挫折しながら、自分を貫いていく。
 そんな彼らを文がどう支えていくか?

コメント (4)
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