とりあえず一所懸命

鉄道の旅や季節の花、古い街並みなどを紹介するブログに変更しました。今までの映画や障害児教育にも触れられたらと思います。

こだわりは近づける第一歩

2012-01-19 22:33:15 | 障害児教育

悠人くんは保育園年中の男の子です。

病院に併設されていた通園施設に早くから通園していて、昨年4月から現在の保育園に今年から通園しています。

病院では広汎性発達障害と診断されています。

 朝の自由遊びから観察させてもらいました。用意された白い紙に鉛筆で電車の絵を描いています。

窓やドア上部にはパンタグラフまで描いてある細かい絵でした。何枚も何枚も同じ絵を描いています。

そばに行って電車が好きなのか、聞きました。

周囲の友だちも悠人くんはいつも電車の絵を描いていると報告されるくらいです。

「車輪は?」と聞くと車輪を加えます。

「新幹線は好きですか?何系が好きですか?」「他にどんな電車を知ってる?」と確認していきました。

電車博士の認定には十分でした。

 朝の会が始まります。歌遊びを楽しむ友だちの後ろで、指を吸ったり、鼻をほじったりしています。

先生の髪を触って口にもっていくなど不安定になっていることを思わせる行動が続きます。

でも、けなげに立ち尽くしています。

担任の保育士からことばだけで今から行うコマの製作についての説明がありました。

説明がだんだん長くなると、担当の先生の髪に突進して乱暴に触って口にもっていきます。

やっと製作活動に入りましたが、紙皿で作るコマはすぐにできてしまいました。

他の子どもたちは、次のコマを作るなどそれなりに時間を過ごしていましたが、

悠人くんはやることがなくなってしまい、また担任の先生の髪に突進して行きました。

その様子をしばらく見ていましたが、こじれそうだったので「悠人くん、電車のコマをつくろうよ」と話しかけました。

電車は自由遊びの時だけしか描いたらいけないと思っているらしくその気になってくれません。

紙皿を手にして「H駅に停まる電車を描こうか?次はK駅で…」と10いくつの駅を言ってみました。

やっとその気になって絵を描き始めました。周囲に車輪を描いて中央に電車をドーンと一台描きました。

「電車の色は何色?」と聞くといろんな電車の色を知っていました。

完成したところで、コマですから中央に穴をあけなくてはいけません。

そのことを告げると最初は渋っていましたが、意を決して穴を開けに行きました。

保育士さんに手伝ってもらって、ひごを通して完成すると、数回喜びのジャンプが出ました。

でも。コマを回すことはしません。「回してもいい?」と尋ねながら回してみることにしました。

勢いよく廻ると電車の絵が一旦消えて、回転が弱くなると電車の絵が見え始めることがうれしくなったようでじっと見ていました。

その後、何度もコマを回していました。

担当の保育士とその後話をしてみると「電車ばかり固執しても困ると思って電車のことはまり触れないでいました」と答えていました。

悠人くんは、帰ろうとした私の所まで走ってきて「江ノ電明日来ます」と伝えに来ました。

絵を描きながら私とした会話で江ノ電に乗ったことがあることと、写真を撮っているのでほしかったら持ってきてあげることをちゃんと記憶していて、

明日江ノ電の写真を持ってもう一度来園することを伝えに来たのです。

大好きなことを一緒にしたこと、大好きなことをしてうまくできたこと、友だちや先生から評価されたこと、そのことを一緒に実現できたおじさん。

この人はいい人に違いないと思ったのかもしれません。

次の日江ノ電や違う電車の写真をプリントアウトして持って行きました。

悠人くんは喜んでくれました。

でも担当の先生もインターネットの画像から電車をたくさんプリントアウトしてくれていました。

とってもうれしいできごとでした。

コメント
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