季節はずれのインテルメッツォ(続)

音楽、文学、絵画、スポーツ、シェパード等々についての雑記帖。

感情の伝播

2016年03月10日 | 音楽
もらい泣きというのは誰しも経験しているだろう。人に伝播するのはまた悲しみだけではない。

あらゆる感情は伝播しうる。ドストエフスキーの「罪と罰」でラスコオリニコフがソーニャに、婆とその妹リザヴェータを殺したのは自分であると告白する。はっきりとした言葉も無しの告白なのであるが。この場面は実に美しい。そしてソーニャの恐怖が奇妙なことにラスコオリニコフに伝播する。

若い人がコンクールで優勝する。インタビューは判で押したように、これからの抱負を訊ねる。するとこれまた判で押したように「これからは人を感動させるような演奏家になりたい」と答える。

人は他人を感動させることなぞ出来やしない。出来ることは己が感動することだけである。その心の波長にもしかしたら同調する他人がいるかも知れない、ただそれだけである。このような考えは難しいことであるか?僕には一番簡単な、当たり前のことに思われるのだが。



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