季節はずれのインテルメッツォ(続)

音楽、文学、絵画、スポーツ、シェパード等々についての雑記帖。

見た目3

2011年09月23日 | 音楽
ピアノを弾く場合ふつうは椅子に座って弾く。(前の記事で次の記事はこの一文から始めると予告していたとおり。正直者でしょう、政治家にはなれないのがよくわかるね)

こんなところから話を始めなければならないと思うほど今日のピアノ演奏の現場は混乱している。こんな調子ではピアノはふつう逆立ちをして弾くことはない、なんて断りから説明を始める日も遠くないかも。

座面が床より高くにあるわけだからスポーツや、そしてお望みならバレエのような芸術における床、地面に相当するものはピアノ演奏においては座面である。
つまり腰を硬くして背筋を伸ばし切ると、スポーツで(お望みならバレエで。しつこいけれどね)膝を全く使わないのとほぼ同じことになる。当たり前の話だ。

スポーツで強い足腰という場合、それは柔軟な足腰と言い換えてもほぼ同じである。かんたんに言えば突っ張った膝を強い膝であると形容することはない。それどころか弱くもろい腰という。

つい先ごろ世界陸上で義足のランナーが決勝まで進んで話題になった。
それでは今後あらゆるスポーツで義足の名プレイヤーが出るかといえば多分無理ではないか。短距離走の場合、膝の使い方は比較的単純である。しかしたとえばボクシング、スキーの滑降などを考えてみよう、膝は(いうまでもなく膝にとどまらないですよ、本当は。足首、腰をはじめあらゆる体の部位に話は及ぶけれど、今はそんな厳密な話をする必要はない)瞬時に緩めたり強めたりして体の動きをコントロールしながら動いている。ボクシングや剣道のように基本は上体を起こして相手の攻撃に対する備えを欠かせない場合、膝の役割はいやがうえにも大きくなる。その上前後にまで自在に動くことが求められる。

要するに体はその動作が要求するのに従ってさまざまにクッションのように、サスペンションのように使っている。種目や動作の内容によって違う。
ピアノを弾く動作をひとつ正直に見たらよい。座面が地面と同じことなのに、ではピアノを弾く際に必要な様々なクッションは体のどの部位を用いて作り出されるのだろうか。

脊椎、腰椎は関節のような大きな動きをしないけれど、これらを微妙に使うことで硬直したショックを和らげるのだ。日常のあらゆる動作がそうである。ぎくしゃくした身振りが笑いを誘うのを思い出してもらえばよい。

それなのに背中を伸ばしてバレリーナのような姿勢を取ってごらんなさい、いったい体にはどんな影響があるか。サスペンションに似た役目は肩から先だけになる。まあ風になびくこいのぼり状態と思えばよい。そこで今日日本のピアノ奏者によく見られる、いかにも柔かそうな動きを「演出」する奏法(これを奏法とよぶのなら)が増える。

だって弾けているじゃない、と思う人もいるだろう。ここで論理的に?説明する試みは頓挫する。僕には弾けているとは聴こえないねと繰り返すことができるだけである。

本当は続けて体の動きを記述することだって可能なのだが、ここでひとまず投稿しておく。
コメント (1)
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