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多発性嚢胞腎の漢方治療 医案6 腎病漢方治療182報

2013-07-26 00:15:00 | ブログ

?氏医案 血瘀湿阻 気機不暢 日久成積案

?西中医 1999年第10期より)

患者:馬某 52歳 男性 工場労働者

入院年月日198716日“多発性嚢胞腎”で入院

病歴

患者19817月 疲労が重なり、両腎区に下垂感を伴う痛みを自覚、肉眼的血尿を合併し、腎盂造影で“右腎結石”、西洋医学治療で寛解。5年後、19867月再度疲労が重なり発病、腰痛、腎区痛、悪心、嘔吐、納差、腹張、尿少。超音波検査:“多発性嚢胞腎”、“腎性高血圧”。血圧21.3/13.3kPa(160/100mmHg)、末梢血検査正常。腎機能検査では軽度尿毒症。舌苔白膩、脈弦細。

中医弁証:血瘀湿阻 気機不暢 日久成積

治法;化瘀利湿

方薬;焦山楂 黄耆 双花 生薏苡仁 海金沙 丹参 茯苓30g 黄柏 当帰 桃仁 紅花 大腹皮10g 益母草60g

服薬15剤後、自覚、精神は以前よりも好転、諸症は均減、脈舌は変わらず。

服薬70剤後、血圧は下降し17/12kPa(128/90mmHg)、特別な自覚症状なし、丹参60gまで増量し継続原方。

後に、視物模糊が出現、まだ血瘀阻絡、水不涵木であり、故に川牛膝30gを加え、連続服用10剤、視力は正常に回復した。

その後、再度右腎の下垂感を伴う疼痛が出現し、原方から黄柏 双花を去り、杜仲30gを加え補腎とし、猪苓10gを利湿、牡蠣30gを散結目的に加えた。継続服用20剤後に鼈甲30g軟堅散結、黄耆60g益気、補骨脂30g補腎を加味した。

611日超音波検査;双腎は以前より縮小、すでに自覚症状無く、714日退院となった。中薬を服用すること200余剤、再検査で腎機能指標は正常、半年後再発無し。

評析

中医学の多発性嚢胞腎に対する認識は、その成因は常に天稟賦不足、腎気衰微として、病機は多くは血瘀湿阻とする。治療に当たっては、化瘀利湿を主体にして、補腎益気を補佐とする。本案では、謝氏は丹参、当帰で養血活血、桃仁、紅花、焦山楂、益母草で活血化瘀、茯苓、薏苡仁で淡滲利湿、黄柏、双花で清熱解毒燥湿、海金沙で利水痛淋、清熱消腫、石决明で平肝潜陽、大腹皮で行気化滞、利水消腫、黄耆で益気消腫、補骨脂を加えて益腎、牡蠣、鼈甲で軟堅散結、猪苓は利湿に働く。全方は湿を去り瘀を散じ、気機を通暢し、腎気を充足させ、諸症が除かれるのである。

ドクター康仁の印象

最初の腎結石と診断された時点で、患者は46歳であり、既に多発性嚢胞腎は発症していたものと推定されます。「下垂感」がキイワードで、その時点で腎の腫大があったのでしょう。

評析の「天稟賦不足」とは、現代医学的に言えば「遺伝的欠陥」となるでしょう。

評析には、医案に記載の無い「石决明」について言及していますが、原稿を書く際に、見落としていたのでしょうね。

経時的に医案を書き連ねたのは理解でしますが、医案中「視物模糊が出現、まだ血瘀阻絡、水不涵木であり、故に川牛膝30gを加え」に関しては違和感があります。腎陰を補うことが肝陰を保つことになるというのが「水涵木」の伝統的な五行学説ですから、補腎陰の作用が明らかでなく、活血作用の目立つ川牛膝を加えた説明としては「血瘀阻絡があると水涵木も阻害されるので、(補肝腎)活血作用のある川牛膝を加えた」とすれば、ややすっきりした説明になるでしょうね。

やはり駄目ですか?

無理に「水涵木」を引っ張ってくるから、自縄自縛の罠に嵌ります。

益母草60g 丹参60gと大量ですね、活血利水がメインですね、後に黄耆は30gから60gに増加され、杜仲や補骨脂が加味されているという全体の流れに着目して、評析を述べて欲しかったですね。

本来は、評析は謝氏自身がお書きになられた方がいいのですが、多忙を極めると、弟子にまかせっきりになってしまいます。出版社から医案を要請された際には、一定のレベルに達した弟子に作成させるべきですね。評析にしてはお粗末でした。

益母草と牛膝に関しては以前の「要薬考」をご参照ください。

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20121105

猛暑が続いています。熱中症にご注意ください。

暑中お見舞い申し上げます。

昨夜遅く、冷凍のイカを焼いて、酒のアテにして寝入ったのが1時過ぎ、やけに暑いなと感じたものの、「夏はこんなものだろう」と左脳が優位でした。生ゴミを捨てに早朝に起きたものの、まだ暑い、涼しい外気に当たって部屋に戻ると暖房状態。ガスレンジのサーモスタットが故障していたのです。

幸いにも熱中症にならなかったので、ブログ更新となりました。左脳が右脳を支配していたわけですね。

2013726日(金) 記