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ネフローゼ症候群の漢方治療 医案36(小児ネフローゼ症候群) 腎炎、腎不全の漢方治療164報

2013-07-04 00:15:00 | ネフローゼ症候群 漢方治療症例の実際(医

李少川氏医案 脾湿困 湿邪化熱案(中華名医名方薪伝より)

1923年7月生まれ 天津中医薬大学 小児病学教授

患者:王某 13歳 女児

初診年月日1984520

病歴

1984415日感冒低熱咽痛があり、続いて顔面と全身に浮腫が出現。420日“急性腎炎”“小児ネフローゼ症候群”と診断される。某病院でプレドニゾン10mg毎日3回処方、尿蛋白は3+から1+へ下降したが、持続的に減少せず、常に嘔吐あり、顔面、下肢にまだ浮腫が残った。

初診時所見

患者面色蒼白、舌苔白膩、脈象やや滑。プレドニゾンを漸減して停止するように伝え、小児腎病合剤を与えた。

嫩蘇梗9g 制厚朴10g 広陳皮6g 炒白朮6g 肥知母9g 雲南茯苓9g 抽葫芦(清書により平~涼と性が異なる。瓢箪の果実 利水消腫に作用する)10g 炒枳殻9g 麦門冬9g 猪苓5g 澤瀉10g 甘草6g)の加減治療

コメント:タイトルの脾湿困 湿邪化熱案は「湿熱困脾案」ということですが、清熱剤は知母程度であり、湿熱の熱に対する生薬が非常に少ないですね。評析に期待しましょう。

経過

服用10剤後、浮腫消失、食欲転佳、尿蛋白微量、

前方に藿香10g 佩蘭10gを加味、更に7剤、検査3回、尿蛋白(-)、完治する。

評析

小児腎病合剤は李氏の経験方であり、健脾化湿、調整脾胃の効能を持つ。その方剤の主旨は“開鬼門(カイグイメン)”、“??(ジエジンフー)”、”去菀陳莝qu wanchen cuoによって水腫を治療するものである。多くは内経の古訓の加減に従うもので、源は一つである。

開鬼門(カイグイメン)とは即ち発汗のことであり、方中の蘇梗は腠理を開き発汗させるが、麻黄や桂枝とは異なり燥に過ぎず妥当である。

??(ジエジンフー)とは即ち利尿を意味する。方中の抽葫芦、澤瀉は皆、甘淡利湿の効能があり、山梔子や木通の苦燥傷陰に比較して佳である。

去菀陳莝qu wanchen cuoとは即ち腸胃の鬱を浄することを意味する。脾胃をして正常な受納と腐熟を維持させ、慢性の漬水を経脈に帰らせる。方中の厚朴、陳皮、白朮、枳殻は辛香苦燥の性質にて、脾胃の昇降の枢機を調達させる。知母、麦門冬を加えるは、一つには白朮の燥を予防し、二つには胃陰を保つことにある。動物実験では、この方は血漿蛋白を増加させ、尿蛋白を低下させ、総コレステロールの低下等に一定の効果がある。

小児のネフローゼ症候群は中医の“水腫”の範疇に属する。その病機は肺の粛降、腎の開閉温煦と関連し、小児の特徴は “脾常不足”、故に主要な病因は、脾気不足、中焦湿困、運化失司になる。したがって、脾胃の健運を促し臓腑の昇降気化作用を保ち、陰陽を調和させ、体質を増強させ、続発性の感染を防止することなどが、小児の腎病の治療の中心となる。

小児腎病の困脾受湿が病となり、時邪を感受するか、或いは湿邪が蘊久化熱することもさまざまな病情の発現となるので、治療に当たっては、“胶柱鼓瑟,刻舟求剣”の如く決まりきったものであってはならない。

健脾化湿の原則性を掌握し、陰陽表裏、寒熱虚実、弁証を正確にすれば誤治に至らない。

加減運用:本方は脾虚湿困、三焦気化失司の小児腎水腫を治療する。

若し、風熱を感受し、発熱、咳嗽、咽痛滋膩は、方中から蘇梗、白朮を去り、薄荷、荊芥穂、連翹、金銀花を加え、風寒を感受し、畏寒、身熱、肢冷の者には、羌活、防風、蘇葉を加えるのも可能であり、正気偏虚で邪を感受した場合には、太子参、葛根、柴胡を加え人参敗毒散の方意を参考にして、扶正祛邪する。

病が長期化し気陰両虚、或いはステロイドを長期服用して、顔面の赤みなど、陰虚陽亢の際には、白朮、猪苓を去り、知母、麦門冬或いは生地などの甘潤滋陰を重用する。

小児のネフローゼ症候群は水腫に至り、病情は複雑で難治性であり、湿性は黏膩であり、速攻回復は難しい。故にこの方を用いる時には、暫くの間は安易に変更せずに方を守れば、予期する効果に至るであろう。

ドクター康仁の印象

サイエンスというよりも文芸に近い内容ですね。評析者が認めるように、黄帝内経(前漢時代に編纂)から一歩も進んでないような評析でした。僅かに近代を匂わせる単語はステロイドだけです。ネフローゼ症候群も水腫論で留まっています。

100人の老中医がいれば、100以上の経験方があるわけです。しかし、中医学の大本(おおもと)が似たり寄ったりの基礎理論と経験方の後付(あとづけ)関連解釈では、サイエンスとしての突破(ブレイクスルー)は生れにくい分野ですね。

成功談ばかりで、失敗談を目にしない理由は何処にあるのでしょう。

何かを学ぶためには、自ら味わうより、良い方法はないと中医学を味わっているのですが、自慢話ばかりを聞かされている感じがしてしまい、どこぞに「変人狂人」のような「異説論者」がいないものかと思うのです。

僅か17剤(3週間以内)で難治性である本案の小児ネフローゼ症候群は完治したのであるとは、自慢話に近いですね。簡単に治るものなら難治性ではないはずでしょう?

                                                   

皆さんはどのように感じますか?

2013年7月04日(木) 記