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糖尿病性腎症の漢方治療 医案4 腎病漢方治療 172報

2013-07-13 00:15:00 | ブログ

張琪氏医案 脾腎欠虚 湿阻血瘀案(糖尿病性腎不全症例)

(中華名医名方薪伝より)

患者?某 62歳 女性

初診年月日19934

病歴

患者は1985年健康診断で糖尿病と診断され、食事療法と経口糖尿病薬を開始した。血糖値は7.012.0mmol/L126216m/dL)であった。1990年脳梗塞にて現地の人民病院に入院、治療にて症状は好転したが右側の肢体活動不利が残った。但し、生活は自理であった。199212月双下肢に軽度の浮腫が生じ、尿中に蛋白が出現した。断続的に中西薬治療を受けていたが、水腫が漸増した。

初診時所見

双下肢水腫、腰酸困乏力、舌質暗、苔白、脈沈、血圧160/95mmHg、血糖14.7mmol/L264.6m/dL)、尿検査で尿糖(2+)、尿蛋白(2+)インスリン及び降糖薬を与え、中薬では益腎化瘀 利水消腫を治法とした。

処方

熟附子6g 淫羊藿(=仙霊脾)30g 山薬30g 白朮15g 黄耆40g 丹参30g 川芎20g 赤芍15g 益母草30g 生地15g 山茱萸20g 枸杞子20g 芡実30g 大腹皮10g 猪苓10g 珍珠母30g 水煎服用 水蛭粉1日一回2g冲服(煎じ薬と一緒に服用する)

経過

10剤後、水腫は減軽、上方加減服用40剤後、血圧135/90mmHg、血糖7.1mmol/L127.8m/dL)、BUN7.4mmol/L44.4m/dL)、Cre 201μmol/L2.27m/dL)。尿ルーチン検査で尿糖(-)蛋白(1+)。

評析

糖尿病性腎症は本虚標実、虚実挟雑証である。本虚は気陰両虚であり、ゆっくりと陽虚に至る。瘀血 裏熱 水湿 濁毒等を標実とする。その中でも、瘀血内阻が本病の病機として重要である。ゆえに、本案の治療の温補脾腎の基礎の上に、活血化瘀の薬物である水蛭(ヒル 抗凝固剤のヘパリン類似物質を含む)、丹参、赤芍、川芎を重用する。現代の薬理研究では、活血化瘀薬は微小循環を改善し、血小板凝集を抑制し、血中脂質を降下させ、血液の粘度も低下させる作用があるとされ、腎糸球体硬化を減軽し、蛋白尿を減少させ、腎機能障害の進行を遅らせるか或いは腎機能を改善する効果がある。

ドクター康仁の印象

治療結果はまずまずで腎不全状態の急激な悪化は避けられたようです。

この医案に感じることは、中医案にありがちな、誇大表現が無いということです。

張琪氏の人柄も感じさせられます。中医治療の結果のみを淡々と述べ、作為がありません。信頼できる医案です。

糖尿病の脳梗塞発症頻度は無症候性脳梗塞も含めれば予想以上に多いものです。私は田七人参や丹参を予防的に使用しています。

近畿では梅雨が明けました。蒸し暑さからは解放されるでしょうが、酷暑の真夏日が続くことになります。

読者の皆様も熱中症にご注意ください。

暑中お見舞い申し上げます。

2013713日(土) 記