ノイズキラー・ダニエル

2008-12-02 01:22:26 | Dano Column
どういうかたちにせよ、音に携わるとノイズとの戦いを余儀なくされる。
とはいえ、ノイズとそうでないものとの境目ってそんなに明確じゃない。「雑音の芸術」で未来派の音楽を主張したルイジ・ルッソロなんかは音楽の歴史を雑音を取り込んでいく歴史ととらえている。なので、彼の時代は都市が生み出す騒音をいかに音楽にするかというのが問題で、彼は工場が出す音や自動車の音、街の雑踏などがシンフォニックに響きあうさまを夢想したり、イントナルモーリというノイズを発生させる機械をつくってみたりもしたわけで、音楽家たるもの、ノイズを取り入れることで音楽を革新していかねばならぬのだってところ。

アカデミックな音楽だと、教則本に則った奏法で生み出されたものが楽音でそれ以外はノイズとして排除していくという感じなのかな。だがしかし、マーラーみたいに、楽団員に無理な演奏を強いることで、新しい響きを生み、それが音楽を新しくするということもあるわけだからねえ。
ポピュラー・ミュージックの領域では、ロックが典型的だけれども、ノイズを排除するどころか、大音量を出したりアンプを歪ませたりして、ノイズと手を携えちゃう。でも、ロックといえども、許容できるノイズとそうでないノイズはあって、ピックアップやアンプが外部からの影響を受けて出すノイズは未だに嫌われている。

ネイサン・ダニエルはノイズ・キラーだった。彼がつくったアンプはクリアでノイズが少ないということで高い評価を得たのだし、ヴィンテージのダンエレクトロのギターにはTOTALLY SHIELDEDというステッカーが貼られていたことからもわかるように、外部からの影響によるノイズを防いでいるというのが売りでもあった。それは電装部分を銅箔で包むという方法でシールドされていた。安いギターでもそういうところはきちんとやっているのがダンエレクトロだったりする。

ネイサン・ダニエルのノイズ・キラーぶりを示すエピソードとしては、次のようなものがある。第二次大戦中、ジープとかバイクとかで走行中に通信のやりとりをするときに、エンジンなどからノイズを拾ってしまい、音声が聞き取れなくて困る、という問題があった。その問題を見事に解決したのが、陸軍の通信部隊で働いていたネイサンであった、という。
どういうやり方をしたのか具体的なことはわからなかったけれど、ギターと同様、銅箔で包むみたいな感じのわりと単純で、そんなに費用もかからない方法だっただろうと思われる。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« コストカッター・ダニエル | トップ | Outside the Box »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Dano Column」カテゴリの最新記事