小説家、精神科医、空手家、浅野浩二のブログ

小説家、精神科医、空手家の浅野浩二が小説、医療、病気、文学論、日常の雑感について書きます。

太宰治論2

2010-06-20 00:44:09 | Weblog
太宰治は、弱い、戦わない、というが、はたしてそうだろうか。死ぬ直前、太宰は、文壇の大家である志賀直哉を徹底的に批判している。志賀直哉批判は、作家にとって自殺行為に等しかった。現代でも、作家同士は、たとえ嫌っていても、お互いを激しく批判するということはしていない。だろう。文学の世界においては、真剣勝負の戦いはない。お互い、無難な事を言い合って、争い、戦いを避け、うわべの八方美人を演じている。その中で太宰だけは死を覚悟して戦った。自殺行為とわかっていても命がけで戦った。

太宰は情緒不安定な所があり、激しく本心をぶちまける時もあれば、非常に弱気になる時もあった。太宰を批判する人は、太宰が(ほとんどの時は)弱いから、批判しても、怖くはないから、少なくとも、自分に不利益はもたらさないから、いじめやすい相手であり、つまりは弱い者いじめをして、自分が信念を持った人間であるかのように、自己満足、自己アピールして、いい気分になっているだけである。

本当の戦いとは、自分に都合の悪い相手、戦うと自分が不利益になる相手。自分より強い相手に対して戦うことである。格闘の世界でも、一見、強い者同士の戦いのように見えても、いかに弱い者いじめしか無いことか。本当に強いヤツがいかに少ないことか。
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