夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

二人三脚

2013-12-17 23:43:50 | 日記
担任する生徒たちの受験指導はまだまだ先が長く、当面は来月半ばに迫ったセンター試験に向けて、対策補習の日々が続く。

まだ成功体験を振り返るような時期ではないが、ただ、このところ今までの推薦入試の結果を見ながら、思うことがあり、記事を書くことにした。

私は今の生徒たちに、2年次から常々、「国公立大学の推薦入試は、受験生と担任の二人三脚になるから、もし受けたいと希望するなら、そのことをよく理解しておいてくれ。」と言っていた。
運動会での定番の種目、二人三脚は、二人の息が合わなければ前に進まず、倒れてしまう。
国公立大学の推薦入試は、受験生・担任共に負担が大きいため、相互理解や合格に向けての意志統一ができていないと、高い確率で失敗する。

そんな中、先日ある国立大学に合格した生徒は、本人の意志と努力に、担任の私がうまく合わせることができて、志望大学への橋渡しに成功した例だった。

その生徒は、2年生の頃からその大学に行きたいと言っており、3年生になっても進学の意志は変わらなかったので、6月の3者懇談で、その大学を推薦入試で受験することを勧め、夏のオープンキャンパスに参加するようにと伝えた。
その大学の推薦入試は書類審査と面接・小論文があり、センター試験・二次試験対策と並行して、それらへの対策も行わなければならない。
そのため、8月から志望理由書のもとになる原稿を書き始め、小論文の練習も過去問を入手して少しずつ行った。志望理由書は、10月の初めには一応できあがっていたが、その生徒は、
「まだ自分の目で確かめて、理解できていない部分があるから。」
と言って、その大学が行っているプロジェクトを実際に見に行き、自分で納得のいくものに仕上げた。

11月の初めに願書を郵送してからは、小論文・面接対策が本格的に始まった。
普段から毎日夜8時まで学校に残って勉強していく生徒だったが、この時期は休日も学校に特出で練習していた。
私の小論文対策は厳しいが、目の前で自分の答案が真っ赤になるまで添削され、欠点と修正点を指示されても、決して腐らず、合格答案になるまで2度、3度と小論文を書き直してきた。
面接対策も、面接委員の質問に的確に答え、練習後のフリートークで出た改善箇所の指摘にも素直に耳を傾け、次の回までには修正してきた。

推薦入試前日。
この日も夜8時まで残って面接・小論文対策をしていった生徒に言った。
「正直、明日はどんな問題が出るか、どんな質問がくるかは分からん。どんな受験生が受けに来るのかも分からん。でも、お前が誰よりも早い時期から、やれるだけのことをやってきたことは、オレは知ってる。面接対策も、小論文の練習も、明日受けにくる受験生の中で、きっとお前が一番だ。練習量だけは絶対誰にも負けてないから、自信を持って受けてこい。」

この生徒に対しては私自身も、してやれることは全てやったという感触があったので、おそらく受かるだろう、ただ勝負は何があるかわからないからな、でも落としたりしたら許さんぞ、と思っていたが、結局ちゃんと合格していた。大学がどんな学生を求めているかを知り、自分の資質と経験・経歴を掘り下げて志望理由と自己アピールを構築し、当日の面接試験に必要な対策をしっかり行って本番に臨めば、面接官には伝わるものだ。

ちなみに、合格から日が経った今でも、その生徒は毎日夜8時まで学校に残って、センター試験の勉強をしている。合格はさせてもらったけれど、学力はまだ不足していることを自覚しているからだそうだ。また、その生徒は、自分の推薦入試が終わった後も、面接委員の中核メンバーとして、他の生徒の面接対策練習を積極的に手伝ってくれた。
こうした生徒に恵まれたことは、担任として幸運と言わざるを得ない。