朝比奈さんの著書

2014-11-22 17:42:33 | Weblog
かつての名指揮者、朝比奈さんの古い著書を読んだ。京大から阪急電鉄社員出身の異色指揮者であった。移住した満州での苦労話が書かれていて、生命の危険にさらされていたこともあったようだ。とくに驚いたのは、数十年間の研究の成果であるスコアの書き込みを消している場面。音楽家にとって、様々なアイデアが書き込まれた楽譜ほど大切なものはない。決して人には見せたくないものだろう。それを惜しみなく消して消して、消しまくる。残ったのは丸裸になった原典の活字のみ。過去に獲得したものを一度リセットして、真っ白な状態から再び作品に取り組む。自分にもそんなことができる日がいつか来るだろうか。ずっと以前、亡き恩師がベートーベンの作品111を再度勉強しているとおっしゃったとき、今までの全てをかなぐり捨てて、真っ白な気持ちで勉強するんだ、とおっしゃっていたのを思い出す。

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