弓と禅

2019-08-30 22:01:42 | Weblog
オイゲン・ヘリゲルの古典的名著「弓と禅」を久しぶりに読んだ。ドイツ人のヘリゲルは、大正時代に来日し、東北帝大で教える傍ら、弓道の達人・阿波研造氏に弟子入りし、弓道を本格的に習う。その学習過程が詳細に記されている。日本の伝統的な師弟関係。説明によって教え込むやり方ではなく、模範とヒントを示し、時間をかけて自力で獲得させていく指導法。現代の教え方とは真逆なやり方である。「的にあてよう」という考え方を完全に捨て去り、無心に的に向かう。すると「それ」が射る、という境地に到達するらしい。「正しい射」とは、そういうもののようだ。ところで「それ」とはいったいどんなことを指すのか?その解釈がまた、とてつもなく難しい。実は、この本はピアノの巨匠・クラウディオ・アラウ氏の愛読書でもあった。アラウはこの書物からいったい何を獲得したのだろう?アラウのピアノは、いつも神に向かっての「祈り」のように思えた。アラウはリハーサルなしに本番のピアノに向かったらしい。「それ」を常に現出させることができる名手には、リハーサ
ルなど必要ないのだろう!

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