LE REGARD D'ALAIN DELON

アラン・ドロンさんの魅力を探ります。

NOTRE HISTOIRE 真夜中のミラージュ

2012-03-10 | THE 80'S CINEMA
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この企画には誰もが驚かされた。
アランドロン、男らしいフランスの英雄の紋章 を持つ彼はこれまでの因習を打破するために、
ベルトラン・ブリエ監督に白紙の委任状を与えたのだ。
これは興奮の旅になりそうである。
さらに大胆な女優ナタリー・バイが彼からのチケットを受け取ったのだ。

アラン・ドロンは拳銃を手にした数々の映画作品において一般大衆から高く評価された勝利者である。
一方のベルトラン・ブリエ監督は『バルスーズ』を皮切りに、『Buffet Froid(料理は冷たくして)』、
『Beau Père(義父)』や『ハンカチのご用意を』のような少し生意気で挑発的、破壊的な作品を発表し続けている作家であった。

予期せざる出会い

お互いに先験的であったため、出会う運命にはなかったはずであったフランス映画界の2つの巨大な山、
アランドロンとベルトラン・ブリエ監督が一緒に映画を撮る!
このニュースを聞いた時、初めは何かの冗談ではないかと思った、とプレミア誌は書いている。

彼ら二人は、1983年の時点で互いに知り合いではいたが、アラン•ドロンは刑事役ばかり演じることから脱却しようとしており、そのリスクを取ることに躊躇はなかった。
フォルカーシュレンドルフ監督作品『スワンの恋』で同性愛者のシャリュルス男爵を演じたことは決して軽率な判断からではなかった。
このドイツ人の監督との間で見解の相違が生じたり、興行成績が惨敗し、"ろくでもない代物"と批判されようと、彼はうんざりしていなかった。

"初めて彼に会いに行ったとき、「これから一緒に映画を作りましょう。」と挨拶程度の話しをするだけだと思っていて、
まだ何も具体的に彼に提案できるような企画は準備していなかったんだ。"とベルトラン・ブリエ監督は言う。
“だが会った途端一気に彼は私に尋ねてきたんだ。
「あなたのスケジュールはどうなっていますか?」とね。
私は自分の日程を彼に伝えて「あなたのスケジュールは空いていますか?」と尋ね返したんだ。
すると彼は自分の日程をくわしく説明した。
で、私は「それならOK」と言い、その場ですぐに映画製作の契約を結んだんだ。
何と常識はずれな契約だろう。
しかもその時にドロンから出された出演条件はたったひとつだけだった。
共演女優にナタリー・バイかイザベル・アジャーニをキャスティングすること。
それで私はすぐにナタリー・バイに連絡を取った。
そのとき彼女はフリーで、すぐさま契約してくれたんだ。
まだ何も映画のテーマが決まっていないにも関わらず、ただアラン・ドロンと共演するということを聞いただけでだよ。“

ナタリー・バイは告白する。

"私は自分の役がどんな人物かを知る前にこの仕事を引き受けました。
ベルトラン・ブリエ監督と一緒に仕事ができるまたとない機会だと思ったので彼を信頼したのです。
ジャン・リュック・ゴダール監督の『ゴダールの探偵』に出演した時も私は本能的に決断しました。"

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L'initiative, au départ, épate et intrigue:
Alain Delon, l'emblème du héros viril français, qui donne carte blanche à l'iconoclaste et grinçant Bertrand Blier pour le bousculer.
Le voyage promet d'être agité.
Téméraire, Nathalie Baye prend son ticket.

AIain Delon est la figure même du vengeur marmoréen, revolver au poing, qui triomphe dans des productions carrées, plébiscitées par le grand public.
Bertrand Blier, quant â lui, est l'incarnation d'un cinéma culotté, dérangeant, provocateur dont la formule a été inaugurêe par Les Valseuses puis éprouvée avec des films comme Buffet Froid, Beau Père ou Préparez vos mouchoirs.

UNE RENCONTRE INATTENDUE

A priori, donc, ces deux montagnes du septième art français sont vouées à ne jamais se rencontrer.
"Alain Delon va tourner dans le prochain film de Bertrand Blier! La nouvelle ressemblait à un gag" écrit même Première .

C'est oublier que lorsque les deux hommes font connaissance, courant 1983, Alain Delon semble désireux de sortir du carcan policier et enclin à mettre sa réputation en danger.
Ne vient-il pas de camper l'homosexuel baron Charlus dans l'adaptation de Un amour de Swann que Volker Schlôndorff a témérairement entrepris?
Les dissensions avec le réalisateur allemand et la déception quant au résultat final - qualifié de " truc bâtard “ n'ont pas dégoûté la star des itinéraires bis du box-office.

" Quand je l'ai rencontré pour la première fois, c'était pour discuter du principe de faire un film ensemble.
Je n'avais aucun sujet à lui proposer” raconte Bertrand Blier.
"D'emblée, il m'a demandé "quelles sont vos dates ?".
Je lui ai répliqué "quand êtes vous libre ?".
Il a fourni la précision. j'ai dit ok et nous avons signé un contrat.
Un contrat de fou qui a débouché sur un film fou.
La seule exigence de Delon était que sa partenaire soit Nathalie Baye ou Isabelle Adjani.
J'ai contacté la première, elle était lîbre à la date prévue, elle a signé aussitôt.
Sans connaitre le sujet (forcément. il n'existait pas encore !) sur la seule perspective de tourner avec Delon ".

Nathalie Baye confinne:
"J'ai accepté le rôle avant même d'avoir lu le scénario définitif car lorsqu'on a la chance de tourner avec Blier on lui fait confiance les yeux fermés.
Comme avec Jean-Luc Godard que je vais retrouver pour Détective. Moi, je fonctionne à l'instinct “.

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アラン・ドロンさんが1984年に主演した日本未公開作『真夜中のミラージュ』について仏盤DVDのライナーノーツから一部抜粋しました。

前々から監督のベルトラン・ブリエを評価していたドロンさんが彼と出演契約を結んだ経緯がドラマチックですね。

自動車販売会社をパリで経営する主人公ロベール・アブランシュ、
彼は妻との悪化した関係を精算すべく全財産をスイスの銀行から引き出した帰りの列車の車中で
突然現れたひとりの見知らぬ女性ドナシエンヌと一度きりの約束で関係を持つことになる。
その彼女の魅力に虜になってしまったロベールは彼女を追いかけて途中下車、
彼女の家に居座り続け、周りの人間を巻き込んだ騒動に発展していく。
そんなロベールに嫌気が差して家を出て行ったドナシエンヌの行方を追いかけ
雪の降りしきる田舎の村の学校にたどり着いたロベールはそこで教師をしている新たなドナシエンヌに遭遇する。
天使のようなドナシエンヌに癒されてすべての悩み事から開放されたかに思えたロベールだったが...

あらすじを書きますとこんな感じですが、
映像表現を駆使して物語を語るといった映画の持つ表現力はこの作品ではあまり重視されておらず、
登場人物たちが次から次に繰り出す台詞の洪水の中から物語が浮き上がってくる作品で、
この映画の原題"NOTRE HISTOIRE"(=私たちの物語)というのは、まさにその「語り」が重要なファクターであることを暗示しています。
そういう意味では日本の古典落語のような作品と私は感じています。
ただし必ず最後にオチを付けて笑いをとる上方落語ではなく、オチのない江戸落語の人情噺しに近いものでしょうか。
したがって字幕なしでは当然わけがわからない作品ですが、字幕を読んでいても進行を追いかけるのに精一杯といったことになります。

日本ではビデオ発売しかされておらず、CSなどでも放映される機会は皆無の作品ですが、いずれ日本でもDVD化されることを強く期待する作品のひとつです。
Comments (2)
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