陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

トヨタが67年ぶりに営業赤字1500億円の見込み(来年3月期)

2008-12-23 21:34:46 | 財政・経済問題
 円高差損と販売不況(販売台数減少)のため、トヨタ自動車が1941年以来始めての赤字決算になるらしい。トヨタは、1円円高になると400億円の損失が出ると言うから、今年9月以降15円位円高になっているので、それだけで6000億円強の損失だ。

 今年11月6日に、トヨタは来年3月期の決算予想を営業利益1兆6000億円から引き下げて6000億円とした。それを今回更に修正して、ー1500億円としたわけだ。場合によっては、年明けにもう一段の下方修正が発表されるかも知れぬ。だが、トヨタは内部留保が10兆円以上あると言われるから、ここ2-3年間自動車の販売量が減少しても、破綻することはあるまい。

 自動車関連企業は、スズキ、ダイハツを含めて、例外無く派遣社員のカット、操業の臨時停止に追い込まれている。1月からは、トヨタの国内工場も操業を停止する。それは、タイヤメーカーと板ガラスメーカーにも影響して来るし、ブレーキ、変速機、電装品などに波及する。「親亀こけたら・・・」の感じがしないでもない。

 米国ビッグスリーは、もっと悲惨である。クルーグマン教授(2008年ノーベル経済学賞)は、12月7日に「米国自動車産業は消滅する可能性がある」と言っている位だ。だが、米国がリセッションに陥っても、最小限の自動車需要は求められるはずで、それは米国に生産拠点を持つ日本車や欧州車で賄うと言うのだろうか。

 毎年のように部分改良した新車が発表され、ユーザーは4-5年ごとにそれを購入するスタイルが定着している。今の車は、エンジン燃焼動作やブレーキ操作にもコンピューターが用いられているので、それの耐久期間を考えると新車交換時期は早くなっているのかも知れない。だが、この4-5年で新車へ交換というスタイルは、資源有効利用の観点から考えても、変わらざるを得ないだろう。

 日本国内だけでも、トヨタ、日産、三菱、ホンダ、マツダ、富士重工、スズキ、ダイハツなどのメーカーがあり、それにバス・トラックのメーカーがひしめいている。これらのメーカーは、いずれ再編されて企業数は減らざるを得ない。その再編では、経済産業省の介添えが必要になるはずだ。経産省は、その覚悟があるだろうか。

 日本を含めて、自動車産業の大再編が行われると予測はしても、ではどのような形が良いかと言えば、まだ具体像は見えないようだ。日本のエレクトロニクス産業も、自動車産業と類似した状況に追い込まれつつあるが、こちらも大再編はあるのかどうか。パナソニックによる三洋電機の買収は、その走りのようにも見える。

トヨタ、1500億円営業赤字に
2008.12.22 20:35

 トヨタ自動車は22日、平成21年3月期の連結業績予想(米国会計基準)を下方修正し、本業のもうけを示す営業損益が従来予想の6000億円の黒字から、1500億円の赤字に転落する、と発表した。トヨタが営業段階で赤字となるのは決算数値の公表を始めた昭和16年3月期以来、初めて。同時に世界各地での追加減産計画も公表。今期の減産台数は100万台を超える見通しになった。

 売上高は23兆円から21兆5000億円、最終利益は5500億円から500億円にそれぞれ減額。米国発の金融危機に端を発した世界的な自動車販売の低迷と急激な円高進行が経営を直撃。営業利益予想を1兆円も引き下げ、「トヨタショック」と呼ばれた11月6日の下方修正からわずか1カ月半で大幅な再下方修正に追い込まれるという異例の事態となった。

 同日、同社名古屋オフィス(名古屋市中村区)で会見した渡辺捷昭(かつあき)社長は「世界は激変している。(トヨタを)取り巻く環境は厳しく、かつてない緊急事態に直面している」と苦渋の表情で語った。

 同社は11月に緊急収益改善委員会を発足させ、今年度は約1300億円に上る収益改善の上積みが見込まれる。しかし日を追って自動車販売が悪化しているため販売減により5700億円、為替差損で2000億円と11月以降、計7500億円のマイナス要因が追加。当初6000億円としていた営業利益見通しは一転、1500億円の営業損失に転落する。

 配当については「現時点で(年間配当の減配)は決めかねている」(渡辺社長)と明言を避けた。

 また、新たな減産計画も公表。来年1月以降は、世界各地の工場にある計75の全ラインのうち日本国内をはじめ、米国、ロシア、英国など16ラインで従来の昼夜2交代制から昼間のみの稼働にする。トヨタはすでに今期中に95万台減産することを打ち出しているため、今回の追加で、総減産台数は100万台を超える見通しだ。

 通期業績の下方修正とともに、今年(1~12月)のグループを含めた世界販売・生産実績見通しを発表。販売は前年比4%減の896万台、生産は同3%減の923万台と、10年ぶりに前年を下回る見込みだ。来年については「先行きが不透明」(渡辺社長)と語り、発表を見送った。

http://sankei.jp.msn.com/economy/business/081222/biz0812221614007-n1.htm
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1 コメント

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百年に一度の世界大恐慌! (悠遊子)
2008-12-27 19:46:05

2008.12.27 トヨタの赤字決算(茶絽主氏のブログに応えて)

 サブプライムローン破綻に端を発した金融危機・経済危機が日本の実体経済、なかんずく世界最優良企業のトヨタを直撃するとは恐ろしいことです。今回の派遣社員・大量解雇による雇用危機では「あのトヨタですら・・・」と各企業に格好のエクスキュースを与えたようです。トヨタに責任があるのか、便乗する側の責任が重いのか判断に迷います。大企業経営(者?)のモラル低下(アメリカ化)も目に余るものがあるように思います。

 それにしても、金融破綻の荒波がこれ程急速に実体経済に襲い掛かるとは、全くの想定外です。つい先頃(洞爺湖サミット?福田首相政権投げ出しの頃?)まで、空前の好況を誇っていたはずの製造業各社は一体何をしていたのでしょう! 国際競争力を高めるためと称して、生産拠点を人件費の安い国外に移転したり、派遣社員を大量に雇い入れて人件費を削減して、株主配当や内部留保を増やして、危機に備えていたはずですが・・・? ほんの20年前までは、企業防衛の最後手段であったはずの従業員解雇が危機回避の最初の手段になるとは・・・!我国伝統の「社員は家族」とした企業精神もグローバリゼーション(実体はアメリカ化)を口実に随分変容したものだと感じて仕舞います。

 私は“障子をあけてみよ 外は広い”と題された「トヨタの基本理念(1992.1.1発表)」を纏めた小冊子(1993年初版)を読んだことがあります。この冊子の最後の頁に豊田佐吉翁の遺訓を纏めた「豊田綱領(1935年)」が掲載されていますが、「トヨタの基本理念」も「綱領の精神」から些か乖離を始めたのではと懸念しております。これもグローバリゼーションの流れによるのでしょうか、それとも現代の風潮でしょうか?そういえば、世間には「パナソニック電工」などといった意味不明の社名変更もあるようですが・・・ 
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