陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

日本の原発運営体制への疑問

2011-04-07 19:12:47 | Weblog
 従来から、私は我が国の原子力発電推進に、ある程度の理解を持っていた。資源の無い我が国としては、エネルギー供給の一部分を原子力に頼るのは止むを得ないとの考えだ。他の技術分野で、日本の技術展開が国際的に高く評価されるのと同様、我が国の原子力利用技術も、優れた知性が関与して世界レベルを維持しているとばかり考えていたのだ。だが、この分野の安全管理技術面では、些か足りない部分があることが露呈された。

 原子力の応用は、他の技術と異なった側面がある。それは、もし事故が起きると面積的に被害は広大に拡散、しかも長い時間後遺症を伴うことである。それ故に、原子力利用の技術担当者は、事故が起きた場合、3重、更には4重のフェイル・セーフシステムが稼動することを考慮していると思っていた。ところが、3・11大震災でそれは私の思い込みに過ぎなかったことを知った。

 過去、何度か原子力エネルギー利用で大事故があり、企業レベルでは技術補填と被災者補償問題に対応出来ないとして、国家が原子力技術に関与するように決めたはずだ。でも、それは見かけだけで、原子力利用にあっても官民癒着、それに悪徳政治が絡むおぞましい事態が進んでいたようである。

 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版によると、


原子力監督機関と電力会社は一心同体
2011年 3月 28日 17:52 JST

 【東京】日本の原子力監督当局は、監督対象の業界に近づきながら権力を増大してきた。この傾向が福島第1原子力発電所の事故を引き起こした過ちにつながった可能性がある。

 世界の標準に反して、経済産業省は原子力業界の監督と国内外での日本の原子力技術の推進という二つの役割を担っている。この二つは相反することも多い。

 この体制は、昨年のメキシコ湾での原油流出事故以前の米国の沖合掘削の監督体制を思い出させる。つまり、同じ機関が業界を監督しつつ、沖合ガス・油田開発を促進していたのだ。事故後にまずオバマ政権がしたことの一つが、この機関の解体だ。

 米国では、原発を監督する原子力規制委員会は、原子力の研究・推進をするエネルギー省から独立した組織だ。フランスはかつて日本と似たような体制だったが、2006年に独立した機関を設置した。

 日本の監督当局がより強い独立性を確保していたら、原発の安全性に関する規則はより厳格であった可能性があり、福島第1原発の危機は回避できた、あるいはこれほど深刻化しなかったとの批判がある。

 経産省は06年に原発の耐震性評価を命じたが、期限は設けなかった。同原発を運転する東京電力が中間報告をしたのは09年。津波については、研究を続けているとしただけだ。

 環境エネルギー政策研究所の飯田哲也氏は「保安院も、電力会社もみんなお仲間なので、いろいろなことをみんな容認してしまう」と述べた。

 07年の中越沖地震では、東電の柏崎刈羽原発が損壊した。日本弁護士連合会は調査を行い、東電による震源断層の評価が誤っており、監督当局がこの間違いを発見できなかったために地震への対策が足らなかったと指摘。「早急に」独立した監督機関を設置すべきだとしていた。民主党は09年に政権を取る直前にこの考えを支持した。

 一方、経産省傘下の原子力安全・保安院の西山英彦審議官は、同省の原発推進部門は監督部門に干渉しないとして現在の体制を擁護。

「保安院と東京電力が癒着していたから今回の事態が起きてしまったということではまったくない。今の事態がそういうことを考えさせる動機にはならない」と語っている。

 経産省はかつて日本経済を広範にわたり監督してきた。しかし近年は、自動車など他産業で規制緩和が進んだためエネルギーや電力に比重が移っている。
 業界を公然と批判する数少ない議員の一人、自民党の河野太郎議員は「経産省は電力会社や無数の外郭団体にどんどん天下りをさせ、政治家は(電力会社)からお金をもらっている。そのかわりに電力会社は地域独占を守ってもらっている」としている。

 昨年夏、資源エネルギー庁前長官の石田徹氏が東電の顧問に就任した。昨年6月まで同社取締役副社長だった白川進氏も経産省出身だ。関西電力や四国電力など、全国の電力会社の上層で同省出身者が幅を利かせている。

 2人が死亡した1999年の茨城県東海村の施設での臨界事故など90年代の一連の事故を受けて、政府は2001年に同省が二つの役割を持つ問題に対処しようとした。これで誕生したのが原子力安全委員会だ。

 しかし、同委には企業を調査したり変更を命じたりする権限はない。業界幹部によると、原子力技術の研究で同委をサポートする団体のスタッフや原子力学者4000人は、福島第1原発の問題ではおおむね傍観者だという。

 06年まで18年にわたり福島県知事を務めた佐藤栄佐久氏は、知事生活終盤で原発反対に転じた。同氏によると、ある出来事をきっかけに経産省を信用しない人から内部告発を受けることが多くなった。東電の安全違反を告発したとされる元作業員の身元を経産省が同社に知らせたことが02年に明らかになったのだという。佐藤氏はインタビューで、「国もそんないい加減な安全管理をしていたということがわかってしまった」と語った。

 原子力安全委員会の副委員長を務めた経験を持つ大阪大学の住田健二教授は次のように語った。「原子力の行政に携わる人たちは、原子力の推進と規制を同時にやろうと頑張ってきたが、その結果は多数の事故やトラブルということになってしまった。いま行政の仕組みを変えずに、原子力ヘの国民の支持を保つことはもはや困難だ」
記者: Yuka Hayashi
http://jp.wsj.com/Japan/node_211377


 地域自治体の首長が住民の安全を幾ら考えても、国家権力がそれを押し潰して行く姿は、何とも凄まじい。福島第一原発の事故収束を心から願うが、企業の儲け論理と政治屋が絡んで生み出したとも思えるこの大事故、まずは、全国の原発安全点検から改善を図って欲しいと願う。
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