陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

ミャンマー・デモ弾圧と中共の存在

2007-09-29 01:29:51 | ビルマ(ミャンマー)関係
 9月27日のミャンマー・デモ鎮圧で、日本人のAPF契約カメラマン長井健司氏(50)が射殺された。何故、彼が射殺されたのかははっきりしないが、狙い撃ちされたとの報道もある。まずは、長井氏のご冥福をお祈りします。

 日本政府は、この事故に関しミャンマー軍政府へ抗議を行ったが、中共の意を窺う福田首相は民衆弾圧を止めさせるために特に具体的な行動を取らないと言明。「国境なき記者団」(RSF)は、日本政府に経済制裁に踏み切るよう強く求めている。一方、米国政府は、経済制裁を更に進め、軍政府要人の米国内資産凍結を行った。

 ミャンマー軍政府は、暴力と銃撃を以てデモ弾圧をし、とりあえず沈静化させたようだが、今度は民主化運動のシンボル、スー・チー女史が行方不明になっている。これは軍政府の隔離によるらしい。

スー・チーさん隔離 ミャンマー軍政、求心力低下狙う
9月28日23時49分配信 産経新聞

 【バンコク=菅沢崇】僧侶を中心としたミャンマーの反政府デモに対し軍政の徹底した弾圧が続く中、民主化運動指導者のアウン・サン・スー・チーさんは、居場所も不明のまま沈黙を余儀なくされている。軍政側にはスー・チーさんを完全に隔離しておくことで、市民らの求心力を失わせるねらいがあるのは間違いない。今後、デモが下火になってもスー・チーさんの封じ込めは一段と強化されそうだ。

 僧侶らがスー・チーさん宅に行進を行ったのは今月22日。スー・チーさんは僧侶の読経に応え、自宅の門扉を開くと、黄色のブラウス姿で合掌。民衆と対面したのは2003年5月以来、約4年半ぶりだった。

 デモが急速に拡大したのはその直後からだ。治安部隊は、デモ隊がスー・チーさん宅に向かうことを阻止。スー・チーさんのインセン刑務所への「移送説」も出て、居場所は特定できなくなった。

 「スー・チーさんが率いる最大野党、国民民主連盟(NLD)の幹部らも相次いで拘束され、組織として機能しておらず、1988年の民主化デモの経験を伝える党員も少なくなった。スー・チーさんとしては、19年ぶりに立ち上がった民衆に何も伝えられないのはじくじたる思いだろう」とミャンマー情勢の専門家はスー・チーさんの胸中を語る。

 軍政は3日連続で反政府デモを武力で弾圧。一時は10万人に膨れあがったデモも、28日の参加者は数千人にとどまった。市民や海外の支援者らはスー・チーさん解放を強く叫び始めたが、もはや活動できないスー・チーさんになすすべはないようにみえる。

 軍政は今月3日、新憲法制定に向けてこれまで、約14年半を費やし審議してきた基本原則を国民会議で採択し、閉幕した。しかし、「民主化の進展」をアピールする軍政が、今回のデモをきっかけに民政移管の危険性を再び訴え、“民主化プロセス”を中止する可能性もある。ヤンゴン消息筋は「軍政がもっとも恐れているのは、スー・チーさんの存在感であり、彼女が発するメッセージだ。スー・チーさんの解放はますます遠くなっている」と指摘している。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070928-00000939-san-int


 1988年の民主化を求めたビルマ大衆運動の時に比べて、国際世論も人権問題に厳しくなっているし、ネット情報は瞬時に世界を駆け巡る。軍事政権がやり過ぎれば、欧米の非難に加えて、国連も厳しい姿勢を打ち出すかもしれない。

 前回のエントリーで、ミャンマー抗議デモの背景について簡潔に記したが、「大紀元」がそれを詳しく解説している。少し長くなるが引用する。

ミャンマー:抗議デモの発端に、反中共の声

 【大紀元日本9月28日】ミャンマー僧侶が主導した抗議デモは拡大しつつ、僧侶と民衆も参加したが、僧侶や日本人カメラマンを含む9人の犠牲者を出す最悪の事態に発展した。外国メディアの分析によると、10数万人の大規模な平和的抗議はミャンマー軍事政権にとってこの10年来の最も劇的な抗議活動であり、民衆がミャンマーの経済が中共(中国共産党政権)の影響を受け、搾取されているのを意識したことの現れであると指摘した。

 UPI通信は、今回の大規模な抗議に経済的要素が指摘した。特に、ミャンマー政府は先月、石油の値段を5倍も上げた。托鉢で生活する僧侶にもこの問題は深刻であり、これまで5、6世帯で僧侶1人の供物を賄えたが、現在は20世帯も必要だからだ。

抗議活動の発端に、反中共の声

 抗議活動の兆しは以前からあった。最初の兆しは今年2月で、中共が国連安全保障理事会でミャンマー軍事政権を制裁する決議案を否決した後のことである。いわゆる「青年僧侶連盟(Young Monks Union)」と名乗る団体はミャンマーのインド国境に近接するアラカン州で宣伝チラシを配り始めた。中共の否決に抗議した上、中国製品を排斥することを求めた。この地域には、豊かな石油と天然ガスがある。

 また、別の抗議チラシには、ミャンマーの石油と天然ガス開発で中共はミャンマーを搾取していると抗議する内容があった。中共は現地の住民を雇わず、中国から労働者を供給し、不満を募らせた地元農民らは、中共所有の天然ガス会社の事務所を攻撃したという。

 ミャンマー・アラカン州の主要都市シットウェ(Sittwe)で、中国雲南省に直通する新しい港が中国資本で建設が進んでいる。この港は将来、海軍基地としても使用できるように開発を進めており、鉄道と道路は勿論、石油輸送管も整えおり、石油と天然ガスを中国に輸送できる。この港は、従来のシンガポール・マラッカ海峡を通らず、石油輸送船はペルシャ湾からシットウェに直航できる。 そのため、この地域は、ミャンマー軍事政権を抗議する焦点なのである。

 シットウェで先週、ミャンマー軍事政権に対する抗議活動があった。現場の警察官は、デモの僧侶に武力弾圧という上層部の命令を拒絶した。最後に軍事政権は軍隊に出して催涙弾を使用して、威嚇発砲してデモ隊を追い払った。

 インドの時事研究センター( Institute For Topical Studies)主任インド政府内閣官吏ラマン氏(B. Raman)は今年8月19日、南部ミャンマーと中部ミャンマー地域では弾圧される学生と僧侶の抗議デモは軍事政権だけに反対しているのではなく、中国共産党にも反対していると指摘した。大量の中国人エンジニアと労働者を駐在させている石油と天然ガス開発地区では、このデモ活動が多くの民衆の支持を獲得している。

 中共はアフリカでも類似する問題に起こしている。中共は、スーダンで多額の石油投資をしたが、スーダンの人権保護に注力せず、国際社会の強烈な反発を引き起こした。中央アフリカ地区の投資は更に広範囲な強烈な反対を招いた。特に、ザンビアで,野党の愛国前線は昨年、ザンビア選挙で、中共に反対する政治綱領を宣言した。

 ミャンマーにおける中共勢力の存在は、更に複雑な事情がある。それは中共がシットウェで開発しているベンガル湾海軍基地である この基地に対してインド側は懸念を抱いている。中共がインド西側のパキスタンで建設したグワダール港(Gwadar )海軍基地と同様に、インド国防の不安材料となっている。

 今度の僧侶、尼僧が参加する抗議の重要性の一つはこのデモが、民主化運動指導者アウン・サン・スー・チー氏との連合に発展したことを挙げられる。ミャンマー軍事政権は、僧侶と市民や学生、アウン・サン・スー・チー氏が団結した抗議活動に直面し、日に日に高める愛国主義と反中国共産党の感情が絡み合い、その上石油価格の高騰によりもたらされた苦しい経済状況で、ミャンマー軍事政権は窮地に追い込まれた。

 ミャンマーは1962年から軍事政権によって支配され、独裁者のネ・ウイン氏が1988年に民主運動で退陣し、軍事政権は1990年に総選挙を行ったが、国民の支持を得たアウン・サン・スー・チー氏に権力を渡すことを拒絶した。過去18年で、同氏が自宅に軟禁されたのは通算で約12年になる。

 かつて東南アジアでは最も豊かな国家ミャンマーは今や、国民の平均年収は200ドルの世界で最も貧しい国の1つである。政府はここ数年、経済を開放し、近隣の中国、インドとタイが狙っている大量の石油と天然ガス貯蔵区の採掘権が、軍事政権の支えとなっている。
(翻訳・侍傑、編集・月川)
(07/09/28 08:50)
http://jp.epochtimes.com/jp/2007/09/html/d32241.html


 国民の平均年収200ドル=2万3000円とは、想像をしかねる極貧状態である。農産物が安く、年中果物が豊富だから生活は何とか出来るのかもしれないが、軍政府要人達は海外に莫大な資産を移して国民に分からないようにしている。

 中共は、エネルギー戦略のため(シーレーン確保)、ミャンマーを利用している。こうして中共が絡むと、その国は徹底的に搾取され、国民は不幸になる例をミャンマーにも見ることが出来る。

(追記:9月30日)

 冒頭で触れた長井健司カメラマンの狙撃映像が報道されている。半ズボン姿で、仰向けに倒れてもハンディビデオカメラを持ち続けている彼の姿が印象的だ。改めて、心から彼の霊にご冥福を祈りたい。

 長井氏と契約していた経営者が彼の遺体と対面した。

至近距離から背中に一発=APF社長、長井さんの遺体と対面-「一緒に帰ろう」
9月30日2時2分配信 時事通信

 ミャンマーで死亡したジャーナリスト長井健司さん(50)は、約1メートルの至近距離から左背中を一発撃たれ、死因は失血死とみられることが29日、分かった。長井さんが契約していたニュースプロダクション「APF通信社」の山路徹社長(46)が、遺体を解剖した医師と旧首都ヤンゴン市内で面会。内容を同社に報告した。
 同社によると、山路社長は現地時間同日午後6時半ごろ、医師と面会。医師は「弾は一発と推定され、右胸から貫通。肋骨(ろっこつ)が数本折れ、体内に約3000ccの出血が確認された。死亡するまでの時間はそれほど長くなかったと思う」などと話したという。
 山路社長は同社社員に対し、「対面して、長井さんの死を改めて実感した。しばらくは顔をじっと見て『お疲れさまでした。一緒に帰ろう』と声を掛けた」と話した。 

最終更新:9月30日2時2分
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070930-00000011-jij-soci


 国際的な報道に関与する人々は、危険な場面に遭遇して命を失う機会が多い。それでも彼らは使命感で仕事を進める。そのお陰で、私達は生々しい情報や映像に接することが出来るのだ。今回の長井氏が犠牲になったことが意味するところは大きい。

 安全な国内にいて、情報を弄(もてあそ)ぶワイドショーやニュース番組の企画者に、真実の情報を伝えようとする人達の存在をきちんと考えて欲しいと思う。それが情報番組の質を高めることに繋がって行くはずだ。

 日本政府は、ミャンマー軍事政権に対しもっと強く反省を求めるべきだ。特に、福田首相の「のほほん振り」には呆れる。彼の厳父は、「人命は地球より重い」と言ったではないか。日本の対ミャンマーODAは以前から停止されているが、経済交流は行われている。それを明確な形で止めて、本気で日本は人命尊重を考えていることを伝えねばならぬ。
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2 コメント

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地球の癌 (小楠)
2007-09-29 08:00:26
TB有難うございます。
昔はソ連、今は中狂、北朝鮮。共産主義国は常に地球の癌
ですね。
これらの国際問題は、共産主義国の撲滅まで治まる
ことはないでしょう。
ひとかたまりの党幹部の欲望がこれほどまで世界に
災厄を惹起することを考えると、共産主義国が人類を
蝕む癌であることがわかりそうなものですが。
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私もそう思います (茶絽主)
2007-09-29 11:33:15
小楠様
コメントを有難うございます。
共産主義は一党独裁、全ての宗教を否定するから人間の営みと必ず摩擦を起こす。一種のカルト宗教なのでしょう。
共産主義のシンパと話をすると、旧ソ連も現中共も共産主義国家ではないと言う。いつかは理想的な共産主義国家が登場するそうです。
中共は、資本主義の真似をしながら、あからさまに世界へ害毒を垂れ流す、多分これは共産主義と言うのではなく、支那人の持つ特性なのかも知れない。
毛沢東時代のように、国内だけで好き勝手にやっていてくれたら、是ほど問題を起こさなかったでしょうね。第二次天安門事件(1989)の後、日本が中共へ積極的に経済協力したため、中共は息を吹き返し現在のようになったと思います。今もそれは続いているし、益々過酷な状況になると想像します。
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