陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

ミャンマー反政府デモと僧侶の犠牲

2007-10-03 08:14:46 | ビルマ(ミャンマー)関係
 ミャンマーでの反政府デモは、軍事政府の治安部隊による過酷な弾圧で100人以上が死亡、恐怖を伴いながら見かけ上は収束したようだ。が、デモに参加した僧侶達が多数拘束され、その行方が分からなくなった。

 ysbee さんのブログ<米流時評>では、ミャンマー・デモに関するAP電情報を集中的に紹介しているが、僧侶を含めたデモ参加者6000人が虐殺された(?)との話も述べられている。

 国連では、多分形式的なのだろう、ガンバリ特使を派遣して軍事政権側にデモ弾圧を止めるよう促した。

<ミャンマー>国連特使、タンシュエ議長と会談 訪問終了
10月2日21時51分配信 毎日新聞

 【バンコク井田純】ミャンマーを訪問中の国連のガンバリ事務総長特別顧問(特使)は2日、首都ネピドーで軍事政権トップのタンシュエ国家平和発展評議会議長と会談した。武力によるデモ弾圧をやめ、軟禁中の民主化運動の指導者アウンサンスーチーさんらの解放を促したとみられるが、詳細は不明。同特使は同日、スーチーさんとも2度目の会談を行い、訪問を終了、空路ヤンゴンを後にした。

 一方、最大都市のヤンゴンでは、弾圧で先月末から拘束されている僧侶らの健康状態への懸念が高まっている。AFP通信が、軍事政権筋の話として伝えたところによると、ヤンゴン北西部にある大学内の倉庫には、約1700人が拘束されており、僧侶ら500人以上がハンガーストライキをしているという。また、国連は、この場所から少なくとも1000人が別の場所に移送されたことを確認している。国連や支援団体は、劣悪な衛生状態など拘置環境を危惧(きぐ)している。

 民主化団体などによると、ヤンゴン市内に4カ所の拘置施設が確認されている。ノルウェーに本拠を置く「ビルマ民主の声」は、約6000人が拘束中で、一連のデモ弾圧による死者は138人に上ると伝えている。
 軍事政権は2日、ヤンゴンで、午後9時から午前5時までだった夜間外出禁止令を午後10時から午前4時までに2時間短縮すると発表した。

最終更新:10月2日22時4分
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071002-00000140-mai-int


 軍事政権も、ガンバリ特使が反政府勢力のシンボル、スー・チー女史と面会するのを許しているようだ。拒否すれば、国際世論が反発することを恐れているのだろう。

 izaが伝えるところでは、

川に浮かぶ遺体…僧侶4000人を拘束
10/02 18:59

 ミャンマー亡命者で運営される反政府系国際放送局「ビルマ民主の声」(本部・オスロ)は1日、僧衣をはぎ取られ、川に打ち捨てられた僧侶の無残な死体をとらえた写真をウェブサイト上で公開した。

 一方、英BBC放送は同日、ミャンマー軍政筋の話として、軍政の治安部隊が反政府デモの中心となった僧侶約4000人を拘束し、近く同国北部の収容所に移送する方針だと伝えた。僧侶は現在、僧衣を脱がされ、手錠をかけられた上、最大都市ヤンゴンで収容されている。食事の摂取を拒否している僧侶もいるという。(ロンドン 木村正人)
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/87859/


 1988年のビルマ民主化デモでは、3000人が犠牲になったと言う。これを利用して現在の軍事政権が支配を固め、現在に至る。今回の民主化デモには、沢山の僧侶が参加し、そして多数が犠牲になっていることが前回のデモとは異なる。

 軍事政権の出鱈目な経済運営が燃料などの物価を極端に上昇させ、ミャンマー国民の不満が高まった。今回のデモは、それが主因だ。托鉢で生きる僧侶達も、民衆が喜捨をしなくなり、生活基盤が脅かされたので立ち上がったのだろう。当然、民衆の不満への理解が彼らの根底にある。

 国連では、中共が安保理で拒否権を発動するため、即時PKO派遣には至らないようだ。露西亜も内政干渉だと言って、間接的に軍事政権の応援をしている。国連での動きとは別に、米国と欧州各国は経済制裁に加えて資産凍結や外交手段による軍事政権への圧力を強化している。昨日、オーストラリアは、駐豪大使の新任を拒否した。

 不思議なことに、ミャンマーも加盟しているASEANから殆ど批判の声が聞こえない。ASEAN諸国は、中共に遠慮しているのだろうか。仏教の故郷、インドは経済利権のためか知らぬ振りをしている。それと日本の仏教関係者や組織も、ミャンマー僧侶の弾圧に対し沈黙を守っている。「世界平和維持」などと言うお題目には、幾らでも口を出すくせに。中共が最も恐れるのは、ダルフール問題の如く、ミャンマー問題を介して北京五輪ボイコットに繋がる国際世論が生まれることだ。

 インターネットによる情報伝播のお陰で、前回のデモ鎮圧では伝わらなかった過酷な軍事政権の弾圧実態が動画などを通じて国際的に知られるようになった。日本のマスコミが幾ら隠そうとしても、ミャンマー軍事政権の背後には中共があり、デモ弾圧に陰ながら協力している状況が明らかになっている。

 仮に国際世論の影響で軍事政権が身を引いたとしたら、ミャンマーの統治はどうなるのだろう。スー・チー女史の率いる民主化勢力、国民民主連盟(NLD)は、国家運営の経験が浅く、様々な危惧が噂される(間違いなく左翼政権になる)。それ故に、ミャンマーの政治的大混乱は免れないし、隣国の中共やインドが別な形の傀儡政権を作るのかも知れない。
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2 コメント

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お題目 (ysbee)
2007-10-03 08:37:10
茶絽主さん、
いつもご紹介いただき、光栄です。
私の方では、事態がいまだ進行中なので事件的に追いかけているだけですが、(怒り心頭ではありますが...)この記事でもおっしゃっている通り、背後に控えてビルマを地政学的要衝として利用している中共も、ともに糾弾するべきですね。

三四郎さんもコメントで触れてらっしゃいましたが、同じ僧門からなんのアピールもないのが、何とも情けないです。ご指摘のとおりに、普段唱えている世界平和が、文字通り「お題目」に過ぎなかったことを証明しました。

私は国際経済には疎いので、この方面での茶絽主さんならではの明晰な解説を、今後とも期待いたします。
いつもタイムリーでcleverな記事を、ありがとうございます!
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Unknown (茶絽主)
2007-10-04 09:53:54
ysbee様
TB、コメントを有難うございます。
中共は、資源確保と共にシーレーンを確実にするためミャンマーに力を注いでいると思います。
ミャンマーは、王朝の廃絶で国家統合のシンボルが消え、統治が難しくなっている側面がありましょう。東南アジア諸国の多くがそうではありますが。
今回の僧侶虐殺は多くの問題を孕んでいますね。
反軍事政権勢力は、それを梃子に国際世論を動かす方向で何かをするのかもしれません。中共が絡む限り、国連ではどうしようもないと言う気がします。
またご教示下さい。
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