陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

ミャンマーで大規模な政府抗議デモ

2007-09-27 10:53:41 | ビルマ(ミャンマー)関係
 昔のビルマ王国、現ミャンマー連邦(1989年改称)の僧侶(小乗仏教)は、民主主義を求めて活動的である。幼稚園と駐車場の経営に忙しい日本の僧侶とは、大分様子が異なる。数週間前から僧侶を含めた10万人の民衆がミャンマー軍政に反旗を翻し、大規模抗議デモに発展した。

 大東亜戦争中は、日本軍がビルマに進駐し、19世紀以来植民地として経営を続けた英国からビルマを独立させようとする活動家達との連携を持った。それが切っ掛けとなり、1947年にビルマは独立した。このような背景があるので、ミャンマーの人々は日本に親近感を持ち、日本人にも竹山道雄氏の小説「ビルマの竪琴」の影響のためかミャンマーには静かな平和を求める国のイメージがある。年配の人であれば、1961年から10年間国連事務総長の職にあったビルマ人ウ・タント氏の名前を懐かしく思い出すであろう。

 しかし現在は、主として中共、インドからの支援を仰ぐ軍事政権の支配下にある。欧米は、圧制的な軍事政権に対し、経済制裁を行っているが、軍事政権はどこ吹く風と言う対応だ。民主化を求めるミャンマーの人々は、その旗手と言われるアウンサン・スーチー女史(62歳;1991年ノーベル平和賞受賞)の軟禁状態にも強い不満を持っている。

 今回の抗議の発端は、燃料の大幅値上げにある。少し前の産経記事であるが、

ミャンマー 僧侶も“決起”デモ拡大 物価高騰、市民困窮
2007年9月8日(土)03:23

【バンコク=菅沢崇】燃料の公定価格引き上げをきっかけに始まったミャンマー政府に対する抗議行動が全土に拡大。さらに仏教徒が大半を占める同国で強い影響力を持つ僧侶も抗議行動に積極参加し、治安当局と小競り合いになるなど深刻な事態となりつつある。治安当局は7日、ヤンゴンに次ぐ第2の都市、中部マンダレーで厳重な警戒体制をとるなど本格的にデモ鎮圧に乗り出したが、騒動が直ちに収まるかどうかは不透明だ。

 8月19日に最初のデモ行進がヤンゴン市内で行われたときは、その規模は比較的小さかった。民主化運動指導者、アウン・サン・スー・チーさん率いる国民民主連盟(NLD)の主導で行われ、主婦も参加し、数十人が連日市内を練り歩いた。いずれもプラカードを掲げることもなければ、シュプレヒコールもない、時折手をたたく程度の静かなデモ行進だった。

 しかし、中部マグェ管区のパコックで5日に発生したデモは違った。現地からの情報によれば、治安部隊は僧侶300人が参加したデモを阻止しようとして威嚇のため発砲。乱闘騒ぎの末、3人の僧侶を拘束した。しかし、暴行を受けた僧侶側も、治安当局者ら13人を軟禁するなどして反発を強めた。6日に治安当局側が謝罪し、双方とも拘束者を解放したが、緊迫した事態が依然、続いている。

 ミャンマーの外交筋によると、保守的な僧侶がこれだけ大規模デモを組織した例は過去になく、1988年8月、ネ・ウィン体制に反発したゼネスト参加以来のことだという。同外交筋は「僧侶の参加はヤンゴンで数十人程度だった。元来、僧侶は自制心も強く、政府に反発しても行動には出さない。今回は市民が困窮する姿を見て平和理にデモを進めたのに、仲間を拘束され、僧侶側は反発というより“決戦”に近い感情を持った」と指摘する。

 ヤンゴンに在住するミャンマー人男性も「イデオロギーを主張するのではなく、生活苦から不満を募らせている人が自主的に参加している」と困惑を隠さない。
 このほか、中、西部地域ではヤカイン州・タウンゴで4日に1000人規模の大規模デモが発生したのをはじめ、シットウェ(同州)、ハーカー(チン州)、チャウッパダウン(マグェ管区)などの各都市で大規模デモが繰り広げられている。

 深刻化する事態を受けて政府は、すでに生活必需品の値下げ奨励に乗り出しているが、商品価格はほとんど変わっていない。主食の米は当初の4%程度の値上がりから5割高の商品も出始め、ピーナツ油や野菜類も3~5割高と市民の食卓を直撃している。9月1日からは国内の主要航空会社が国内線運賃について3割の値上げを断行。国際線についても近く価格改定される予定で、物価高が収まる気配はない。

 民主化に向けて、新憲法制度を審議してきた国民会議は今月3日、基本原則を採択し、ようやく約14年半の審議の幕を閉じた。だが、軍政が示した民主化行程表によれば7段階のうち第2段階を終了したにすぎない。

 政府は、新憲法案の起草と国民投票を年内に終え、早期に国会議員選挙にこぎつけたい構えだが、深刻化する世論の反発の中で、そのプロセスは不透明さを増している。
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/world/m20070908037.html?C=S


 このデモは9月に入って拡大化、こうした組織的大衆運動を恐れる軍事政権は、9月26日に過激な実力行使に出た。時事通信によると

2007/09/26-16:57
軍政、デモに実力行使=僧侶ら殴打、200人拘束-情勢一気に緊迫・ミャンマー

 【バンコク26日時事】ミャンマー治安当局は26日、軍事政権による燃料費の大幅値上げなどに抗議するため、旧首都ヤンゴンの仏塔シュエダゴン・パゴダ周辺に集まった僧侶や市民らを警棒で殴打するとともに、約200人を拘束した。負傷者の有無など詳細は不明。僧侶ら約5000人がデモを強行したが、軍政は僧侶を励ます市民らに威嚇発砲し、催涙ガスも放った。軍政が実力行使に出たことで、ミャンマー情勢は一気に緊迫した。

 目撃者によると、治安部隊員らは警棒を手にしてデモ参加者らに向かって突進、催涙ガスを使用した上、僧侶や市民ら約1000人を殴った。その後、治安当局は約200人を拘束、トラック4台に乗せ、現場から連行した。
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2007092600562


 何とも乱暴な軍事政権であるが、これを支える中共などの実態をもう少し詳しく見ると

ミャンマー:軍事政権支える中印 豊富な地下資源を確保

 軍事政権による人権抑圧で、欧米諸国から開発援助停止など厳しい制裁措置を科されてきたミャンマー。しかし世界10位の埋蔵量と目される天然ガスなど、豊富な地下資源を持つ同国に対し、中国やインドなど周辺国が積極的な資源外交を行っている。急激な経済成長を続ける中国とインドにとって、エネルギー確保は最重要課題。アジアの新たな「パワーゲーム」がミャンマー軍事政権を支える構図になっている。

 今年1月、ミャンマー軍事政権は、同国最大の埋蔵量が見込まれる中部ヤカイン州沖合のシュエ天然ガス田の探査権を、中国国有エネルギー最大手、中国石油天然ガス(CNPC)に譲渡した。中国が国連安全保障理事会でのミャンマー民主化要求決議案に拒否権を投じた直後の譲渡契約で、中国の拒否権行使に対する軍事政権の「政治決定」とみられている。

 97年、米政府は人権侵害を理由に資源開発などミャンマーへの新規投資を禁止し、国際メジャーが撤退した。経済的な苦境を脱するため軍事政権は急速に北の隣国である中国との関係を深めた。04年から中国の民間企業が相次いでミャンマーと天然ガス購入契約を締結した。

 中国にとってミャンマーは資源供給国となるだけではなく、南のインド洋に直接抜ける軍事的戦略拠点ともなる。関係を深める中国に対抗し、対ミャンマー関係強化に乗り出したのが西の隣国インドだ。06年3月にはカラム大統領がヤンゴンを訪れ、軍事政権のタンシュエ議長らと会談し、天然ガスの共同開発やインドからの計4000万ドルの経済援助などに合意し、関係強化を申し合わせた。【西尾英之】
毎日新聞 2007年9月26日 21時03分
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/news/20070927k0000m030102000c.html


 中共は、自国の都合のためなら、他国の国民が苦しんでも弾圧的な体制を維持しようとする。スーダンのダルフール紛争も同様なケースであろう。流石に人民解放軍による直接侵略はまだ無いとしても、ミャンマーを経済植民地化しようとしているのは明らかだ。

 この大衆運動は、米国(CIA)とEUが背後で煽っているとの見方がある。それは、毎日の記事にあるように中共がミャンマーの資源(石油を含む)確保を狙い、同国の港を中共海軍の戦略拠点とすること、中東方面の石油をミャンマーで陸揚げし、そこからパイプラインを用いてマンダレー経由雲南省までエネルギー輸送するとの計画(これは、大戦中の「援将ルート」を想起させる)を阻止するためと言われる。

 事態を重く見て、国連安保理事会も動き出した。だが、どのような批判や経済制裁が行われても、中共が軍事政権の後ろ盾である以上、民主化支援の動きは進展するとは思えない。

ミャンマー デモ隊と衝突 軍政発砲100人超死傷 安保理で緊急会合
2007年9月27日(木)03:17

 【バンコク=菅沢崇】燃料費の引き上げに端を発したミャンマー軍事政権を批判する僧侶と市民らによるデモは、連続9日目となった26日、軍事政権側の治安部隊がデモ隊に向け、実弾を発砲するなど武力鎮圧に乗り出した。この結果、僧侶を含め100人以上が死傷する流血の事態となり、ミャンマー情勢は重大な局面を迎えた。こうした状況に国際社会は一斉に懸念を表明、27日未明(日本時間)に国連安全保障理事会の緊急会合を開き、対応を協議する。

 治安部隊は26日午前、デモ拠点となっているヤンゴン中心部の仏塔シュエダゴン・パゴダの入り口を封鎖した。さらに別の仏塔のスーレ・パゴダ方面に移動した僧侶や市民約7000人と衝突、発砲したほか、警棒で僧侶を激しく殴打し、催涙ガスも放った。

 フランス通信(AFP)は、この衝突で僧侶3人を含む4人が死亡、約100人が負傷したと伝えた。AP通信は反政府側の話として死者は5人としている。当時の状況について、在ヤンゴン仏大使館の外交官はAFP通信に「治安部隊の発砲は最初は空中に、その後、デモ隊に対して行われた」と語った。

 敬虔(けいけん)な仏教徒が国民の9割を占め、僧侶が尊敬を集めるミャンマーだけに、僧侶を殴打したり、引きずり回したりする治安当局者に対し、市民からは「愚か者、愚か者」との罵声(ばせい)が飛んだという。デモは26日夕に解散した。

 軍政当局は25日夜、ヤンゴン市内に治安部隊を配置したほか、ヤンゴンと中部マンダレーに夜間外出禁止令を出し、5人以上の集会を禁じた。

 ミャンマーでは1988年、26年間続いたネ・ウィン社会主義体制が民主化要求デモで崩壊したが、国軍によるクーデターで国家法秩序回復評議会(SLORC)が全権を掌握。デモ鎮圧の際、軍の発砲で約3000人が死亡したとされる。
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/world/m20070927002.html?C=S


 安保理の議論で、ミャンマー軍事政権を擁護する中共の姿勢が明らかになると、ダルフール紛争のように北京五輪をボイコットする動きが加速されるかも知れぬ。欧米のデモ支援活動は、それも狙っているのだろうか。

(追記:9月27日)

 安保理での緊急会合では、案の定、中露の反対で議長声明にブレーキが掛かった。中露には人権意識など無いから当然であるが。欧米はどのようにこの問題を処置しようとするのだろう。

国連安保理議長「各国がミャンマー政府に自制要求」
9月27日12時23分配信 読売新聞

 【ニューヨーク=白川義和】国連安全保障理事会は26日、ミャンマー情勢について緊急の非公式会合を開き、ガンバリ国連事務総長特別顧問が状況を説明した。

 9月の安保理議長であるリペール仏国連大使は会合後、「各理事国が事態への懸念を表明し、特にミャンマー政府に対して自制を求めた」とする声明を記者団に読み上げた。

 米英などは、安保理議長による報道機関向け声明の発表を目指していたが、中国やロシアの反対で文書ではなく、口頭で発表する声明にとどまった。ミャンマー軍事政権への非難も盛り込まれなかった。

 声明は、同日夜にミャンマーに向かったガンバリ氏の調停努力に対する「強い支持」を表明し、軍政が早急に入国を認めることを求めた。ガンバリ氏は昨年11月にも国連政治局長としてミャンマーを訪問し、軍政指導層や民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんらと会談している。

最終更新:9月27日12時23分
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070927-00000002-yom-int


 日本政府は、こうした緊急事態にも係わらず、何とものんびりと様子見をしている。安定感のある(?)福田<のほほん>内閣は、何はともあれ中共様のご意向を確かめてからでないと動くことは出来ないのだろう。

<ミャンマー>制裁発動に慎重姿勢 町村官房長官
9月27日11時46分配信 毎日新聞

 町村信孝官房長官は27日午前の記者会見で、ミャンマーの軍事政権が僧侶や市民のデモを武力鎮圧していることについて「死者が出たことは極めて遺憾だ。強圧的な実力行使はしないよう求めたい」と述べ、ミャンマー政府に冷静な対応を求めた。
 一方で、欧州連合(EU)と米国が制裁の検討を求めていることについては「結果としてミャンマーがどんどん中国だけに傾斜していく姿が本当にいいのか、考えなければならない」と指摘し、制裁発動に慎重な姿勢を示した。ミャンマーの軍事政権と日本との関係については「あまりいい関係ではないが、欧米ほどきつい態度でもない」と語った。【坂口裕彦】

最終更新:9月27日11時46分
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070927-00000028-mai-pol
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